こらっワールドカップ

Coração da copa do mundo - ワールドカップ期間限定感想文

トルシエ監督の賭けは不発に。そして、ニッポンのワールドカップは終わった。日本 0-1 トルコ

2002-06-18 23:20:02 | 2002日韓大会
2002年6月、宮城での日本代表対トルコ戦の感想文の再録です。本ブログでの投稿日は当時の試合日ということにしています。(2010.5.31)






急遽、スーパーサブとしてチケットを保有する“特別”取材班を編成。ベスト16へと進んだ日本とトルコの試合を宮城スタジアムで観戦することとなった。H組を1位で通過した日本はさらに新しい歴史を書き加えるために、雨に濡れるピッチに立つ。しかし、新布陣で臨んだトルシエ監督の賭けは不発。日本代表の挑戦は終わった。しかし、韓国はイタリアを破ってベスト8へ。韓国には何かが起こり、日本には起こらなかった。



日本代表、念願の決勝トーナメント初戦である。こう書くのも分不相応かと思うが、ベスト4が狙えるチャンスである。日本とトルコのどちらかが準々決勝に進み、この両者に、すでに勝ちを決めているセネガルを加えた3者の中からベスト4の1チームが選ばれることになる。しかも日本はホームである。こんなチャンスはざらに転がっているものではない。これをつかまねば、一生後悔するに違いない。これが試合前の正直な思いであった。

話は前後するが、日本代表と同様に、我々サポーターにとってもワールドカップのベスト16は初体験である。というのも“特別”取材班が入手できていたチケットは宮城開催分で、(日本が進む可能性のあった)神戸開催分は手に入らなかった。だからこそ、是が非でも代表にはH組を1位通過してもらいたかった。勝ち点の計算をしながらのハラハラどきどき、それも含めてグループリーグ方式の面白さが初めて体感できた大会でもある。

この日は東京から新幹線の日帰り。列車という列車がサポーター列車となる。試合前の仙台駅では思いがけず、あのミッシェル・プラティニ氏が目の前に立っている。思わず声をかけて握手していただく。プラティニ氏と会えるとは幸先がよい(帰りにはジーコにも会った…やはりワールドカップである)。

冷たい雨のなか宮城スタジアムにつめかけた幸運な観客の思いは、これまでの日本代表の健闘をたたえながら純粋に勝利を祈る、まさに素直なものであった。そして、その勝利を最も欲していたのが、フィリップ・トルシエ監督その人である。もし敗戦すれば、彼は3年半心血注いだチームを離れることになる。代表チームアップが始まった。緑のビブスをつけた選手が先発となる。アレックス(三都主)、(小野)伸二もいる。イナ(稲本)と戸田がいて、明神がいるから、アレックスはFWかもしれない。柳、鈴木のコンビがいない。結局トルシエが送り出したのは、西澤、アレックスの2トップ。このスタメンにまずはトルシエの強い意志、チャレンジを感じた。その他の先発メンバーは、GK楢崎、DF 松田、宮本、中田浩二、戸田、稲本のボランチに明神、小野が両サイド、そして中田英寿である。


いよいよキックオフ。かなり強い雨が降っている。スタンドの大部分はアーチ型の屋根に守られているが、入場までの行列でほとんどの観客がずぶ濡れとなった。さらに代表を目の前にした喜びがあるのか、スタンドにはグループリーグの時の緊迫感があまり感じられない。大丈夫だろうか。そんな雰囲気のなか、DF中田(浩)の弱いパスがカットされる。幸いそのボールはトルコにつながれず、コーナーキックに。「流れを失う」典型的なシーンである。そのコーナーキックから失点してしまった。

この試合のポイントは、トルシエの采配と日本選手の頑張りをどう評価するかにあるだろう。「ウイニングチーム・ネバー・チェンジ(勝っているチームは変えてはいけない)」の格言にあるように、グループリーグを闘ってきた先発をいじってきたのは普通の采配ではない。「賭けに出た」と言える(トルシエ監督とも4年の付き合いであり、あえて「ご乱心」とは言わないでおこう)。では、トルシエ監督の賭けとは何だったのだろうか。ひょっとしたら、この日のスタメンは「最もポテンシャルの高い11人」なのかもしれない。最強イレブンで、R16を突破できれば、そのまま・・・?とトルシエは考えたのか?監督はリスクを犯してまで、チームの再構築という挑戦を選んだはずである。結果は、アレックスの惜しいフリーキックのみの不発。FWのポジションや守備感覚が違うためにチームバランスが崩壊してしまい(失点につながる混乱も、これが遠因と言える)、結局この布陣は45分で修正を余儀なくされた。このフォーメーションの準備はしていたのか。起用選手のコンディションの見極めは正しかったのか。最後の最後まで、挑戦的でかつ疑問符だらけのトルシエ流であったが、その評価は多くの「評論家」の皆さんに譲ろう。

“特別”取材班としては、まず個々の選手はよく頑張ったと思う。しかしスタンドから客観的に見て、トルコの選手のスピードと、中盤でボールに寄せる判断の速さで勝つことができなかった。よくやったとも思うが、もどかしさが残った。残念だった。そんな思いを抱きながら帰宅すると、韓国が驚異的な試合をしてイタリアに勝っていた。このふたつのできごとを前に、頭が混乱している。日本の活躍は合理的にはその実力を出し切ったと言えるだろうが、サッカーにはそれを超えた何かがある(韓国はその何かを我々に感じさせてくれる試合をした)。サッカーには何が起こるかわからない。ワールドカップがひとつわかったと思ったら、また新たな何かを突きつけられた6月18日であった。


試合も後半、トルコの執拗な守りに苦しみ、くたくたになりながらも、中田英寿は常に前を向いて戦いを挑み続けた。感動的だった。この試合でさらにさらにヒデが好きになった。宮城の観衆は、負けた日本にも、勝ったトルコにも惜しみない拍手をおくっていた(それにしても無念さは残る)。ニッポンのワールドカップが終わったのである。



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