著者:エイドリアン・スライウォツキー、リチャード・ワイズ
出版社:日本経済新聞社
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■なぜ読もうと思ったのか?:
「ザ・プロフィット」の著者、スライウォツキーの最新刊。
前著はさまざまなビジネスモデルの紹介でしたが、
今回は従来型のビジネスモデルに限界がきている企業を対象として、
新たな成長の種を見つける方法を紹介しています。
そのコンセプトを、「ディマンド・イノベーション」と言います。
従来の単なる製品機能を売るビジネスから、
製品機能を超えた顧客のニーズを見出し、自らの役割を拡張することです。
ポイントは以下の2点です。
○顧客を観察する視点を、製品から経済性へ転換する
○需要を受容する側から、需要創造者へと移行する
ぼくの仕事においても、これまで50%以上パワーを注いでいた業務を効率化して、
自分たちが入らなくても、勝手に進む仕組みを確立しようとしています。
空いた時間を作って、新たにどんな価値を生み出すか。
そのヒントとして、活用できそうだったので、読みました。
■どのような点が役に立ちそうか?:
(1)同じ顧客に、新しい価値を提供する
成長するための1つの方法は、従来のお客さんに対して、
新しい価値を提供することです。
売上というのは、単価×顧客数で表すことができますが、
こちらは新しい価値を提供して顧客単価を上げることで、成長することです。
具体的に、どのような価値を提供できるでしょうか?
○製品導入後のフォローサービスを提供する
→製品を販売するだけでなく、購入するための資金を融資したり、
導入支援作業やメンテナンス、トレーニング(活用支援)などを行う。
○顧客が慣例的に管理していたプロセスを代行(自動化など)する
→例えば、購入した製品の在庫を管理して足りなくなったら再発注する。
そういった業務は顧客側がすることになっていましたが、そこを責任を持って
代行します。顧客に取って不慣れな作業であったり、リスクが高い場合は
歓迎されます。
○隣接するプロセスをカバーする
→例えば部品メーカーの場合、製造するだけではなく、
(部品を集めて)組み立てる工程、(何を製造するのかを決める)
設計工程までも自社の対象領域とすることです。
○顧客の顧客の満足度を上げるために支援する
→自社にとっての顧客が満足するかどうかに焦点をあてるだけでなく、
顧客の顧客を満足させるために何かできないか。そこをビジネス化します。
(2)従来の価値を他のターゲットに提供する
もう1つの方法は、従来の価値を他のターゲットに提供することです。
先ほどの単価×顧客数でいうと、顧客数を拡大することで、成長する。
その方法です。
こちらはどのような方法がありますでしょうか?
○同じ価値を別のターゲット(別の業界)に展開する
→例えば、高校生向けに難しい教科書をわかりやすい解説で、楽しく学べる教材を
提供している企業があるとします。その強みである「難しい知識を、
わかりやすく楽しく説明する」価値を、例えば資格試験市場などの
別の業界にも適用するというイメージです。
○競合製品のユーザーに対しても、同じ価値を提供する
→同じ例で言うと、競合の塾に通っている高校生に対しても、蓄積されたつまづきを
理解してもらうための補習塾を提供するということです。
(3)新しい価値を、新しい顧客に提供する
これは、単価、顧客数の両方に影響する成長の方法です。
○自社の製品を製造するための優れたプロセス(ナレッジ)を他社に提供する
→本書の例で言うと、ガス会社にとって、従来は、ガスを利用する個人/法人が
顧客でした。成長するために、新たに「大規模な工場を安全に運営するための
ノウハウ」を提供することにしたのでした。
○保有している情報を生かす
→本書の例では、TSUTAYAが取り上げられていました。大量の顧客情報を
保有してDBマーケティングを実施していましたが、その情報を活用して、
BtoC企業のマーケティング支援事業を開始したそうです。
(4)隠れた資産を活用する
成熟した市場において、新たに成長するための方法には、
上記の3パターンがあることがわかりました。
1つだけ共通点として言えることがあります。
それは、自社の強みを活用していることです。
(1)は自社の強みをコアとして、その周辺業務をカバーする方法でした。
(2)は自社の強みをそのまま他社に提供する方法でした。
(3)はこれまでのビジネスの中に内包されていた強みを、新たに発見し、
活用するという方法でした。
逆に言うと、自社の強みを活用することを考えずに、
トンデモナイ方向での新規事業を開始しても成功はおぼつかないですよ。
そういうことだと思います。
それでは、自社にはどんな強みがあるのでしょうか。
本書の中には、5ジャンル18種類の強みがあると紹介されています。
○従来の無形資産
・知的財産とコンテンツ
・特別なノウハウと中核能力
・ブランド
○顧客関係資産
・顧客への権威づけ(例えば、専門家としての信頼、「一流」という信頼など)
・顧客創造力
・顧客との相互関係
・顧客の抱える経済的な問題に対する深い洞察力
○戦略的不動産
・市場での地位
・業界内のバリューチェーン(ワンストップで提供できる位置にないかなど)
・顧客へのアクセスポイントの保有数
○事業ネットワーク資産
・製品普及数
・第三者との関係(サプライヤー、チャネル、研究機関など)
・ユーザーコミュニティ
・取引機会を早期発見する能力(新しいシーズにどこよりも早く気づけるなど)
○情報資産
・システムとソフトウェア
・技術的なノウハウ
・マーケットウインドウ(顧客やサプライヤー、仲介業者からの声が集まる)
・派生情報
自分の組織には、どんな強みが隠れているでしょうか。検討してみましょう。
(5)隠れた負債を発見する
多くの企業には、上記のような隠れた資産があることがわかりました。
それでは、これを発見すれば即新しいビジネスが生まれるかというと、
そううまくいかない場合があります。
どんな場合でしょうか。
隠れた負債が足を引っ張っている場合です。
つまり、強みが隠れているのとは反対に、隠れている弱みが存在する
ことも十分考えられるのです。
克服しない限り、成功する確率は低いままでしょう。
それでは、どんな弱みが考えられるでしょうか?
○企業文化面での負債
・企業の思考様式
・企業文化と歴史(そんなものはうちがやることじゃないよ、という反発)
・リーダーシップとコミットメント
○構造面での負債
・組織構造
・技術力と能力
・業績評価と業績連動報酬システム
(失敗するリスクのある新ビジネス立ち上げよりも、短期的な業績をあげられる
既存ビジネスに集中する)
・予算と資源の配分方法(初期投資が認められないなど)
・情報システム
○外部面での負債
・ブランド/権威(なんでこの会社がこんな新しい事業をするのか理解されない。
価格勝負のレストランが、高級なディナーを提供するなど)
・顧客側の受け入れ態勢(今それを受け入れる予算がないなど)
・投資家からの抵抗(短期的なリターンを損なうのではないかという抵抗)
・流通チャネル/提携関係
出版社:日本経済新聞社
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■なぜ読もうと思ったのか?:
「ザ・プロフィット」の著者、スライウォツキーの最新刊。
前著はさまざまなビジネスモデルの紹介でしたが、
今回は従来型のビジネスモデルに限界がきている企業を対象として、
新たな成長の種を見つける方法を紹介しています。
そのコンセプトを、「ディマンド・イノベーション」と言います。
従来の単なる製品機能を売るビジネスから、
製品機能を超えた顧客のニーズを見出し、自らの役割を拡張することです。
ポイントは以下の2点です。
○顧客を観察する視点を、製品から経済性へ転換する
○需要を受容する側から、需要創造者へと移行する
ぼくの仕事においても、これまで50%以上パワーを注いでいた業務を効率化して、
自分たちが入らなくても、勝手に進む仕組みを確立しようとしています。
空いた時間を作って、新たにどんな価値を生み出すか。
そのヒントとして、活用できそうだったので、読みました。
■どのような点が役に立ちそうか?:
(1)同じ顧客に、新しい価値を提供する
成長するための1つの方法は、従来のお客さんに対して、
新しい価値を提供することです。
売上というのは、単価×顧客数で表すことができますが、
こちらは新しい価値を提供して顧客単価を上げることで、成長することです。
具体的に、どのような価値を提供できるでしょうか?
○製品導入後のフォローサービスを提供する
→製品を販売するだけでなく、購入するための資金を融資したり、
導入支援作業やメンテナンス、トレーニング(活用支援)などを行う。
○顧客が慣例的に管理していたプロセスを代行(自動化など)する
→例えば、購入した製品の在庫を管理して足りなくなったら再発注する。
そういった業務は顧客側がすることになっていましたが、そこを責任を持って
代行します。顧客に取って不慣れな作業であったり、リスクが高い場合は
歓迎されます。
○隣接するプロセスをカバーする
→例えば部品メーカーの場合、製造するだけではなく、
(部品を集めて)組み立てる工程、(何を製造するのかを決める)
設計工程までも自社の対象領域とすることです。
○顧客の顧客の満足度を上げるために支援する
→自社にとっての顧客が満足するかどうかに焦点をあてるだけでなく、
顧客の顧客を満足させるために何かできないか。そこをビジネス化します。
(2)従来の価値を他のターゲットに提供する
もう1つの方法は、従来の価値を他のターゲットに提供することです。
先ほどの単価×顧客数でいうと、顧客数を拡大することで、成長する。
その方法です。
こちらはどのような方法がありますでしょうか?
○同じ価値を別のターゲット(別の業界)に展開する
→例えば、高校生向けに難しい教科書をわかりやすい解説で、楽しく学べる教材を
提供している企業があるとします。その強みである「難しい知識を、
わかりやすく楽しく説明する」価値を、例えば資格試験市場などの
別の業界にも適用するというイメージです。
○競合製品のユーザーに対しても、同じ価値を提供する
→同じ例で言うと、競合の塾に通っている高校生に対しても、蓄積されたつまづきを
理解してもらうための補習塾を提供するということです。
(3)新しい価値を、新しい顧客に提供する
これは、単価、顧客数の両方に影響する成長の方法です。
○自社の製品を製造するための優れたプロセス(ナレッジ)を他社に提供する
→本書の例で言うと、ガス会社にとって、従来は、ガスを利用する個人/法人が
顧客でした。成長するために、新たに「大規模な工場を安全に運営するための
ノウハウ」を提供することにしたのでした。
○保有している情報を生かす
→本書の例では、TSUTAYAが取り上げられていました。大量の顧客情報を
保有してDBマーケティングを実施していましたが、その情報を活用して、
BtoC企業のマーケティング支援事業を開始したそうです。
(4)隠れた資産を活用する
成熟した市場において、新たに成長するための方法には、
上記の3パターンがあることがわかりました。
1つだけ共通点として言えることがあります。
それは、自社の強みを活用していることです。
(1)は自社の強みをコアとして、その周辺業務をカバーする方法でした。
(2)は自社の強みをそのまま他社に提供する方法でした。
(3)はこれまでのビジネスの中に内包されていた強みを、新たに発見し、
活用するという方法でした。
逆に言うと、自社の強みを活用することを考えずに、
トンデモナイ方向での新規事業を開始しても成功はおぼつかないですよ。
そういうことだと思います。
それでは、自社にはどんな強みがあるのでしょうか。
本書の中には、5ジャンル18種類の強みがあると紹介されています。
○従来の無形資産
・知的財産とコンテンツ
・特別なノウハウと中核能力
・ブランド
○顧客関係資産
・顧客への権威づけ(例えば、専門家としての信頼、「一流」という信頼など)
・顧客創造力
・顧客との相互関係
・顧客の抱える経済的な問題に対する深い洞察力
○戦略的不動産
・市場での地位
・業界内のバリューチェーン(ワンストップで提供できる位置にないかなど)
・顧客へのアクセスポイントの保有数
○事業ネットワーク資産
・製品普及数
・第三者との関係(サプライヤー、チャネル、研究機関など)
・ユーザーコミュニティ
・取引機会を早期発見する能力(新しいシーズにどこよりも早く気づけるなど)
○情報資産
・システムとソフトウェア
・技術的なノウハウ
・マーケットウインドウ(顧客やサプライヤー、仲介業者からの声が集まる)
・派生情報
自分の組織には、どんな強みが隠れているでしょうか。検討してみましょう。
(5)隠れた負債を発見する
多くの企業には、上記のような隠れた資産があることがわかりました。
それでは、これを発見すれば即新しいビジネスが生まれるかというと、
そううまくいかない場合があります。
どんな場合でしょうか。
隠れた負債が足を引っ張っている場合です。
つまり、強みが隠れているのとは反対に、隠れている弱みが存在する
ことも十分考えられるのです。
克服しない限り、成功する確率は低いままでしょう。
それでは、どんな弱みが考えられるでしょうか?
○企業文化面での負債
・企業の思考様式
・企業文化と歴史(そんなものはうちがやることじゃないよ、という反発)
・リーダーシップとコミットメント
○構造面での負債
・組織構造
・技術力と能力
・業績評価と業績連動報酬システム
(失敗するリスクのある新ビジネス立ち上げよりも、短期的な業績をあげられる
既存ビジネスに集中する)
・予算と資源の配分方法(初期投資が認められないなど)
・情報システム
○外部面での負債
・ブランド/権威(なんでこの会社がこんな新しい事業をするのか理解されない。
価格勝負のレストランが、高級なディナーを提供するなど)
・顧客側の受け入れ態勢(今それを受け入れる予算がないなど)
・投資家からの抵抗(短期的なリターンを損なうのではないかという抵抗)
・流通チャネル/提携関係