きづき窺見帖

窺見≒物見≒斥候≒間諜≒密偵≒SPY

没下書き2

2006-02-18 | 卑小説
書く事がないので、短変小説もどきの下書きのなりそこないを、また載せてしまうことにした。雑な絵も付けて・・
注 : 没下書き(下書きにも採用されないこと)

 『途方に螺子暮れる』
 頭がくらくらする。
 誰かに頭を強打されたのか? いま小刻みに震えているのは、怯懦な心のせいか。強打による怯懦。ううぅ、こんなときに何考えているんだ! 余計に頭が痛い。
 どのぐらい昏倒していたんだろう。ゆっくり携帯を取り出すと、ぼんやりと日付が見えた。呑み会は金曜だったから。ああ、強打されたのは、今日だ。ううぅ、俺って奴は・・・・・。今年の冬は異常に寒いのに、こんなところで昏倒していたら、死んじまうとこだった。今冬に昏倒!  ううぅ、俺はこんな下手な駄洒落を言う人間じゃない。確か、洗練されたユーモアの持ち主だったはずだ。
 きっと、殴られて、頭のどこかにある“センス”の螺子が緩んじまったんだ。もしかしたら、そこらへんに螺子が落っこちてるかもしれない。探さなきゃ。ちゃんと螺子を巻いて、きつく締めておかないと。これから俺、年取ったら『駄洒落オヤジ』になっちゃうよぉ。・・・やだ。
 冷たい。やっと、周りを見回す余裕ができる。なんと氷の上だ。道路の端っこ、暗闇に包まれ、車の騒音も聞こえない。徐々に思い出す。昨日は、都心で何年ぶりかの大雪だった。あぁ、殴られたのではない。呑んだ帰りは最後にはひとりになって、ふらふらただ目的もなく歩いていた。滑ったんだ。それで頭を打って、螺子が外れた。そうだ、間違いない。そして、『駄洒落兄ちゃん』に・・・いやそんな言葉はない。「だじゃれをいうやつはだじゃれ! じゃない、だれじゃ」 あぁ、もう駄洒落にもなってない。螺子がない。氷の上を滑っていってしまったのか。
 
 その後、彼は螺子を見つけることができずに、『駄洒落兄ちゃん』になってしまった。そのセンスのカケラもない駄洒落に、周りのすべての人間が引き潮のように引いていった。当然のように彼女などできなかった。この年齢(とし)になっても、いまだに独身だ。ただ今は、駄洒落を言っても周りが引き潮になることはない。なぁに、みんな諦めているだけだ。凪にはなるが・・・。
 あぁ、あのときの、事故がなければ・・・雪が降らなければ・・・凍ってなければ・・・。いまだに悔やむことがある。しようがない。街灯の点灯もない店頭での転倒は、お天道様だけが知っている。
 彼はときどき自分だけが気に入っている駄洒落をつぶやく「天気が転機だった」

 <おしまい>=終わること。物事がだめになること。
コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« クロール | トップ | 去勢をしはる »

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ウソのような昏倒な話?? (ねむ)
2006-02-18 01:41:16
それはいつのことだろう?

螺子が絵の中にも落ちている・・・。猫の手よりも太いから、結構な大きさだ。

頭蓋骨に、ぽっかり穴が開いたのではないのか?



雰囲気が出ている墨絵っぽい都会の片隅・・・あ、向こうに見えるのは東京タワーじゃないのか

東京では梅が咲いたというのに、きづきさんの今夜のお酒は、うめ~と肴買ったの?
返信する
ねじ (jumbo)
2006-02-18 07:27:53
車のトランクを閉めると、ポロッとねじが落ちたことがあります。

15年も乗っていると緩んでくることもありますね。

返信する
左の (きづき)
2006-02-18 22:12:32
ねむさん、左下は、螺子が外れた人物が這いつくばって、探しているつもりだったのだ

確かに螺子が取れた後の穴を描いたので、猫の耳に見える

ははははは、面白い



それから、これは私の話ではありませんので、誤解なきよう
返信する

コメントを投稿