しかし、ある日ついにその我慢が限界に来てしまった。私の通っていた学校ではグループを組んで演習を行ったり、グループで課題を作成して提出したりするようなことが多かったのだが、私だけがガラケーだったので連絡が取れないということが生じた。それは私にスマートフォンを買わせるだけの十分な理由になった。
私は、ついにiPhoneを契約した。確かに生活は便利になった。同じアプリを使って情報の共有ができるようにもなったし、当時はあまり整備されていなかったが、それでもネットでの調べ物もできる。これは正しい買い物だったと自分に言い聞かせた。
iPhoneを大事に長く使うというもっともらしい理由から、iPhoneの純正のケースを購入し、モバイルバッテリーを購入し、有料アプリを購入して、と次々とお金が出て行くことになった。小さな積み重ねだったが、それは結構大きな金額になっていたと思う。
翌年にはiPhoneの新作が出て、それも私を激しく誘惑した。スマートフォンは私の生活に入り込みすぎていた。それなしでは生活できないレベルのものになっていた。
当時の私は意志が弱く、“守りの成功を目指す”という目標をメンターに宣言しておきながら、“少しだけなら良いのではないか”という誘惑に少しずつ負けるようになってきていた。今思い返せばiPhoneを購入したというたった1度のルール違反が私をそうさせたように感じている。
私は、平日の夜にもアルバイトを追加した。バーの接客だったが月に2〜3万円の収入になっていた。ここでも私は大きなルール違反を犯してしまう。
メンターには収入の25%を指導料として渡すという約束をしていた。だから週末の夜勤のバイトで稼げる約10万円から2〜3万円を渡していた。しかし、お金を使いたいという欲求から平日のバーで稼いだ2〜3万円は自分の頭のなかで勝手にルールを決めて、これはメンターに渡さなくて良いお金だと考えた。
3万円稼げば、たったの7,500円追加でメンターに渡すだけなのだが、この時の私はそのお金すら惜しく感じてしまっていた。それが大きな間違いの始まりだった。