各種の培養土に各種の種をまく。
ペルーでのやり方があるらしく、こちらの考えがなかなか伝わらない。
結局、日本方式とペルー方式を並列でやることになった。
12時になると、サッと皆、いなくなる。
真田さんの車で、センターの外へ食事に行く。
銀行の前に大勢の人が並んでいる。
「インフレが激しいので、その日に使うお金は、その日に下ろすのですよ。」
「自分で持っていたら、あっという間に紙くずになってしまう。」
料理はおいしい。
トマト味で、ジャガイモやタマネギ、チキンなどを煮込んである。
豆とお米も定番だ。
センターの職員も合流し、おしゃべりをしながらの長い食事になる。
時にはビールを飲む。
“楽しんでこその人生”なのだろう。
夜、ウメダさんにペルーの日系人の話を聞く。
「お父さんは80年前、熊本からペルーに移民してきました。」
「初めは、プランテーションでの労働で大変苦労したそうです。」
「その後、リマに出て、衣類の販売をして何とか暮らせるようになったので、お母さんと結婚しました。」
「ですが、戦争が始まり、“在留邦人資産凍結令”がでて、また無一文ですわ。」
「戦争が終わって、家族でここに移ってきて、細々と花屋を始めました。」
「私は教育を受けられなかったので、独学で栽培を勉強し、一本立ちできるようになりました。」
「しかし、この国の政治がこんな状態なので、いつまた裸一貫になるかわかりませんよ。」
といって、愉快そうに笑った。
ペルーの日系人は約8万人だが、各分野に進出しており、実業家や官僚、医者や大学教授にもなっている。
ウメダさんの息子も、リマの大学で学んでいる。
「3世になると完全にペルー人ですね。日本語もほとんど話せません。」
参考図:「遙かな道」、平野鏡子、芙蓉社、1992
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