ローマとカルタゴ（６）

原本はイギリス人、Shippen Edwardにより書かれた「Naval battles of the world: from Salamis to Japan Sea」（1905年刊）で、サラミスの戦いから日本海海戦までの歴史的な海戦を紹介している。　日本は周囲を海に囲まれてはいるが、とても海洋国家とはいえない。日本人がはるかなる海に眼を向けたのは、室町や明治のほんの一時期にすぎない。世界では海の支配をめぐり、いくたびかの戦いが繰り広げられた。それを垣間見ることにより、歴史の舞台では忘れられがちな部分にスポットを当ててみよう。

ROMANS AND CARTHAGINIANS (6)
　　　　　Before a Roman fleet went to sea it was formally reviewed, like the land army. Prayers were offered to the gods, and victims sacrificed. The auspices were consulted, and if any unlucky omen occurred ( such as a person sneezing on the left of the Augur, or swallows alighting on the ships ), the voyage was suspended.

Fleets about to engage were arranged in a manner similar to armies on land, with centre, right and left wings, and reserve. Sometimes they were arranged in the form of a wedge, or forceps, but most frequently in a half moon. The admiral sailed round the fleet, in a light galley, and exhorted the men, while invocations and sacrifices were again offered. They almost always fought in calm or mild weather, and with furled sails. The red flag was the signal to engage, which they did with trumpets sounding and the crews shouting. The combatants endeavored to disable the enemy by striking off the banks of oars on one side, or by striking the opposing hulls with the beak.

ローマとカルタゴ（６）
　　　　　　ローマ艦隊が海に出る前、陸上部隊と同じように公式に閲兵式が行われた。　　祈願が神々に奉じられ、生贄が捧げられた。　　そして、吉兆を占った。　　もし良くない前兆が起こったら（神官の左でくしゃみをする人がいたり、船にツバメが舞い降りたり）、航海は中止された。

　　　　　戦闘態勢の艦隊は陸上の軍隊と同様の方法で、中央、右翼、左翼、予備と配置された。　　艦隊は時として楔状か鉗子（ピンセット）状配置だったが、頻繁には半月状に配置された。　　祈願と生贄が再び捧げられている間に、提督は軽量のガレー船で艦隊の周りを航走し、部下を励ました。　　艦隊は帆を巻き上げ、常に静かな穏やかな天候のもとで戦った。　　赤旗は戦闘開始の合図だった。　　その時、彼らはトランペットを鳴り響かせ、乗組員は雄叫びをあげた。　　軍船は敵船片舷のオール列を切り取るか、衝角で敵の船体を打ち破るかして、敵を打ち負かすよう努めた。
　　　　　
（ひとこと）　　　　　　
　　　　　当時、地中海世界は変わり目にあった。　　それまではギリシャ都市国家群とペルシャ王国、エジプト王国の世界だったが、主役はギリシャ都市国家群からマケドニアに、ペルシャからセレウコス朝シリアになった。　　エジプト王国にも、かっての勢いはなく、カルタゴは新興ローマの挑戦を受けていた。　　現在のフランス付近にはガリア人の諸部族が、その北方にはゲルマン人の諸部族が支配していた。