KEVINサイトウの一日一楽 

人生はタフだけれど、一日に一回ぐらい楽しみはある。

ユーミンがBGM その2

2006年09月25日 | Music,Movie & TV
 (3)真冬のサーファー

21歳の青年は、幼友達の二人といつも馴染みのBARでたむろしていた。青年は、大学に通っていた。他の二人は専門学校を出て、働いていたので多少は金があった。従い、青年は飲む人、友人は金を払う人という役割が自然とできた。その頃、三人は偽者のサーファーだった。髪は長く、服装はサーフ・ブランドのTシャツや花柄のアロハっぽいシャツ、ボトムは少しフレアの入ったジーンズやコーデュロイのパンツ、ごついバックルの皮のベルトをしていた。しかし、日焼けしていない顔を見れば、青年達が所謂、「陸(おか)サーファー」であるのは自明であった。ある時、BARに一人の女の子がバイトとして入ってきた。彼女は、髪が海水で赤茶けて、顔も日焼けでそばかすだらけ、背も高く、筋骨も発達している本物のサーファーだった。彼女とは仲良くしたが、本物のサーファーと陸サーファーでは分が悪い。そこで一念発起(?)して、三人は、まだ寒風の吹く初春の伊良子岬へ波を乗りに行った。友人の車はワゴン車でリア・ウインドーには数え切れないほどのサーフ・ブランドのステッカーが貼ってあった。「陸」なのに、ここまでやる友人をさすがに青年は少し軽蔑した。(自分のことを差し置いて。)そのワゴンにボードを乗せて、青年達は夜更けの高速を走らせ、伊良子に向かった。まだ冬が残る伊良子の朝は、日の出とは言っても雲の色は重い。しかし、スウェットに着替えた三人は勢いよくボードを抱え、海へと走っていった。落伍はわずか5分だった。「寒すぎるぞ」「唇が真っ青だ」「きたねえ、おまえ鼻水垂れてるぞ」青年は厳粛に二人の友人に告げた。「冬にサーフィンをするのは尋常の人間がすることではない。俺は降りた。」友人たちも頷いた。それ以降、青年達はサーファーの格好をするのは止めた。でも、青年達の頭の中では、いつも波の音がしている。パイプ・ラインをくぐる姿が映っている。青年達は「陸サーファー」は止めた。しかし、いつまでも頭の中では、サーファーだった。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
うまい具合に (いそちゃん)
2006-09-27 01:08:13
それにしてもうまい具合にいい写真見付けますね。

まさか当時本当に撮った写真じゃないですよね?
返信する
GOOGLE (KEVIN)
2006-09-27 09:07:49
著作権の問題があるかもしれませんが、GOOGLEのイメージ検索利用しています。
返信する

コメントを投稿