【マイクル・ワイマンの逆襲】 ボブ・クック
主人公のワイマンは五十六歳。
大学の名誉特別研究員であり、MI6で東ドイツの情報収集を担当。
さぞや切れ者に違いない…
哲学博士としてはパッとせず。
冷戦後の東ドイツ情報なんて誰も気にしてない状態。
とは言え、そう悪くない生活を送る日々。
そんな中、恋人が妊娠、第二の人生とやらが明るく見えてくる。
ところが。
政府の支出削減、大学の経費削減が重なり。
なんと、両方とも首!
という事で、人生最大の賭けに出るワイマン氏。
CIAやらKGBやらを巻き込む大混戦に。
ユーモアある文章が、なかなか楽しい。
スパイ同士の探りあいも、深刻さはあまり無く軽妙。
それぞれの情報局員のタイプも、いかにもそれっぽい。
相手を信用しなかったり、甘くみたり。
裏の裏やら裏の裏の裏やらを読もうとしたり。
おとな気ない人々が、見苦しく振舞う喜劇的要素満載。
どこか抜けてるが、自分の事しか考えてない登場人物。
当時の世相を背景に、それぞれの自己中ぶりが面白い。
辛らつな人間観察をコミカルに綴るので楽しめる。
“この男は本物のイタリア料理がどんなものかを知ってはいるが、忘れたほうが利益が上がる、と考えていた。”
「リチャード?お前の父親だ。おまえの小切手の過振りを始末している男だ」
「~いかに不快なことに思えようと、とにかく金のために働くという考えに方に慣れてもらわなければならないのだ」
「不快なことに思えるだけじゃあない、実際にそうなんだ。でもなんとかするよ」
他にも数冊出版してるらしいが、翻訳は無いみたい。
ワイマン氏のその後を描く続編もあるらしいが…
残念。