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冬のソナタに恋をして

告白

 

今日は久しぶりに同級生で集まって飲む日だった。チェリンもブティックの仕事を早めに終えて店を出ようとしていた。チェリンは携帯でヨングクと話をしていた。

「ヨングク。えっ?サンヒョクとユジンは遅れてくるの?まあいっか。先に飲んでよう」

するとそこにそっと入ってきた者がいた。ミニョンだった。とたんにチェリンは上機嫌になった。会えないから心配していたとか食事に行きましょう、とまくし立てるチェリンに、ミニョンはぽつりと言った。

「君に聞きたいことがあるんだ」

ミニョンは高校時代にカンジュンサンが本当にユジンを利用していたのか聞きたかったのだが、チェリンはまったく気にしていなかった。今しがた切った電話をかけなおしてチンスクたちとの飲み会を断ろうとしていた。



「もしもし、ヨングク。急用ができちゃった。ユジンやサンヒョクに謝っといて。」

それを聞いてミニョンの顔色が変わった。チェリンから携帯をとると

「こんばんは。イミニョンです。チェリンと一緒に僕も行きます」と言って電話を切った。チェリンは腑に落ちない顔つきでミニョンを見て、二人きりで食事をしようと誘ったが、ミニョンはたまには高校時代の話も聞きたいから、と譲らなかった。二人は話がかみ合わない微妙な空気のまま、レストランに向かった。



レストランでチンスク、ヨングク、チェリンは妙な雰囲気になってしまい困っていた。ミニョン一人を除いては。チンスクとヨングクはよく知りもしなくて、しかも親友のサンヒョクからユジンを一時でも奪ったミニョンを前に、何を話していいかわからなかった。チェリンはミニョンが何を目的にここにいるのかわからず、二人きりになれないので不機嫌だった。しかし、ミニョンは嬉しそうに皆の顔を見回した。自分はカンジュンサンで、ここにいるみんなは同級生なのだ。その記憶もないのに、なぜか懐かしい気持ちになるのだった。するとチンスクが遠慮がちに言った。

「今日は、ユジンとサンヒョクの結婚祝いのためにここに集まったんです。それにかこつけて飲もうかなって、、、。どうぞ飲んでください」

言われなくてもミニョンだけがおいしそうに水割りを飲んでいる。

「こうやって同級生で集まるなんていいなぁ。皆さん放送部だったんですよね。そういえば皆さんのほかに仲がいいもう一人同級生がいたって聞いたんですけど、、、。」

すると皆は何を言い出すのかと顔を見合わせた。ミニョンはお構いないしに続ける。

「そうそう、チュンサン。カンジュンサンだ」



それを一人遅れてきたサンヒョクが、物陰で苦々しい顔つきで聞いていた。

「、、、、そうでもないみたいですね。あっサンヒョクさん。」

ミニョンはしらじらしい笑顔で続ける。サンヒョクも

「ほんとよくお会いしますね」と応酬したため場はますます白けていくのだった。しかしミニョンは話をやめない。

「そのチュンサンて人とサンヒョクさんとの仲が気になるんだけど。」

「やめてよミニョンさん」

チェリンが仲に入るもミニョンは話をやめようとはしなかった。

「サンヒョクさんと殴り合いもしたって聞いたけど」

ヨングクも言葉に詰まった。カンジュンサンとそっくりな顔をしている上に、サンヒョクの今も昔も恋敵の男に言われるのだからたまらない。

「ねえミニョンさん、死んだ人の話をするのはやめましょう。」

「死んだ人かぁ。でも彼ってホントに死んだのかな?」

ヨングクがたまらずいった。

「なんですって?」

「だってそうでしょう。誰も葬式に行ってないっていうし、本当に死んだかだれも確認してないじゃないですか」


今度はサンヒョクが声を荒げた。

「いい加減にやめてくださいよ、ミニョンさん。」

「チュンサンが生きてるかもしれないって誰も思わなかったんですか?記憶喪失になったとか、または名前を変えたとかあるでしょう。たとえばミニョンて名前とか。僕がチュンサンかもしれないって誰も思ったことはないんですか?」

皆はますます静まり返った。チュンサンそっくりの男に真顔で言われているのだから当然だ。そのとき、チンスクが勇気を出して聞いた。

「まさか本当にあなたはチュンサンなんですか?」

皆かたずをのんで返事を待った。するとミニョンはばかばかしいというように笑い始めた。

「本当にチュンサンが現れたら大騒ぎになりそうですね。まあそんなことはありませんよ。僕はイミニョンです。それじゃ。」

そういうとミニョンはさっさと席を立って帰ってしまった。チンスクとヨングクはアメリカンジョークなのだろうか、それにしても嫌な奴だ、と思っていた。もっともサンヒョクは胸をなでおろしたが。チェリンはミニョンの後を追ったが、タッチの差でエレベーターに乗り込むミニョンを逃してしまった。しかしドアが閉まる瞬間、チェリンの脳裏に様々な場面がよみがえった。


チェリンを呼び出して「僕がチュンサンかもね」と自嘲的に酔って言ったミニョン。

「じゃあ、あの人はチュンサンと関係ないんだね」と電話で確認してきたサンヒョク。

先ほど、らしからぬ失礼なことを言い続けたミニョン。やはり自分が心配した通り、ミニョンにはユジンが知らない秘密がある。彼はチュンサンなのだと確信した瞬間だった。

 



外に出たミニョンは向こうからユジンが急いで歩いてくるのを見つけた。結婚祝いの飲み会に遅れて来たらしい。自分はこんなにもユジンに恋焦がれているのに、自分はユジンが10年間求め続けているチュンサンなのに、それなのにユジンは自分を見ると気まずそうに目を伏せてしまった。そして困ったような顔をして、歩いてくるのもためらっているのだ。それを見て、ミニョンの中のなにかが弾けた。たまりにたまった気持ちがユジンに向かった。ミニョンはつかつかとユジンに近づくと腕をつかんだ。

「ちょっと来てください」

ユジンは理由が分からずに困っていたが、なんとか腕を振りほどき、二人は向かい合って話をした。

「ミニョンさんどうしたんですか。離してください。本当にどうしたんですか。何かあったんですか。」


それでもミニョンは何も言わないでユジンを見つめている。ついにユジンは毅然とした態度で言った。

「わたし友達が待っているので行きますね。失礼します」

するとミニョンは思い切りユジンの肩をつかんで引き戻した。

「ミニョンさん、こんなのミニョンさんらしくないです。」

ユジンの目に困惑と非難を感じ取ったミニョンは言った。

「僕らしいって何ですか。ミニョンらしいって何ですか。」

あまりミニョンが真剣な顔で詰め寄るので、ユジンは戸惑った。

「僕はいったい誰なんでしょう?ユジンさん、言ってください。僕は誰なんですか、、、」

「僕は、、、チュンサンなんです」

ユジンは驚きのまなざしでミニョンを見つめ続けた。ミニョンのこんなに苦しそうな表情を見たのははじめてだった。ミニョンの中で何かが変化しているが、ユジンにはそれが何かわからなかった。そんなユジンをミニョンは涙がいっぱいの瞳で見つめ返した。ふたりはしばらくの間黙ってお互いに見つめあっていた。背後では冬の風にあおられた工事中の外壁カバーシートが、はたはたとはためいていた。沈黙の中にその音だけが響き続けているのだった。



コメント一覧

kirakira0611
@81sasayuri1018 さま、ありがとうございます😊
本当にこのあたりのミニョンがかわいそうですね。やっと2度目の事故につながりそうなところまできました。
このあとますますかわいそうなことになっていかきますね、、、。
ゆりさんのところでもピーマンやきゅうりが採れるんですね!
うちも沢山とれて毎日食べてます。
良い一日をお過ごしくださいね☆
81sasayuri1018
おはようございます。

ミニョンの苦しい気持ち・・・この回は本当に辛かったです。
チェリンも察し、サンヒョクは真実を知り・・・
ミニョンさんは混乱しまくり・・・
やはり現実にこんなことがあれば・・・

でも・・・ユジンも知る日が来る・・・
失望したミニョンがアメリカへ帰る日に・・・ですね。
悲し過ぎますね・・・ゆり
kirakira0611
@samsamhappy さま、本当にミニョンにとっては我慢我慢で辛いひとときですね。なんか、ユジンがあんなにチュンサンって言ってたのに、急に冷たくなってよく分かりません。あんまり今意味がよくわからなくて、いまいち入り込めずに書いてます。さっき書き直してみましたが、やっぱりしっくりこないんです。
またぼちぼち書いてみますねー。
ありがとうございました😊
夏の始まりが暑過ぎて怖いです。
samsamhappy
おはようございます。
ミニョンにとっての辛い時ですね。
この辺りの回を観るのが辛かった🥲
あの、初雪が降る人混みの中で10年ぶりに
全く違う姿のミニョンを見かけて
チュンサンだと思って追いかけたユジンが
こんなに近くにいるチュンサンに気づかないなんて(笑)

ペヨンジュンも演じていて苦しかったでしょうね。サンヒョクもまだ諦めがつきません。
みんな苦しいこの辺りを、はやく抜けたい😂
kirakira0611
@breezemaster さま、おはようございます😃
良い天気です。
最近はサイクリングはしてらっしゃるのでしょうか?
わたしも毎日自転車で走り回ってます。この季節は暑いけど気持ちいいです。

breezemasterさんの方が今回の気持ちがよくわかってると思います。急にミニョンさんが自暴自棄みたいになって、ちょっとわたしの中で?になってました。どうして急に?みたいに。だからミニョンさんの想いを解説ありがとうございました。時間があるときにちょっと修正してみますね。
良い週末をお過ごしください。
水遊びに行ってきます!
kirakira0611
@hananoana1005 さま、おはようございます😃
先日の紫陽花の記事を楽しく読ませていただきました!語源も知らなかったです。普段綺麗だと思っても立ち止まって愛でる気持ちの余裕がないから、こうして素晴らしい写真と共に紹介していただけると、あらためて素晴らしさを感じます。

ところで、わたしだけじゃなくて、このときのミニョンさんに違和感がある方がいて嬉しいです。
今回のチュンサンです!はあんまり個人的に好きではなくて、入り込めなかったんですよ。唐突すぎて。消化不良でした。きっと本人は必死なんでしょうけど。
ユジンも散々チュンサンじゃないか聞いてたくせに、いざ言われると怒るという(笑)
よくわからなかったので、サラッと書いでしまってすみません。
あとチェリンは久しぶりに悪い顔をしていて、チェリンらしさを発揮していて嬉しいです(笑)
解説ありがとうございます😊
今から水遊びに行きます。
良い天気〜。
breezemaster
おはようございます^^

分かっているのに、みんなには、その素振りを見せずに会話、
今日は、悪役ミニョンさんでしたね。
そして、遅れてきたユジンとの会話、
「ミニョンさん、こんなのミニョンさんらしくないです。」
「僕らしいって何ですか。ミニョンらしいって何ですか。」
ここにも、チュンサンだけど、記憶が無い、葛藤を感じます。
ユジンの目に、涙は、何度も見ますが、
チュンサンの目に涙は、あまり無いシーン、
そこに深い思いがあるのが伝わってきます。
今日も、貴重なシーン、ありがとうございます
hananoana1005
こんばんは🌜
更新有難うございます🌸

リアルタイムで観ていた時も感じたのですが、この場でユジンに「僕はチュンサンです!」って言ってしまうミニョンに違和感を覚えました!
それだけ、ミニョンは切羽詰まっていたことの現れかもしれませんが・・・。
薄々感付いているチェリンと違って、ユジンには全くの免疫が無いから返ってミニョンを遠ざけてしまうような。
ミニョンが哀れで可哀そうで、いたたまれない気持ちに当時もなりましたね~

明日はお仕事、おやすみですよね~ゆっくり休養なさってくださいね~
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