
今日は一日中雪が舞い散る寒い日だった。1歳過ぎの頃、雪道を散歩していると、何も履(ハ)かないで大丈夫なんですか?と、ご婦人が小柴を気遣ってくれた日を想いだした。
フレンドリーというには何処かよそよそしい物腰だった。豆柴よりも幾分大きい小さな柴犬だった。体重は6㎏と小ぶりで、美顔だったように思う。散歩よりも庭でじゃれることが大好きだった。釣り竿の先に皮の手袋をぶら下げて、鼻先にもっていくと必死に喰らいつこうとジャンプした。たぶん、その時間が小柴にとっては一番の愉しい時間帯だったのではないかと想う。
最後はもういいよと嘘噛みして、首を後ろにのけぞらせて息絶えた光景が想い出される。最後の一晩だけは我慢強い犬でもずっと鳴き止まなかった。本当に苦しかったのだろう。擦ってもさすっても鳴きやまないほどつらかったのだろう。夜明け頃に温めた水をごくりと呑んで、何かしら満足げな表情を一瞬見せたようにも思えたのがせめてもの慰めだった。