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第1話(4)

 訓練の日々(4)

 アミルはイスラエル生まれだが、父はポーランドから、母は南フランスからの移民だ。
母は多くを語らなかったが、父はアミルによく“苦労話”をした。

 「他のヨーロッパの国に比べ、ポーランドは我らユダヤ人に寛大だった。」
「緑の平原が広がる美しいところだった。わしらは貧しいながら平和に暮らしていたんだ。」

 「ところが、ヒトラー・ドイツに占領され、地獄が始まった。」
「村々からユダヤ人が狩り出され、どこかに連れて行かれた。」
「わしは森の奥深くに逃れ、6年間、何とか生き延びることができた。」
「たびたびドイツ兵やポーランド自警団のユダヤ人狩りがあり、生きた心地がしなかったよ。」

 父は祖国を持たない無力さを骨身にしみてわかり、戦後まもなくパレスチナに移住した。
1948年、ユダヤ人国家、イスラエルがパレスチナの地に誕生した。
しかし、ここを支配していたイギリスのユダヤ人とアラブ人への二枚舌外交により、最初から矛盾を含んだ独立だった。

 すぐに、従来からそこに住んでいたパレスチナ人により、パレスチナ国の独立が宣言された。
そして、パレスチナを支援するアラブ諸国とイスラエルの間で戦争が始まった。(第1次中東戦争)

 「わしらはアラブ軍に比べたら、軍隊と呼べるような代物じゃなかったよ。」
「服装はバラバラ、装備は軽火器のみ、しかし1900年ぶりに手にした祖国を潰させてはならない、と士気だけは高かった。」

 「アラブ軍は我々に砲撃を浴びせ、戦車や装甲車を先頭に攻めてきた。」
「わしらは村々を巡る接近戦に持ち込み、火炎瓶などを使った肉薄攻撃で敵を撃退したんだ。」

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 そして話の最後に、必ずこう言った。
「アミルよ、絶対に祖国を失ってはならない。」

     
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