自転車の帰り道がとてもすずしくなった。
もぅ少ししたら、ウインドブレーカーがいるようになるのだろうが、
今は最高だ。
山道にさしかかると、闇の中の虫の声がにぎやかだ。
6月は蛙の声一色で、ゲロゲロと単調な背景だったが、
秋の虫は多彩である。コオロギのリーリーリーだって何種類もある。
カネタタキのチン、チン、チンも潔い。
一番好きなのは松虫だ。チンチロリン、チンチロリンとさわやかで、
わざとらしくもなく、ひねりも効いている。
車のナンバープレートに置き換えればまさに6・6・3・6、美しい。
そのなかに鈴虫のリーン、リーンが時折混じっている。
これはもう至上のハーモニーだな。うーん、幸せだ。
と、その時、背後にガサガサッと不穏な物音、ふーっと声まで聞こえてきた。
お前かぁっ。不意をつかれた動揺が実に不愉快だ。
思わず鳥肌を立ててしまった自分が残念だ。
卑怯者めがっ。
人がうっとりと虫の世界に入り込んでいるその隙に仕掛けてくるとはゴルゴサァティン、不埒千万、
このぉぅと、大きく振り返った途端に、ぐらぐらっと、おおっとっと、
傾いた車輪でとっさに足をくり出すが間に合わず、自転車は転んだ。
しかし、見事に自分はすっくと立っていたのだ。
よしっ。まだいける。猪の闇をしっかりと見据える。
あとずさりしながら、自転車を立て直す。敵に後ろは見せられない。
そして一気に漕ぎ始めて気がついた。上り坂だったのだ。ダ・カ・ラ、転ばなかった。
これからも不意打ちはある。下りなら振り返るな。
あいつがついてこれるはずはないのだから。
もぅ少ししたら、ウインドブレーカーがいるようになるのだろうが、
今は最高だ。
山道にさしかかると、闇の中の虫の声がにぎやかだ。
6月は蛙の声一色で、ゲロゲロと単調な背景だったが、
秋の虫は多彩である。コオロギのリーリーリーだって何種類もある。
カネタタキのチン、チン、チンも潔い。
一番好きなのは松虫だ。チンチロリン、チンチロリンとさわやかで、
わざとらしくもなく、ひねりも効いている。
車のナンバープレートに置き換えればまさに6・6・3・6、美しい。
そのなかに鈴虫のリーン、リーンが時折混じっている。
これはもう至上のハーモニーだな。うーん、幸せだ。
と、その時、背後にガサガサッと不穏な物音、ふーっと声まで聞こえてきた。
お前かぁっ。不意をつかれた動揺が実に不愉快だ。
思わず鳥肌を立ててしまった自分が残念だ。
卑怯者めがっ。
人がうっとりと虫の世界に入り込んでいるその隙に仕掛けてくるとはゴルゴサァティン、不埒千万、
このぉぅと、大きく振り返った途端に、ぐらぐらっと、おおっとっと、
傾いた車輪でとっさに足をくり出すが間に合わず、自転車は転んだ。
しかし、見事に自分はすっくと立っていたのだ。
よしっ。まだいける。猪の闇をしっかりと見据える。
あとずさりしながら、自転車を立て直す。敵に後ろは見せられない。
そして一気に漕ぎ始めて気がついた。上り坂だったのだ。ダ・カ・ラ、転ばなかった。
これからも不意打ちはある。下りなら振り返るな。
あいつがついてこれるはずはないのだから。