振り向けば大宮の夜が明ける。 少し変わった角度から眺めるの!

大宮在住。
伸び行く大宮市、
その時々の目に留まったことなどを楽しくユーモアも交えて
書きたいと思います。

醜いよだかの星を賢治が童話に描いた、その2

2019-02-21 08:13:04 | ブログ

いったい僕はなぜこうみんなに、嫌がられるんだろう。

僕は何も悪い事をしていないのに。

ああ、今度は市蔵だなんて、首へ札をかけるなんて

辛い事だなあ。」

 

 

 

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あたりは、もう薄暗くなっていました。

よだか(夜鷹)は、巣から飛び出しました。


雲が意地悪く光って、低く垂れています。

よだかは雲とスレスレに音もなく空を飛び回りました。

 

それからにわかに口を大きく開いて、羽を真っ直ぐに

はり、まるで矢のように空を横切りました。

小さな羽虫が何匹も喉に入ってきました。

 

身体が大地に着くか着かないうちに、またヒラリと

跳ね上がりました。

 

もう雲はねずみ色になり、むこうの山には

山焼けの火が真っ赤です。





 

 よだかが空を思い切って飛ぶときは、空がまるで

まっ二つに切れたように見えます。


一匹のかぶと虫が、よだかの喉に入り、ひどくもがき

ました。

よだかは、直ぐに飲み込みましたが、なんだか背中が

ぞっとしました。

雲はもう真黒く、東の方だけ山焼けの火が赤く映り

怖くなりました。

 

 

よだかは、胸がつかえたように思いながら、

また空へ登りました。

 

 

また一匹のかぶと虫を飲み込みました。

喉をひっかいてバタバタしました。

それを無理に飲み込んだよだかは、急に胸が

ドキッとして、大声をあげて泣きました。

泣きながら空をグルグル回りました。

 

 

 

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ああ、かぶと虫や沢山の羽虫を僕は食べる。

そして、今度は僕が鷹にやられる。

それがこんなにつらいとは。

僕は飢えてこの世からいなくなりたい。

鷹にやっつけられる前に遠くの遠くの空の向こうへ

行ってしまおう。

 

山焼けの火は、だんだん水のように流れて広がり、

雲も赤く燃えているようです。

 

 

 

 

 よだかは、弟のカワセミに会いたくなりました。

目覚めたばかりのカワセミも、遠くの山火事に気付き

ました。

 

 

 

 

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 「にいさん。突然どうしたの?」


「僕は遠くへ行こうと思うんだ。

それでお前に会い来たんだよ」

「ハチスズメもあんなに遠い所へいるし、

僕一人ぼっちになってしまうよ。

兄さん、行かないで、行っちゃだめだよ」

 

「どうしようもない事なのだよ。

何も言わないでくれ。

魚を採る時は、いたずらに取らないで必要な時だけ

してくれよ。

さようならを言うよ。」

 

「にいさん、どうしたの?ちょっと待って下さい。」


「ハチスズメにも伝言をしてくれ。

いつまでいても同じだ。僕はもう決心をしたんだ。

さようならを言うよ。

これが最後だよ。さようなら。」

 


よだかは、思いっきり泣きました。

夏の夜は短くもう暮れかかっていました。

シダの葉は、夜明けの霧を吸い青く冷たく揺れました。



 

 キシキシと高くよだかは、鳴きました。

巣の中をきちんとかたづけ、

綺麗に体中の羽や毛を揃えて巣の中から飛び立ちました。

 

霧が晴れて東から上った眩しいほどのお太陽に

めまいがするほどグラグラしているのをこらえて

、矢のようにお日様めがけて飛んでいきました。




  

お日様お日様、どうぞ私をあなたの所へ連れて行って

下さい。

焼けてもかまいません。

私のような醜い体でも焼ける時には、

小さな美しい光を出すでしょう。

どうか私を連れて行って下さい。」

 

飛んでも飛んでもお日様はどんどん遠くなりました。

 

遠く小さくなったお日様がいいました。

「おまえは、よだかだな。

なるほど、随分つらかろう。

今夜空を飛んで、星に頼んでごらん。

お前は夜の鳥だよ。」

 

 

よだかは、おじぎをしたいと思いましたが、

急に頭がグラグラと失神して野原の草の上に

真っ逆さまに落ちました。

真昼の夢を見ていたようでした。

 

 

よだかの体は、ずっと赤色や黄色の星の間を昇って

行ったり、ずうっと風に吹き飛ばされたり、

鷹に体をつかまれたような気がしました。

 ひとりぼっちのよだかでした。


宮沢賢治 よだかの星(童話)

 

賢治の言葉の世界は賢治の宇宙の世界観からこぼれ出ます。



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