◇このお話は思いっきりパラレルです。そういうのが苦手な方はご注意を!
――かつて世界には 精霊王より遣わされし時の魔剣が在った
古の勇者がその剣を用い 魔王に引き裂かれた世界をひとつにした伝説は伝承の詩となったが
今や…その剣の行方は…杏として知れぬまま…
いつもはただ冷たいだけの風に、ふわりと春の香が漂った気がして。
クレスはふと、足をとめた。
(君に、預けるよ)
総司令官が自分を呼び出した、ということは。
またなにかとんでもない厄介事を押し付けられるものと、覚悟はしていたが。
(わかってると思うけど、これは僕たちの陣営の切り札だ。もしも奪われたら、その場で)
今回のこれは、その中でも最悪だ。
しかし哀しいかな軍人である自分は、上官の命令には絶対に逆らうことなど出来ない。
(――チェックメイト、だからね)
大体、自分などよりもこれを持つにふさわしい人物はいるだろうに。
口で反抗出来ないならせめて、と恨めしい目を向ければ。
しょうがないよ、本人にやる気がないんじゃね、と相手は肩を竦めた。
確かに。
ちょっと目を離すとふらふらとどこかに行ってしまう我が隊長殿に、この剣を託すのはちょっと…いやかなり不安ではあるが。
それでも、自分よりは。ずっと。
(護るのが、君の仕事だよ。クレス=アルベイン…古の勇者の血を引く、一族のね)
すべてを失った、あの日から。
肌身離さずつけているペンダントを、ぎゅっと握り締める。
この剣を手にすれば。ずしりとこの肩に重くのしかかるのは、期待と、それから。
それでも、もう迷いなんてなかった。
大樹を巡る、ながきに渡る戦乱の。
最初の引き金を引いたのが、誰なのか。
それを突き止めても、意味などない。
大樹を解放すれば、それは異世界へと飛び立ち、この世界は滅ぶ。
だから、自分は護るだけだ。
故郷の村を滅ぼした、あの男の。
希、など。誰が叶えさせてやるものか。
そのためなら、僕は。
「…隊長?」
「ん…、もう、ちょっと…」
詰め所に備え付けられた、小さな机に突っ伏して。
束の間の眠りを貪る、その人の。
指先に触れるのは、かつての幸せ、そして。
この人が自ら手放した――。
「泣いてるの…?」
僕も、そしてあなたも。
あともう少しが踏み出せないまま。
また。大切なものをうしなってしまうのかな。
そう、思ったら。
その身に纏ったしろ、が。
なんだかとても、かなしく見えた。
◇というわけで一転してロイドSIDE。ほとんどクレスの一人称ですが、そこはご愛嬌(ええー)冒頭はサンホラの争いの系譜から。大樹解放軍と大樹保護軍、互いの総司令官はダオスとミトスということで。ロイドとクレスが着てるのは、マンキンのリゼルグが着てたX-LAWSの制服。半ズボンかどうかは皆様のご想像にお任せします。いや、海軍服も萌えるんですけどね!
お題は「戦場での執着で100題(Type : 5)」を追憶の苑/牧石華月さま からお借りしました。
――かつて世界には 精霊王より遣わされし時の魔剣が在った
古の勇者がその剣を用い 魔王に引き裂かれた世界をひとつにした伝説は伝承の詩となったが
今や…その剣の行方は…杏として知れぬまま…
いつもはただ冷たいだけの風に、ふわりと春の香が漂った気がして。
クレスはふと、足をとめた。
(君に、預けるよ)
総司令官が自分を呼び出した、ということは。
またなにかとんでもない厄介事を押し付けられるものと、覚悟はしていたが。
(わかってると思うけど、これは僕たちの陣営の切り札だ。もしも奪われたら、その場で)
今回のこれは、その中でも最悪だ。
しかし哀しいかな軍人である自分は、上官の命令には絶対に逆らうことなど出来ない。
(――チェックメイト、だからね)
大体、自分などよりもこれを持つにふさわしい人物はいるだろうに。
口で反抗出来ないならせめて、と恨めしい目を向ければ。
しょうがないよ、本人にやる気がないんじゃね、と相手は肩を竦めた。
確かに。
ちょっと目を離すとふらふらとどこかに行ってしまう我が隊長殿に、この剣を託すのはちょっと…いやかなり不安ではあるが。
それでも、自分よりは。ずっと。
(護るのが、君の仕事だよ。クレス=アルベイン…古の勇者の血を引く、一族のね)
すべてを失った、あの日から。
肌身離さずつけているペンダントを、ぎゅっと握り締める。
この剣を手にすれば。ずしりとこの肩に重くのしかかるのは、期待と、それから。
それでも、もう迷いなんてなかった。
大樹を巡る、ながきに渡る戦乱の。
最初の引き金を引いたのが、誰なのか。
それを突き止めても、意味などない。
大樹を解放すれば、それは異世界へと飛び立ち、この世界は滅ぶ。
だから、自分は護るだけだ。
故郷の村を滅ぼした、あの男の。
希、など。誰が叶えさせてやるものか。
そのためなら、僕は。
「…隊長?」
「ん…、もう、ちょっと…」
詰め所に備え付けられた、小さな机に突っ伏して。
束の間の眠りを貪る、その人の。
指先に触れるのは、かつての幸せ、そして。
この人が自ら手放した――。
「泣いてるの…?」
僕も、そしてあなたも。
あともう少しが踏み出せないまま。
また。大切なものをうしなってしまうのかな。
そう、思ったら。
その身に纏ったしろ、が。
なんだかとても、かなしく見えた。
◇というわけで一転してロイドSIDE。ほとんどクレスの一人称ですが、そこはご愛嬌(ええー)冒頭はサンホラの争いの系譜から。大樹解放軍と大樹保護軍、互いの総司令官はダオスとミトスということで。ロイドとクレスが着てるのは、マンキンのリゼルグが着てたX-LAWSの制服。半ズボンかどうかは皆様のご想像にお任せします。いや、海軍服も萌えるんですけどね!
お題は「戦場での執着で100題(Type : 5)」を追憶の苑/牧石華月さま からお借りしました。