川越だより

妻と二人あちこちに出かけであった自然や人々のこと。日々の生活の中で嬉しかったこと・感じたこと。

父のこと(1)

2007-08-29 20:35:49 | 父・家族・自分
 父の様子を見るためもうしばらく室戸に滞在します。今日配布された市の広報誌によればこの10月22日に100歳になる父はこの室戸岬地区では最高年齢です。他の地区では102歳の女性などがいます。室戸岬地区は遠洋漁業に頼ってきた町で男も女も長生きには縁が遠いのでしょう。労働の厳しさ、食生活、どれをとっても良い条件はありません。
 父は鯨捕りの花形であった羽差しの子です。泳ぎも相撲も抜群で正に子供の世界の大将です。父の周りにいた人から聞いたことがあります。大将というのは並大抵のものでは成れません。一人ひとりの面倒を良く見て、文字通り誰もが食っていけるようにしなければならないのです。魚を捕まえたり、ナガリ(とこぶし)をとったりすることについても独り占めをしてはなりません。この大将に就いていたら食いっぱぐれることはないと言う確信を一人ひとりが持てるように実力をつけ、また仲間を教育するのです。
 そんな育ち方をしたせいか、身体は人一倍丈夫です。そんな人が漁師ではなく教師になったのですから、誰よりも長生きが出来るのでしょう。土佐の鰹鮪漁師というのは並大抵の仕事ではあリません。青柳祐介という土佐の漫画家が漁師の生活を克明に描いていますから良かったら読んでみてください。長生きとは縁がありません。
  青柳裕介@amazon.co.jp

 父の自慢話の一つに、若死にした異母兄の最期の言葉があります。「津呂村万歳」。高知商業を出て津呂(私たちの集落。室戸市室戸岬町津呂)の漁業組合で働いていた長兄は結核のため倒れたのですが、こう言って逝ったとのことです。父が生涯一教師でありながら故郷の村から出ることを拒否し、戦後の一時期には町会議員、退職後は市会議員などを務め、村人のたつきのことを常に考えてきたことはここに原点があるのかもしれません。戦時中にも軍の命令(?)を断り、この村を離れなかったのです。これはいまひとつの父の自慢です。
 父は人が好きです。友達や後輩を大事にします。お客(人を呼んで宴会をすること)も大好きです。並外れた酒豪です。少年期に育まれた資質はその生涯を通じて生きる力の素になってきたように思えます。 


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1 コメント

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あかあかと一筋の道 (カツヨシ)
2007-08-30 10:54:02
 「神様の前では、人はみな平等……差別はいかん……差別はいかん」
 3年前、お父上にお会いしたとき(「お客」の席で)、声をふりしぼって、諭すように、訴えるようにおっしゃった言葉です。96歳。「とおい、とおい、とおーーーい昔」に東京に出て行った教え子のだれそれを記憶の底から引き出すように、ポツリポツリと語った後、突然(一見何の脈絡もなく)語気を強めて語られたのでした。それは、遠来の客、初対面のぼくへの真率なメッセージでありました。「ああ、ここにも、一生同じ歌を歌い続けた人がいる!」 ぼくは、思わず座りなおして、ただ深く頭を垂れるばかりでした。



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