6月21日は夏至でした。そして七十二候では初候「乃東枯」(なつくさかるる)の時節です。冬至の頃芽を出し、夏至の時季に枯れる草を云います。「乃東」(だいとう)は夏枯草(かこそう)の古名です。そして夏枯草は「ウツボグサ」の別称で、生石高原の麓では既に咲いてますが、硯水湿地でもあと暫くで多く見られますので、その時期にご紹介致します。
夏至は太陽が一年で最も北に位置します。高原山頂から見る日の出(17日撮影)も東向きでは最も左側からとなります。またその時刻は4時48分(国立天文台)となってますが、実際は山並みや雲などで、お日さまが顔を出すのは多少の遅れとなります。
生石山(古文書による別称・応神山)から八方を眺められた“弘法大師”は現在の“高野山金剛峰寺”を建立する場をお決めになられたと伝えられてます。もしこの時期に山頂に立たれたのであれば、まさに“日の出ずる”山を選ばれたこととなります。
右側の白馬(しらま)山系の日の出前は特に素晴らしい情景でした。真っ白の霧が尾根からゆっくり降る様子は、その静寂を尚一層強調します。残念ながら太陽が昇るとともに雲塊は消え去ってしまいました。
この位置までの道中は“お花畑”の山道です。「ノイバラ」「ウノハナ」「ガマズミ」そして「スイカズラ」と疲れを感じさせない道行きを白一色で演出してくれます。そして今朝の第一曲目はホトトギスでした。順次カッコウ、ウグイスとあいも変わらず賑やかですが、キジが間近から飛び立つのには驚かされます。
「ヒメユリ」 姫百合 ユリ科、多年草。 環境省・絶滅危惧種
近畿より南西域に分布とありますが、乱獲や開発での環境変化などで自生地では絶滅に近い状況です。生石高原では故前田先生やIさんたちのご尽力で消滅を免れ、Tuさんたちの保護活動のお陰で毎年愛でることが出来ます。和歌山に“ヒメユリ”と言えば野草に詳しい方であればとても驚かれます。それは取りも直さず生石高原の“宝物”であり“誇り”といっても過言ではありません。
万葉の歌にも登場する“ヒメユリ”ですが、“ササユリ”などのユリ類と違って上向きに咲きます。色も鮮やかなオレンジ色で黒い斑点があります。花の寿命は2~3日で色あせます。花のない“ヒメユリ”はススキの中では見分けにくく、踏みつけ傷める恐れがあります。花のある周辺は特に注意される事をお願いしたいと思います。
「ホタルブクロ」 蛍袋 キキョウ科、多年草。
2週間前に麓では咲いてましたが、ようやく高原で咲き出しました。アクセス道の道脇に咲く“ホタルブクロ”たちは山頂に向かっての季節の進行の目安となります。はっきり、そして簡単にその確認のできる有りがたい存在です。高原の“ホタルブクロ”とともに“ササユリ”の蕾が大きく膨らみます。
「マタタビ」 木天蓼 マタタビ科、蔓性落葉木本。 別称 夏梅
疲れた旅人が“マタタビ”の実を食べて旅を続けることが出来たことからの名だそうです。しかし何と言ってもこの木は“ネコちゃん”との関わりでしょう。かの“トラ、ライオンくん”も“マタタビ”でごろごろと恍惚状態になるそうです。
紀美野町からのアクセス道の潅木林に半分ほど白くなった葉が“マタタビ”です。花の寿命は短く、散ると小さな実となります。多分今ごろは可愛い実が順序よく枝に並んでます。
「ビワ」 枇杷 バラ科、常緑樹
高原の麓から中腹には、美味しそうな“ビワ”がたわわに実をつけてます。
http://blog.goo.ne.jp/kinsan130/d/20080129(ビワの花)
陰暦6月は疫病や、穀物の虫害に警戒しなければなければならない時期(花の名前より)でした。今日のタイトルの“夏越の祓”(なごしのはらえ)はこの危ない時期の無事を願ったり、海や川に入って穢れを落したりする古来よりある神事を云います。
現在でも、1年を6月と12月の2期に分って、来るべき新たな時期に入る祭り日を“忌の日”とし、6月晦日を“夏越”(なごし)と呼んでます。新暦の6月または一ヶ月遅れの7月晦日に、茅(チガヤ)で作った輪をくぐる神事(夏越の祓・茅の輪くぐり)が各地で行われます。
和歌山市山東(さんどう)地区にある伊太祈曾神社(いたきそじんじゃ)では“輪くぐり”と呼ばれて親しまれている“夏越の祓”の神事を毎年7月30~31日に行われます。神社の禰宜さんにお伺いしますと、“茅の輪”をくぐる事によって、今まで半年間のけがれを取り除き、新しい気持ちと身体になって夏場と向こう半年間を無事に過ごすことが出来るお祭りである…と教えて頂けました。
本日ははからずも“弘法大師さん”や“伊太祈曾神社さん”が登場の“神仏習合”のページとなりました。いずれにしましても、“神仏頼み”も良いですが、これからの時節は体調管理の大事な時節です。どうか皆さまも充分にお身体をご自愛なさって頂きたいと思います。
そして6月も残すところ僅かとなり、梅雨空も本来の雨続きの日々が続きますが、生石高原の草花たちは順調に次へ次へと進行してます。7月の昨年のデータでは次の通りです。
7月初旬~
ヒメユリ? ホタルブクロ ササユリ オカトラノオ カキラン
ウツボグサ キヨズミギボウシ
中旬~
モウセンゴケ オトギリソウ コバギボウシ
下旬~
オオナンバンギセル カワラナデシコ キキョウ オオバギボウシ
固体の生育状態などで誤差が生じます。あくまで目安にして頂き、お目当ての草花の状況は“山の家おいし”℡(073)489-3586 にお問い合わせ下さい。