生石高原・紀伊の風

紀州和歌山の季節と自然のフォトページ

高原は花盛り

2009-08-25 | 季節は今






8月中旬から好天が続き“暑さも極まれる”日々でしたが、ここに来てどうにか秋らしくなり、生石高原も初秋の涼風を満喫できます。ヒグラシに代わってツクツクボウシも鳴きはじめ、季節も「立秋」から「処暑」の初候「綿柎開」(わたのはなしべひらく)となります。綿の花は鑑賞用としても好まれ“芙蓉”“木槿”に似た一日花です。
“槿花一朝の夢”の槿花(きんか)は同じ一日花の“アサガオ”ですが、朝開いて夕べに萎む花を、栄華のはかなさに例えた言葉です。晩夏から初秋の花にはそれを漂わせるものが多くあります。

この日、高原の早朝は雲ひとつない晴天です。駐車場からはオリオン座の小三ツ星までくっきりと見え、ボウとしたオリオン座大星雲も確認できます。着いて早々“宇宙戦艦大和”の世界ですが、南東方向からの稲光もストロボのように光ります(^^ 
太陽が昇って暫らくすると予想だにしなかった濃霧の来襲です。1時間足らずで消え去りましたが、突然真っ白になったかと思うと急に青空に戻ると言った、自然のダイナミズム?体験の山頂となります。霧がなくなると強い太陽光に晒されますが、前回のように蒸し暑くはならず、爽やかな風に救われます。




      「オミナエシ」 女郎花  オミナエシ科、多年草。

生石高原は今“オミナエシ”が絶好調です(^^ 霧が晴れたススキ草原のグリーンに映え、360度の山並みとも見事なマッチングです。“カワラナデシコ”がやや終焉に近づく時季、舞台装置が代わるようにピンクからイエローへ移行します。そして咲きはじめた“シラヤマギク”、盛りの“シシウド”、花期を過ぎた“コオニユリ”などなど織り交ぜて高原に“お花畑”の出現です。

      http://blog.goo.ne.jp/kinsan130/d/20070908 (2007年のオミナエシ)






        
           「キンミズヒキ」 金水引  バラ科、多年草。

熨斗袋に付ける水引を金色に見たてた名称です。種子は動物などにくっついて拡散できるよう鉤状の棘を着ける強か者で、高原全山で見ることができます。



      「クルマバナ」 車花  シソ科、多年草。


        
    「コガンピ」 小雁皮  ジンチョウゲ科、落葉小低木。 別称 イヌガンピ

草のように小さい“ガンピ”からの名前です。“ガンピ”“ミツマタ”といえば日本が誇る高級和紙の原料で知られます。別称の“イヌガンピ”はその和紙の原料にもならない…の意です。



  「ホソバノヤマハハコ」 細葉山母子  キク科、多年草。 県・準絶滅危惧種

背丈は低いのですがススキの根元に群生し、白っぽい葉や茎に加えて丸い純白の花の集まりは一際目を引きます。高原全山に生育する生石のエーデルワイス♪…?
花の中心の黄色は咲き始めで、短期間で黒ずんでしまうので美しいのを探すのも楽しみです。西洋では“真珠の乾花”の名前で、そのものズバリの表現に納得です。




生石高原は世俗を離れ健康的で“癒し”の場として草花や美味しい空気を求め多くの方が訪れますが、日本列島は新型インフルエンザの未知の恐怖に慄いてます。以外にも梅雨の高温多湿の時期も乗り越え急激に感染が広がり、乾燥期の一層の流行が心配されます。
毒性が弱いとはいえ何日か分らないのですが、熱で「フゥ~フゥ~!」を考えただけで“ぞっと”します。予防方法もはっきりせず薬も不足気味とかで、この際は“付け焼刃”でも“体力増強”を図るのが一番…と、今まで以上に高原を歩こうとも考えます。ちなみに駐車場から山頂~硯水湿地~笠石より西側の金屋駐車場付近までで約6000歩です。しかし、プロ野球選手でも感染するといった否定的な思いも…一体どうすりゃエエのヤロか?これと言った決定的な結論はないのですが、どうか皆さまも一通りの予防などを励行され感染なきよう…


                ― 9月に咲く生石高原の草木 ―

      8月下旬~9月初旬

        シシウド・オトギリソウ・マツムシソウ・シラヤマギク・ミズトンボ

        ススキ・ワレモコウ・ツリガネニンジン・イブキボウフウ・ヒメノダケ

        オトコエシ・サワギキョウ・クズ・ナンバンハコベ・サワヒヨドリ

        ヒヨドリバナ

      中旬~下旬

        マタタビ(果実)・アケビ(果実)・ムべ(果実)・ヌバタマ

        タムラソウ・キクアザミ・モリアザミ・ヨシノアザミ

        アケボノソウ・マルバハギ・シオガマギク・フユイチゴ(花)

        アキチョウジ・ツルニンジン・ヒメヒゴタイ

                           多少の誤差はお許し願います。

お盆も終わって…

2009-08-18 | 季節は今






豪雨被害、地震、帰省・Uターンラッシュ渋滞、終戦の日などなど連日これでもか?と報道された今年のお盆の週も過ぎ、今日は衆院選挙の公示日…そんな一連の出来事の中で、震度6弱の地震による東名高速道の不通は、日本の大動脈もあっけなくマヒするモロさに言いようが無いと言うか、危ういと言うか…そして、64回目の終戦の日…TVではいろんな戦争史観や平和に対する思いを多くの方が訴えてましたが、兵士として激戦地から辛うじて帰還されたご老人が、意味の無い戦争や作戦と解っていても死んでいった仲間を思うと、とてもそのような事は言えない…しかし、二度と戦争は嫌だ!と、絞り出すように語っておられたのが印象に残ります。

日本列島にいろいろの話題のあった間、季節は少し進んで「立秋」も末候「蒙霧升降」(ふかききりまとう)「蒙霧」は濃い霧がたち込める意で、この時季には山間では一寸先も見えない濃霧が流れることがあります。霧の中では写真も何もあったものでは無いのですが、霧の外側からはそれは魅力ある情景を造り出してくれます。その主たる要因は余計な物を包み隠してくれることでしょうか。この日、生石名物の“霧”には幸か不幸か出会えません。(^^

先月までとは打って変わり、良い天候が続きます。このようになると今度は草木のために多少雨が降った方が…などと心配の種にもなります。まことに勝手なものです。また、立秋ともなると、今までは麓から草花たちの開花が登ってきましたが、これからは生石高原から開花や紅葉が降って行きます。それはうっかりしてると花期を見逃してしまう程のスピードです。


        

少しだけ雲海と云うか霧が東の谷、二川ダム方向にかかってます。やはりこの時季は“コオニユリ”抜きの情景は“クリープの無いコーヒー…”と云ったところでしょうか。




 「ホソバヒメトラノオ」 細葉姫虎尾  ゴマノハグサ科、多年草。 県・絶滅危惧種

8月初旬には早い株は2分咲きでした。淡いブルーの花序は一見何処かで見たように思えますが、これは貴重な稀少種です。今年はことの他花序をたくさん着け立派な株に育ってます。下から咲き出す無限花序は以外に速く上の蕾へ到達します。


        



  
    「ゴマノハグサ」 胡麻葉草  ゴマノハグサ科、多年草。 県・絶滅危惧種

高原の第2駐車場上のススキ草原に林立するのが“ゴマノハグサ”です。葉がゴマに似ることからの名ですが、ゴマノハグサの資料が少ないのは全国的にも稀少種と思われます。3mmほどのとても小さい花や蕾が長く伸びた茎にたくさん密着します。まるで虫が集まってるようにも見え、その上、花を咲かせ終わってるとは思えない小さな蕾が汚く黒ずんだものも多くあって、見惚れる程のものではありません。(^^




       「オトギリソウ」 弟切草  オトギリソウ科、多年草。

      http://blog.goo.ne.jp/kinsan130/m/200708 (名前の由来、詳しく)




      「ゲンノショウコ」(赤花) 現の証拠  フウロウソウ科、多年草。

      http://blog.goo.ne.jp/kinsan130/d/20080906 (現の証拠、詳しく)




        「シシウド」 猪独活  セリ科、多年草。

高原では一際大きくレース状の白い花を咲かせます。草原を代表する蝶“キアゲハ”の食草です。イノシシがこの根を好んで食べることからの名称ですが、今年は例年になく掘り荒した痕跡が多く見られます。今朝はススキを波立たせて何か大きな物が猛スピードで逃げるのを見ました。こちらへ来なくてやれやれ…でした。

立秋・雲海

2009-08-11 | 季節は今


8月7日は二十四節気の「立秋」でした。暦の上では「秋」となり、七十二候では立秋の初候は「涼風至」(すずかぜいたる)で明日からはその次候「寒蝉鳴」(かんせんなく)…つまり秋に鳴く蝉、ヒグラシ(蜩)の鳴く時節です。もの寂しげに聞こえる「かなかな…♪」の合唱は高原では既にはじまってます。

早朝は濃い霧がたち込め半ば諦めて暗い空を見上げていると、時々かすかに星が見えはじめます。「ひょっとして…」の願望混じりの推測は見事的中…山頂に到着時には嘘のように霧も消え、予想だにしていなかった雲海に浮かぶ山並みが現れます。二ヶ月振りに雲のない山並みからの日の出も見ることが出来ます。朝日に照らし出される雲海は足元から広がります。…昨今の天候といい、今朝の紙一重のタイミングといい神懸り的なものを感じます。取りも直さず、日頃の行ない…です。(^^







霧が尾根の切れ目から溢れ出ます。グラスから溢れたビールの泡はそのままテーブルを濡らしますが、霧は気温がそうさせるのか降る途中で静かに消えます。それが創り出す白いグラデーションに感嘆です。主役の座を明け渡した“コオニユリ”は如何にも手持ち無沙汰…でも、高原の画面には無くてはならないアクセントです。




薄雲が広がってきました。風もなくなり名物?の無数の蚋(ブヨ)がまたもや顔の周りを飛び回ります。厄介なのは“虫除け”も効果無く、帰ってから刺された箇所が痛痒く腫れ、どうにか治るまで2~3日要するのには参ります。随分刺されました(´`;



        
         「キキョウ」 桔梗  キキョウ科、多年草。 準絶滅危惧種

既に咲き誇ってる“カワラナデシコ”とともに“秋の七草”のひとつで、“朝貌の花”と記されてるのが“キキョウ”のことです。また、“ミソハギ”などと“盆花”(精霊花)としても知られ、盂蘭盆(うらぼん)の精霊棚(しょうりょうだな)を飾る花だそうです。地方によっては多くの“盆花”があり、“邪鬼を祓う”といったものや“彼岸”との関わりのものが選ばれてるようです。

高原の“キキョウ”は絶滅寸前です。ボランティアの方の育苗のお蔭で絶えてはいないのですが、放って置くと生石高原から確実に消え去ることでしょう。特に大事に見守りたい種です。




      「ミソハギ」 禊萩  ミソハギ科、多年草。

この花は悪鬼を追い払うとされ花束に含ませた水滴でお墓を清めたリ、門火を消したりした“禊の花”で、その上“萩”に似ることから名の由来となってます。水懸草(みずかけぐさ)、仏花(ほとけばな)の異名があり“桔梗”と同じく“盆花”のひとつです。



        
           「ノギラン」 芒蘭  ユリ科、多年草。

“枯れ木も山の賑わい”なんて言ったら“ノギラン”に失礼です。薄茶の枯れたような色合いですがれっきとした総状花序の無限花序です。葉は根生葉のロゼット状で、“ショウジョウバカマ”に似ますが細身です。



        
           「ヒオウギ」 檜扇  アヤメ科、多年草。

名前の由来は、葉の並びが桧の薄板で作られた昔の扇、“檜扇”によく似ていることからです。また、“魔除け”と云うことで祇園祭りを飾る花として京の町屋に活けられます。
秋には複数の黒い実を付け、「射干玉」(ぬばたま)、「烏羽玉」(うばたま)は黒い物を形容する言葉として知られます。

      http://blog.goo.ne.jp/kinsan130/d/20081004 (ヌバタマ)

大南蛮煙管

2009-08-04 | 季節は今






今ひとつ盛り上がら無い夏のまま8月になります。7月下旬には日本各地でゲリラ豪雨が暴れ、大雨洪水警報が毎日のように発せられました。日照時間も例年の半分とか…片男波海岸を歩きますが、砂は乾くこともなく砂遊び跡、足跡の少ないのを見れば如何に海辺が閑散としてるかが判ります。しかし、今週の天気予報では晴れマークの回復で大勢の海水浴客が期待できそうです。

折りもおり二十四節気では「大暑」の末候「大雨時行」(おおあめときどきおこなう)8月初めには時として大雨が降りやすい時節です。うんざりだった梅雨もどうやら明けたようですが、不安定な気象は続行のようです。いつ、何処でどのように降るか判らない“雨!”の異常とも言える昨今の気象状況に、台風並みの警戒心を持ったほうが良いのかも知れません。皆さま方も“酷暑”も去る事ながらこの時期の“大雨”にはくれぐれもご注意を…




この日は、昼過ぎもしくは夕方から雨とのことでしたが、生石山頂に着くなり雨となります。毎回気象庁には欺かれるのは慣れっこで、“慌てず騒がず”開き直って、いつものコースを歩きます。どの政党にも気象庁・天気予報の適中率アップを…マニフェストに入って無いのはとても不満です…(´` 
雨は強くなったり止んだりで、相当濡れました。しかし、その雨は生石高原周辺の風景を変えます。雨中の高原もなかなか良いものですが、雨に煙るこんな日に早朝から草原をうろつくのは…馬鹿としか思えまヘ~ン!(´`;



        



        
  「オオナンバンギセル」大南蛮煙管  ハマウツボ科、一年草。県・絶滅危惧種

主に“ススキの根”に寄生する“オオナンバンギセル”ですが、今年はことのほか豊作?のようです。雨中のススキ草原を徘徊したのもそれが理由です。2本以上まとまった傷のない美しい株を幾つか見ることができました。未だ蕾の株もたくさんあります。レンズの水滴を何度拭いても取れずちょっとソフトな画像に…その上、雨の道端に寝転んで…ズブ濡れになった苦行の末の傑作?です…(´`

      http://blog.goo.ne.jp/kinsan130/d/20080805 (昨年の大南蛮煙管)

“南蛮人”が咥えていたパイプからの名前ですが、“南蛮”は火縄銃が日本に入った頃ヨ-ロッパ、特にポルトガル人を指しての呼称ですから、それ以前の和名は“オモイグサ”(思い草)の名で和歌などに登場します。首(こうべ)が俯き加減で何やら物思いに耽ってる…あなたはどちらの名前がお気に召してるでしょうか?

そこで…♪

道の辺の 尾花がもとの思ひ草 今さらになにものか思はむ   万葉集 作者不詳

くれはつる尾花がもとの思ひ草 はかなの野辺の露のよすがや  俊成卿女集 藤原俊成女

野辺見れば尾花がもとの思ひ草 かれゆく程になりぞしにける  新古今集 和泉式部


      http://blog.goo.ne.jp/kinsan130/d/20071008 (ナンバンギセル)




    「ヤマジノホトトギス」 山路杜鵑草  ユリ科、多年草。

噴水のように立ち上がった“雌しべに雄しべ”はとてもユニークな花形です。斑点はホトトギスの胸の模様に似ていることからの名です。花は2日程度と短かい上、まばらに草原に生えるので見つければラッキー…?



        
           「コマツナギ」 駒繋  マメ科、落葉小低木。

細い茎に馬(駒)を繋いでも、ちぎれないほど強靭であることからと、馬が好んで食べ、その場所を離れなくなることから…2つの名前の由来があります。“上げ潮のフンドシ”(食い=杭に掛かると離れない)人さまにもこれと同じ意味の言葉がありますよね。(^^ ちょっと品位が…




      「ナワシロイチゴ」 苗代苺  バラ科、蔓性落葉小低木。

      http://blog.goo.ne.jp/kinsan130/d/20090616 (ナワシロイチゴの花)

果実は美味しそうに見えますが、イマイチの味です。まァ、見た目は良いけれど中身は味気ない方も…と言うか“天二物を与えず”と言うか…(^^