現在、関西電力(以下関電)の原子力発電所は全て停止している。
日本の電力会社の中で関電が原子力依存度が最も高かった。
菅前首相の(法手続きを半ば無視した)原発停止指示の後、
定期点検に入った全国各地の原発が地元の反対などで
再稼働ができなくなった。
昨年夏の時点ではまだ関西でも数基の原発が稼働していたため
停電などの危険性はその時点では低かったものの、
今年は原発が一切稼働していない状態で夏を迎えるために
5月19日、(原発を稼働しない前提で)関電側は15%以上の節電を要請すると発表した。
一方で大飯原発再稼働に向けて政府は
橋下市長含む関西広域連合を説得している。
近く結論を出すという。
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以前にも触れたが、私は現在原発反対派である。
ただし、すぐに原発を全廃できるとも考えていない。
去年は原発の大部分が止まったものの、停電も起きずに済んだ。
一方で企業は勤務シフトの変更など苦労して節電していたことも事実である。
日本経済への悪影響を避けるためにも、
電力の代替供給手段の発達に合わせて
原発を段階的に運転停止していくのが現実的だとは思っている。
日本の原発の技術力を信用していないわけではない。
私の懸念する原発の諸問題は全て運営する人間の側に関することである。
福島第一も地震そのもので爆発したわけではない。
予備電源が全て海側にあったため、大津波により機能しなくなったのが本質である。
これは、利益追求の余り安全対策を怠ってきた東電側の姿勢に起因する。
関電の運営する日本海側の原発も、調べてみれば直下に活断層があったりして
地震の心配がないとは言えない。
しかし今大飯原発を再稼働させたとしても、地震で福島第一のような
危機的状況に陥る危険は低い。
技術面だけみれば、それは心配のしすぎと思う。
節電・停電によって関西経済圏が痛むくらいなら、原発再稼働というのも
視野に入れてしかるべきと思う。
問題は、その再稼働決定に至るまでの手続き論である。
原発再稼働はするにしても、あくまで電力不足分の供給のためであって、
それは電力会社の利権のためであってはならない。
電力会社各社が原発を推進してきたのは、
その電力生産コスト(あくまで後処理費用等は無視しているが)の安さと
政府補助金が理由である。
従って、東電もそうだが、関電も
「原発を再開させないと電力不足に陥る」という風に世論誘導しようとする。
関電の出す数字がいまいち信用できないのも、情報を隠蔽または操作することで
「原発もやむなし」と思わせているのではないかという疑念が払拭できないからだ。
こうしたところに垣間見える電力会社の腐敗体質が一番安全を脅かしているのは間違いない。
橋下市長が「15%節電もやむなし」と発言したことに対して、
「原発に反対するのに節電を受け入れるなぞ無責任だ」と批判も湧き起っている。
しかしこれは本来、彼や広域連合が責任をとる話ではないのではないか。
問題の根幹は、福島第一原発の爆発事故を経てもなお、
その原因となる利権癒着体質から脱却できていない政府、電力各社の姿勢にある。
実際、電力会社が一致協力して福島原発事故の事後処理、
および情報の透明化を徹底して進めれば、
「事故が起こっても政府や電力会社がきちんと対応してくれる」
と国民は同意して結果的にはもっと早い段階で原発再稼働がスムーズにできただろう。
関電から正確な情報を引き出す方法はある。
原子力発電に対して、「逆」補助金を設けるのだ。
すなわち、原子力で発電した分には他の発電方法とコストが
同じあるいはそれ以上になるように関電に課税をするのである。
原子力発電の旨味がなくなれば、関電も情報操作してまで
必要以上に原発再稼働をしようとは思わなくなるだろう。
また、火力発電や他の代替発電方法の開発にももっと力を入れるだろう。
繰り返すが、福島第一の原発事故は人災である。
従って、「大飯原発が(技術的に)安全である」ことは
原発再稼働の必要条件であっても十分条件にはならない。
運営側の体制が変わらなければ問題の根本は解決しない。