1.金を探せ!(1)
ジョージ・マクレランは、ニューヨークの新聞社で下働きをしていた。
郵便物や書類を各部署に配る仕事だ。
低賃金のわりには、忙しい。
職員から名前で呼ばれることはない。
“ヘイ!”か“ボーイ”だ。
19世紀半ば、アメリカ合衆国は大膨張を始める。
南のメキシコと戦争をはじめ、ニューメキシコやカリフォルニアの
広大な土地を獲得しつつあった。
ある日、ジョージはアメリカ軍の勝利を伝える新聞の片隅に、
気になる記事を見つけた。
“シェラ・ネバダ山脈のふもとで、砂金見つかる。”
「これだ!」
ジョージは川底に光る金塊を想像し、小躍りした。
下宿仲間で腕っぷしの強いボブに誘いをかける。
「ここにいては、一生うだつが上がらない。」
「冒険だが、一攫千金を狙おう!」
「まだ、新聞に載ったばかりで、砂金取は少ないはずだ。」
翌朝、わずかなコインと食料を背に、二人は4千キロ西のカリフォルニアを目指す。
西に行く幌馬車に乗せてもらう。
手伝いと新聞や本の読み聞かせの対価で、何とか頼み込む。
危ない目にもあった。
途中の街でアルバイトをしながらの旅だったので、カリフォルニアにつくのに
3か月かかった。
記事にのっていたアメリカン川の流域には、すでに無数の人々が砂金取をしていた。
砂金の見つかりそうな、流れの緩やかなところやワンドにはロープが張られ、
占拠されていた。
二人はなけなしのコインをはたいて、テント、ツルハシ、ハンマー、選鉱なべを買う。
参考図:「貴金属」、ジェフリー・ジョン、西武タイム、1985