病院は好きではない。
病院の設計なら大歓迎だが、患者として病院へ行くことは大嫌いなのだ。
「病院へ行くと病人になる」という仮説は自分の中では確信めいたものがある。
それに毎年1回は風邪をひくのだ。
自分にとっては年中行事のようなものだ。
例年なら放置しておく。せいぜいが市販の薬を服用する程度だ。
それで何ら問題はなかった。
しかし、風邪の症状=新型インフルエンザという構図が横行している昨今である。
急にマスクを着用するようになると、周りから疎ましい視線で遠巻きに見られてしまう。
打合せするのもままならない。
そんなわけで久方ぶりに病院へ行く羽目になってしまった。
目的はただ1つ インフルエンザではないという証拠を得ること。
近くの総合病院を訪れる。
この「総合病院」なるものを選んだのがまずかったのかもしれない。
受付を済ませて問診表に記入し提出する。
ここまでの所要時間はわずか5分程度。
間違いはここから始まった。
なんとこれから待つこと1時間半。
すでにこちらのフラストレーションはピークに達している。
どう文句をつけてくれようか。ただではおかんぞ。
そしてようやく名前が呼ばれた。看護婦が近づいてくる。
ここぞとばかりにクレームをつけようとしたが、敵も然る者、先手を取られてしまった。
「検査用に鼻水を採取しますから上を向いて下さい。」
事務的な台詞のあと間髪を入れず、細い綿棒のようなもので鼻の奥をグリグリとやられてしまった。
貴様、いきなり何をする! 痛いではないか! そもそもオレの話を聞かないか!
こちらが怯んだ隙にまたしても事務的な台詞が発せられた。
「検査終わるまでしばらくお待ち下さい。」
何も出来ないうちに第1Rが終了してしまった。わずか十数秒である。
そしてまたもや待つこと1時間半。
イイカゲンニシロヨ、イッタイナニヲシテイルノダ、ナンデコンナニジカンガカカルノダ?
もはや怒りで頭の中は真っ白である。
そしてついに診察室に突入することになった。
しかしまたしても、またしても、敵に先手を取られてしまった。
こちらが席に着く前に医師が発した言葉は
「検査は陰性です」
不覚にも一瞬ほっとしてしまった。油断をしてしまったのだ。
その隙をつくように、医師は続けて話し始めた
「でも、あなたの問診表の症状からするとおそらくインフルエンザですので、お薬を出しますがよろしいですか?」
・・・・・???
「は? どういう意味ですか?」
「新型インフルエンザかもしれませんのでお薬を出します。よろしいですか?」
「だからどうしてですか?」
「新型を正確に検出できる検査キッドはないんです。検査で陰性でも新型の可能性があるので、要するに私がインフルエンザと診断すればそうなるのです。」
こう説明しただけで医師は事務的に聴診器を当て始めた。そして
「廊下でお待ち下さい。」
これで第2Rも終了した。わずか1分足らずである。
惨敗であった。
こんな業務連絡のような診断を受けるために3時間も待たされたのか?
腹の虫がおさまらないため、薬を受け取るときに薬剤師に事の顛末を説明して文句を言った。
さらに文句をたたみかけようとしたら、その薬剤師は申し訳なさそうに説明し始めた。
「実は新型の検査キッドはまだ確立されてなくて、旧来の検査キッドで対応させて頂いております。これだと3割程度の患者さんしか陽性にならないため、念のためにお薬を出させて頂くようにしているのです。申し訳ありませんがよろしいでしょうか?」
どうやら他の患者からも同じようなクレームをつけられているらしい。
こちらも少し冷静になる。
それならそう説明してくれれば納得するのだ。自分はまっとうな大人なのだから。
「よくわかりました。ありがとうございました。」
最後にそう言って別れた。薬剤師の態度は最後まで紳士的だった。
玄関を出て振り返る。
○○病院、二度と来ないぞ。
また怒りがこみ上げてくる。
無駄な時間を過ごしてしまった。
しかし、同じ内容でも医師と薬剤師の説明では恐ろしく印象が違う。
ふと自分に当てはめてみる。
施主に対して医師のように説明してはいないか?
いや、そんなはずはない。自分は薬剤師のはずだ。自分はまっとうな大人なのだから。
だが、改めて気をつけなければならない。
他山の石である。
そう考えることでこの忌々しい時間に意義を見出そうと努める自分はやはりまっとうな大人であった。
あれから3日。結局、薬は1回しか飲んでいない。
自分も家族も健康である。やはりインフルエンザではなかったのだ。
残ったのは医師への怒りとタミフルと薬剤師への好感のみ。
いや、インフルエンザに学んだと言うべきか。
病院の設計なら大歓迎だが、患者として病院へ行くことは大嫌いなのだ。
「病院へ行くと病人になる」という仮説は自分の中では確信めいたものがある。
それに毎年1回は風邪をひくのだ。
自分にとっては年中行事のようなものだ。
例年なら放置しておく。せいぜいが市販の薬を服用する程度だ。
それで何ら問題はなかった。
しかし、風邪の症状=新型インフルエンザという構図が横行している昨今である。
急にマスクを着用するようになると、周りから疎ましい視線で遠巻きに見られてしまう。
打合せするのもままならない。
そんなわけで久方ぶりに病院へ行く羽目になってしまった。
目的はただ1つ インフルエンザではないという証拠を得ること。
近くの総合病院を訪れる。
この「総合病院」なるものを選んだのがまずかったのかもしれない。
受付を済ませて問診表に記入し提出する。
ここまでの所要時間はわずか5分程度。
間違いはここから始まった。
なんとこれから待つこと1時間半。
すでにこちらのフラストレーションはピークに達している。
どう文句をつけてくれようか。ただではおかんぞ。
そしてようやく名前が呼ばれた。看護婦が近づいてくる。
ここぞとばかりにクレームをつけようとしたが、敵も然る者、先手を取られてしまった。
「検査用に鼻水を採取しますから上を向いて下さい。」
事務的な台詞のあと間髪を入れず、細い綿棒のようなもので鼻の奥をグリグリとやられてしまった。
貴様、いきなり何をする! 痛いではないか! そもそもオレの話を聞かないか!
こちらが怯んだ隙にまたしても事務的な台詞が発せられた。
「検査終わるまでしばらくお待ち下さい。」
何も出来ないうちに第1Rが終了してしまった。わずか十数秒である。
そしてまたもや待つこと1時間半。
イイカゲンニシロヨ、イッタイナニヲシテイルノダ、ナンデコンナニジカンガカカルノダ?
もはや怒りで頭の中は真っ白である。
そしてついに診察室に突入することになった。
しかしまたしても、またしても、敵に先手を取られてしまった。
こちらが席に着く前に医師が発した言葉は
「検査は陰性です」
不覚にも一瞬ほっとしてしまった。油断をしてしまったのだ。
その隙をつくように、医師は続けて話し始めた
「でも、あなたの問診表の症状からするとおそらくインフルエンザですので、お薬を出しますがよろしいですか?」
・・・・・???
「は? どういう意味ですか?」
「新型インフルエンザかもしれませんのでお薬を出します。よろしいですか?」
「だからどうしてですか?」
「新型を正確に検出できる検査キッドはないんです。検査で陰性でも新型の可能性があるので、要するに私がインフルエンザと診断すればそうなるのです。」
こう説明しただけで医師は事務的に聴診器を当て始めた。そして
「廊下でお待ち下さい。」
これで第2Rも終了した。わずか1分足らずである。
惨敗であった。
こんな業務連絡のような診断を受けるために3時間も待たされたのか?
腹の虫がおさまらないため、薬を受け取るときに薬剤師に事の顛末を説明して文句を言った。
さらに文句をたたみかけようとしたら、その薬剤師は申し訳なさそうに説明し始めた。
「実は新型の検査キッドはまだ確立されてなくて、旧来の検査キッドで対応させて頂いております。これだと3割程度の患者さんしか陽性にならないため、念のためにお薬を出させて頂くようにしているのです。申し訳ありませんがよろしいでしょうか?」
どうやら他の患者からも同じようなクレームをつけられているらしい。
こちらも少し冷静になる。
それならそう説明してくれれば納得するのだ。自分はまっとうな大人なのだから。
「よくわかりました。ありがとうございました。」
最後にそう言って別れた。薬剤師の態度は最後まで紳士的だった。
玄関を出て振り返る。
○○病院、二度と来ないぞ。
また怒りがこみ上げてくる。
無駄な時間を過ごしてしまった。
しかし、同じ内容でも医師と薬剤師の説明では恐ろしく印象が違う。
ふと自分に当てはめてみる。
施主に対して医師のように説明してはいないか?
いや、そんなはずはない。自分は薬剤師のはずだ。自分はまっとうな大人なのだから。
だが、改めて気をつけなければならない。
他山の石である。
そう考えることでこの忌々しい時間に意義を見出そうと努める自分はやはりまっとうな大人であった。
あれから3日。結局、薬は1回しか飲んでいない。
自分も家族も健康である。やはりインフルエンザではなかったのだ。
残ったのは医師への怒りとタミフルと薬剤師への好感のみ。
いや、インフルエンザに学んだと言うべきか。