川越だより

妻と二人あちこちに出かけであった自然や人々のこと。日々の生活の中で嬉しかったこと・感じたこと。

父の日記(昭和3年)(4) ルソー

2008-01-10 09:22:36 | 父・家族・自分
 娘の部屋の模様替えに伴う粗大ゴミを西清掃センターに運ぶ。家庭ゴミの場合は50kgまでは無料だという。本の整理、処分も終わり娘の部屋は見違えるばかりきれいに整頓された。あたらしいパソコンが設置されて、このノートパソコンは僕の専用になった(?)。
 立教大学の佐久間さんの骨折りで「在日韓国・朝鮮人生徒の教育を考える会」の機関誌『木苺』のバックナンバーが立教の大学図書館に保存利用してもらえるという。創刊号から131号まで整え、発送の準備。5号と92号が手元に一部ずつしかなく、Aさんにコピーをお願いする。1978年発行の5号は最終ページがなくなっている。是で法政大学図書館と二カ所で保存されることが決まった。この30余年間の私たちの歩みが研究の対象とされ、いくらかでも批判的に検証され、未来に生かされるとすれば苦労を共にした誰もが喜びを感じるだろう。
 僕の図書類ももらってくれる人を捜しています。自分の歩みに影響を与えてくれたさまざまな本たち。佐久間先生にひとり心当たりがありそうです。皆さんのなかにもらっておこうと言う奇特な方がおられたら声をかけてください。

 昨夜は遅くまで(10時頃までと言う意味です)父の日記を読みました。是でざっとですが昭和3年が終わりました。20歳の父の姿が見えるようで、いとおしい気持ちになります。羽根という村に下宿し、小学校の教員をしながら週末には自転車で家に帰る生活です。7月31日からは夏休みで8月1日に室戸岬の実家に帰っています。
 
 8月3日(金) 曇
 相変わらずの又之天気。勉強できず。自転車の掃除をなす。二階に上がったり、降りたり、本を開けたり、閉じたり、だらしなきこと夥(おびただ)し。
 小人閑居して不善を為す。古人の言に偽りはない。一人一室に閉じこもっていると種々の下らぬ妄想が起こって困る。
 「暇を作らず自己の周囲を忙しくせよ」誰だか忘れたが西洋の著名なる実業家の言である。人間はおかしなもので忙しければ忙しい丈(だけ)、仕事の能率が上がるものだ。
 折々に 遊ぶ暇のある人の 暇無しとて 文(ふみ)読まぬかな
学問する時間を多く持つ者と少なく持つ者とどちらが幸福であるかは俄(にわか)に判別出来まい。仕事に追われ追われ乍(ながら)僅かの暇を偸(ぬす)みて為す学問こそ真に血となり肉となるものだから。

 8月4日(土)曇
 天気恢復せず。初めて読書、やれば存外にやれるものだ。「思想問題十二講」を昼迄読む。午後は経済学勉強。
 かき餅を上(義母の実家。僕の生家)から貰って来て食う。頗(すこぶ)るうまし。風呂焚き、6時入浴。引き続き夕食。姉上来る。 

 政治的権力は法律を制定し、執行し、外来の威力に対して社会を防衛するにある。然も是らは凡て人民の幸福の為に他ならない。故にかかる権力は人民の中にあり、人民の自由なる契約によって生じたるもので有らねばならぬ。…ジョンロック

 英国経験派哲学が仏国革新文学に及ぼせる影響は実に甚大なものである。ルソーの民約論はロックの思想を演繹したものにほかならぬ。

  8月5日(日)退屈至極。自転車を駆り、羽根に至る。小松君一人にて暢気に過ごせり。中島五郎君来たりテニスをやる。硬球は軟球に比して興味の遙かに大なるものである。硬球をやって後、軟球をやるのはウィスキーの後に卵酒を飲む様なものだ。だすい事夥しい。
 小松君と水泳に行く。五時帰宅。実に疲れたり。大石の叔母上来たり。姉上の結婚問題に就き懇談。十時半就寝。

 ロックやルソーの思想を学んでいる。「民約論」を紹介したのは郷土の先輩・中江兆民である。僕が思っていたより遙かに西洋の民主主義思想を学んでいる。
 室戸岬の実家と羽根(小学校)とは15kmくらいか。勿論、砂利道である。この日は自転車で往復したことになる。

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