名無しの教師の日誌

ある公立中学校教師の教育私論と日記です。

「オンライン授業って始まらないんですか?」

2020-04-18 15:11:45 | 教育に関する私論
最近、保護者の方から多い質問・意見がこれです。

「オンライン授業って始まらないんですか?」

うちの学校は、一般的な市町村立中学校です。

オンライン授業の体制は整っておらず、休校中は

「教科書の何ページから何ページまでを、このように自習しておきなさい」

的な指示プリントが配られただけなのです。



さて、ではなぜオンライン授業の体制整備が進まないのでしょうか?

私の意見を述べます。

まず、根本的に

「学校とはこういうもの」「教師の仕事とはこういうもの」という前提に、オンライン授業は含まれていないのです。

だから、設備(予算)もないし、教師のスキルもない

そして、教員の服務規定も、オンライン授業に対応するものではありません。

※ここでいう「教師」とは、公立小中学校の教師のことです。たとえばN高校のような学校の場合は、話は変わります。



そもそも、「授業」とは何でしょうか。

先生が、教科書にもとづいた学習内容をしゃべり、板書し、それを生徒が聞き、黙々とノートに取り……

そのような授業は、原則、ふさわしくないと今日ではされています。
(参考記事:文科省の考える、令和の理想の授業がこちらです)


すなわち、文科省の考える、言い換えるならば公立学校の教師がやるべき授業というのは

教師-生徒間および生徒ー生徒間に対話があるものなのです。

まあ、それもそれでどうなんだ……?という私見は、この過去記事で指摘しました。興味のある方はご覧ください。

そんな授業を再現する体制を、今から大急ぎで整えようと思ったら、短期間で

①大幅な予算増→ハードウエアの整備
②外部人材の大量登用
③大幅な服務規程の改定
④教員に対する短期集中的な研修


が必要です。

外部人材とは、教師ではない、SE的な常勤職員という意味で書きました。

③はともかく①②には急にできるものではありません。

④はやれないことはないですけど、これをこの情勢下でやって職員室がクラスター化したら、しゃれにもなりません。



上記のような準備をやらずにオンライン授業をはじめたら、付け焼き刃の、かなりお粗末な代物になると思いますよ。

先ほど「ふさわしくない授業スタイル」と示したような

先生がひたすらに解説をしゃべり、内容を板書した映像を放映する……。

生徒はそれを見て、黙々とノートを取るか、そのフリをしながらスマホでもいじっていることでしょう。

そんな一方通行の授業は、そもそも有意義なのでしょうか。

そんなものを子どもに見せるくらいなら、ひたすらNHK for schoolを見せていた方がはるかに良いのではないですかね。

なお、③についてですが、私の勤務市の場合、私物のスマホを業務に使用することは明確な服務規定違反です。

どこもそうだと思いますよ?

じゃあ業務用PCはどうかというと、セキュリティがキツすぎて、今のままではとてもオンライン授業なんて無理です。

セキュリティ規約の大幅な改訂と、それにあわせたシステム改変が必要です。

長々と書いちゃいましたけど、まとめると

「まともなオンライン授業をやろうと思ったら、色々と準備が必要だけど、それを短期間でやるのは難しい」

ということです。



仮に大急ぎで整備ができたとしても

コロナ収束後、その整備された設備、人員を有効に活用できるかと言ったら疑問です。

現在の学校は、コロナのような特別な事情が無い限り

「生徒が平日は原則毎日登校し、教師や級友と顔を合わせてともに学びあう」

ということを前提としているのです。

その前提を変えない限り、コロナ収束後、オンライン授業の設備や体制が有効活用できるとは思えません。



「塾はやってるじゃないか」

そう言われそうですけど

塾の主たる目的は、「生徒の学力を向上させること」じゃないでしょうか。

ですから、生徒が登校してるかどうか、級友と切磋琢磨してるかどうか、はあまり重要ではないのかなあ、と思っています。
(まあ、私は塾で働いたことないので、推測ですが……)

なので、塾は

・タブレットの導入など、そもそもオンライン授業の体制をある程度もっているところがあった。
・情勢収束後、その体制を有効利用できる可能性が高い。

わけです。

だから塾は、そもそも学校よりも必要な準備が少なく、また、大急ぎで整備する動機も強い傾向にあると思います。



まあそんなわけで

「なんでうちの学校はオンライン授業をやらないんだ!?」

というようなクレームを入れるヒマがあったら、家庭でできる有意義な学習はどのようなものなのかを、各家庭で模索した方が有意義な気がします。


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