未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第16章 運命の分岐点 ①

2021-05-09 13:15:21 | 未来記

2009-11-19

アフカへ

 

ドームになかった

 

不思議な素敵な世界

 

私を待っていたような(ワクワク…)

 

だれかが待っているような(ドキドキ…)

 

出会いの予感…

 

 

アフカに広がる

 

緑と灰色の大地

 

ここで何が待ってるの?(ワクワク…)

 

どんなことが起きるのかな?(ドキドキ…)

 

意外な予感…

 

 

1.出迎えた人達

 

エア・ボートの窓から眺めたアフカは、自然の宝庫だった。

 

大きな川と森、はげ山と砂漠が交互に現れ、草原には3D動画で見たことのある動物が群れをなして移動していた。

 

ドームは、ポツンポツンと離れた所に建ち、周囲には緑が広がっていた。

 

アフカでは、マスクが離せないと思っていたキラシャだったが、パールはつけなくてもいいと言うので、キラシャもマスクをはずして、エア・ボートから降りた。

 

アフカは、暑い!

 

暑さ対策のため、クール・スーツ(冷たい水分を含んだ生地で作られた服)を身に着けたキラシャは、オパールおばさんの車椅子の後ろをパールと手をつないで移動した。

 

キラシャは、思いっきり空気を吸って、ハーッとはいてみた。

 

『ドームの空気と、ゼ~ンゼン空気がちがう…。

 

熱いけど、地球と一緒に生きてるって感じだね~

 

どうして大人は戦争なンかして、

 

こんな素敵な自然を壊しちゃうンだろう…? 』

 

エア・ポートでは、いろんな人種が行き交い、武装した軍人が所々で見張りをしていて、物々しい雰囲気だったが、キラシャは前方に知ってる人を見つけて、ビックリした。

 

海洋牧場で出会ったおじさんだ。

 

パールとキラシャは、周りを気にしながら、小走りでおじさんの所へかけよった。

 

「おじさん、こんにちは! ここで会えると思ってなかったから、うれしいよ!」

 

「ワタシモ!」

 

「元気だったかい? おじさんも、君達に会えるのを楽しみにしてたんだ」

 

おじさんは、あの時と同じようにMFiエリアの言葉で話しかけてきた。

 

それから、車椅子で近づいて来たオパールおばさんに向かって

 

「はじめまして、私は、デビッドと言います。よろしく…」と言ってお辞儀をした。

 

オパールおばさんは頬を赤らめながら、会釈して言った。

 

「こちらこそ、よろしく…。

 

パールから、アフカの戦争を止めるために努力された、すばらしい方とお聞きしています。

 

お会いできたことを光栄に思います…」

 

デビッドおじさんは、マシン人間らしく無表情ではあったが、

 

「あなたもずいぶんご苦労されたことでしょう。

 

そのお言葉を聞いて、今までの苦労が、報われたような気がします」と答えた。

 

そして、そばにいる色あざやかな民族服を着た男性を振り返り、パールと同じ民族の青年リーダーのひとりだと、3人に紹介した。

 

その男性は、軽く会釈をして、

 

「カール デス。ヨロシク」とMFiの言葉であいさつした。

 

それから、地元の言葉で、「長老からパールとお友達を出迎えるよう言われてきました。これから、私が運転して案内します」と言っていたようだ。

 

キラシャには、カールという名前以外、何もわからなかったが、パールがその男性に失礼にならないよう、後で「カレ コウイッテタヨ」と、説明してくれた。

 

どうやら、パールの家族は来てないようだ。

 

パールは、「マダ カゾクニ アウノ チョット コワカッタ」とキラシャに言った。

 

 

デビッドおじさんが、ひょっとしてリォンおじさんかもしれないと思っていたキラシャ。

 

2人の様子では、そうではなさそうだとわかって、少し残念な気がした。

 

 

エリアへ滞在する手続きと検査と、Ⅿフォンの設定の変更が終わると、パールの民族の人達にと、預かったたくさんの贈り物と、自分達の荷物も無事に受け取った。

 

エア・ポートから、眩しい光の差す外へ出た。

 

アフカ・エリアでの交通手段は、空中にも飛び上がる自動車、エア・カーだ。

 

アフカは広い大陸だが、戦争が始まると、道路や橋がすぐに壊されてしまう。

 

だから、道の邪魔になる石が山積している所や、橋の壊れた大きな川を渡る時は、空中移動できるエア・カーを使うことが多い。

 

しかし、いつ戦闘状態になって攻撃されるかわからないので、Mフォンのアプリで危険を知らせる音とメッセージが出る区間では、エア・カーでの移動が禁止されている。

 

エア・ポートの前には、乗客を待つエア・カーのタクシーが、たくさん止まっていた。

 

太陽の光に恵まれているアフカ・エリアでは、エネルギーの供給に、ソーラー・システムを利用している所が多い。

 

MFiエリアからアフカ・エリアへ、ソーラー・システムでエコ・ライフを送れるように、充電・送電設備などの技術支援と、エア・カーや家電製品の輸出も行っている。

 

ところが、エネルギー資源を分配する段階で、民族の間に争いが起こり、相手への送電の邪魔をする民族もいる。

 

それが、発端で戦争へとつながってしまうのだが、未来でも、多くの人が、不便だけでなく、武器による破壊の恐怖に苦しめられる毎日を送らねばならない。

 

 

キラシャは、前方に止まっている大型エア・カーのそばで、こっちを見ている男の子2人に気がついた。

 

『アフカで誰かに出会うような気がしたンだけど、

 

ひょっとしてこいつらだったのかな…? 』

 

キラシャの視線に気づいた2人は、あわててエア・カーの後ろに隠れたが、デビッドおじさんが大笑いしながら、声をかけた。

 

「男なら、堂々と出て来なさい! 」

 

ひょこりと顔を出したのは、ケンとマイクだ。

 

「女の子2人で来ることが、ずいぶん心配だったらしいね。

 

ひとつ前の便で先について、待ってたんだよ。

 

ほら、危ないから、車の中に入っていなさいと言っただろう。

 

怖い連中は、現れなかったのかい?

 

ちゃんとごあいさつしなさい」

 

「こんにちは…」「コニチーワ…」

 

「アレ? ジョンはどうしたの? あんた達だけ…?」

 

キラシャは、皮肉っぽく2人にたずねた。

 

吹き出る汗をぬぐいながら、真っ赤な顔をしたケンが言った。

 

「ジョンは、エリアのアニメ映画展に出品するから、休暇は忙しいらしいよ。

 

一応、誘ったけど、パールが帰って来るの、待ってるって!」

 

「あたしは、パールに誘われて来たンだよ!

 

別にアンタ達に用心棒なんて、頼ンでないからね。

 

来るンだったら、最初から言ってくれればいいのに…」

 

デビッドおじさんとカールが、荷物をエア・カーの後ろに押し込み、キラシャとパールと、車いすから降ろされたオパールおばさんを真ん中の席へ乗せた。

 

運転するカールとデビッドおじさんは前の席へ、ケンとマイクは後ろの席に乗り込んだ。

 

出発した車の中で、マイクが何のためにアフカへ来たのかを話し始めた。

 

「ボク パパト イッショ。

 

パパ アフカデ ショクブツノ ケンキュウ スルッテ! 」

 

マイクの話を要約すると、マイクの父親は植物学者なので、これからアフカにあるラボに移って、仕事をするそうだ。でも、それはマイクの転校を意味していた。

 

「ウソ~、マイクこっちに移っちゃうの? 

 

サリーとエミリにちゃんと言ったの? 

 

先生も何も言わなかったよ。

 

いつ、転校するの?」

 

「マダ ワカラナイ。パパノ ケンキュウ ハジマル マデ ダイジョーブ! 」

 

何が大丈夫なのかわからないが、マイクはパールに会えただけで、うれしそうだ。

 

『いいなぁ、マイクは好きな子のために、転校できるンだ…』

 

キラシャは、マイクのことをうらやましいと思った。

 

キラシャだって、できることなら、今すぐにでも、タケルのいる所へ行ってみたい!

 

 

デビッドおじさんは、オパールおばさんに、マイクのお父さんが、ここまで2人を連れてきたことを伝えた。

 

マイクがアフカのスクールに入るまで、おじさんはマイクを助手として預かる約束だが、ケンはMFiエリアに帰ってから用事があるらしい。

 

それで、ケンの保護者はオパールおばさんが引き受けて、キラシャと一緒に連れて帰ることになった。

 

もちろん、パールがやっぱりMFiエリアで生活したいと言えば、オパールおばさんが保護者としてパールの世話をすることは決まっている。

 

「MFiエリアに帰ったら、ダンとオリン・ゲームの大会に出るンだ。

 

ダンから、あの裁判で仲間がひとり抜けたから、入らないかって、オファーがあったからね。」

 

とケン。

 

「エッ? オリン大会出るの? 

 

そっか、ケンは忙しいンだね。じゃぁ、外海へはパパと2人っきりで行こうっと…」

 

キラシャは、もしケンが休暇中にヒマそうにしてたら、外海へ一緒に連れてってもいいかな…と思っていたので、ちょっとがっかりした。

 

ケンも、キャップ爺の散骨の話は聞いていたし、キラシャの気持ちはわかってたみたいだ。

 

「ホントは、キラシャと海に行って、キャップ爺にさよならが言いたかったンだ。

 

でも、キラシャがアフカへ行くって聞いたからね。

 

無事に帰って来れるのか、心配になって来ちゃった…。

 

ウチのおじさんにアフカに行きたいって相談したら、旅費出してくれたんだ。

 

あの裁判のおかげで、パスボーの遠征旅行が中止になったし…」

 

「ヨカッタ。トモダチ イルカラ アンシン…」とパール。

 

「そうか、パールの護衛には、この2人が打ってつけだよね。よかったね、パール! 」

 

 

パールがこれからアフカで暮らすかどうかは、この1週間で決まるようだ。

 

それには、いくつもの試練が待っているかもしれない。

 

キラシャは、マイクとケンが来てくれて良かったンだと、納得した。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第16章 運命の分岐点 ② | トップ | 第15章 真実って? ⑥ »

コメントを投稿

未来記」カテゴリの最新記事