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ケンタシノリのバルコニーから眺めて

【第1話】水助くん 夏のおはなし

 水助はお母さんの畑仕事の手伝いを終えると、かけ足で山の中へ入っていきます。ぼうず頭ではらがけ1まいの水助がたどり着いたのは、ハスの葉っぱがたくさんうかぶ大きな池です。

 池から聞こえてきたのは、カエルのいろんな鳴き声です。ハスの葉っぱにカエルが集まってきたのを見て、水助はとてもうれしくてたまりません。

「わあ~っ! ぼくもカエルみたいにハスの上をピョンピョンと飛びはねたいなあ」

 青空から夏の暑い太陽が照らされる中、水助はその場でしゃがんでから両手を地面につけました。水助は、カエルになりきって池のほうをずっとながめています。

「よ~し! あの池に向かって飛びはねるぞ!」

 水助は、池のほとりから水の中へ入ろうとカエルのように大きく飛び上がりました。

 そんな時、だれかの声が水助の耳に入りました。

「ぼうや! 水の中へ飛びこんだらあぶないぞ!」
「うわっ! ちょっと放してよ!」

 水助は大きな池に飛びこむ手前で、すがたの見えないだれかに持ち上げられています。いきなりの出来事に、水助は何度も大きな声でさけんでいます。

 すると、空の向こうから声がふたたび聞こえてきました。

「そのまま池の中へ入ったら、おふとんにおねしょをしてしまうぞ」

 その言葉が水助の耳に入ったとたん、今まで広がっていた大きな池が目の前から消えていきました。次にあらわれたのは、水助の家の中です。



「あれれっ? どうしてぼくのおふとんの上にいるんだろう」

 水助は、自分がいる場所を見て不思議に思えてなりません。となりのふとんでは、お母さんがぐっすりとねむりについています。

 暗やみに包まれる中、水助の周りだけはかすかに明るくなってきました。

 そこにあらわれたのは、白いひげを生やしたでっかいカエルのすがたです。

「わわわわっ! 化けものカエルだ!」

 目の前にいるカエルからにげ出したい水助の耳に入ったのは、やさしいおじいちゃんのような声です。

「そんなにこわがらなくてもいいのに……」

 水助は、正面を向いて大きなカエルの顔をじっと見ています。見れば見るほどやさしそうなカエルの顔つきに、水助もホッと一息つきました。

「びっくりさせて本当にすまない。わしの名前はカエルじいやというものだが、ぼうやはどんな名前かな?」
「ぼくの名前は水助! 10才の男の子だよ!」
「はっはっは! これは元気そうな男の子の名前だなあ」

 おたがいに顔を合わせながら話をしていると、カエルじいやは水助のカエル飛びをどうして止めたのか口を開いて言い出しました。

「ぼうや、自分のおふとんをよく見てごらん」
「あっ! おねしょしていないぞ」

 思わず言ってしまった水助に、カエルじいやはその理由を言い始めました。

「実は、ぼうやがカエル飛びをしようとしたのはゆめの中のことだったのじゃ。そのまま池の中に入っていたら……」
「おねしょをしていたということ?」
「そういうことじゃ。そういえば、ぼうやはいつもおふとんにおねしょの大失敗をしているそうだな」

 10才になってもおねしょが治らない水助は、いつもくり返す失敗の数々を思い出しながら顔を赤らめています。

「そんなにはずかしがらなくてもだいじょうぶじゃ。それよりも、ぼうやはどうしてカエル飛びをしたいのかな?」

 カエルじいやの一言に、水助はすぐに元気な声を上げました。

「大好きなカエルになりきって、ピョンピョンと飛びはねたいんだもん!」
「はっはっは! そういうことだったら、わしが正しい飛び方を教えてやるぞ」
「本当に教えてくれるの?」
「ああ、本当に教えてあげるからわしの後についておいで」

※第2話以降は、こちらの小説投稿サイトにて読むことができます(無料です)。
小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n4822fr/
pixiv:https://www.pixiv.net/novel/series/1161667 

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