ターナー中佐の乗る漁船のソナーが、接近する潜水艦のスクリュー音を捉えた。
「中佐、水中を真っ直ぐこちらに向かってきます。」
「作業中止だ、水中信号弾を打ち込んでくる。」
ゆらゆらと火の玉が海中に消える。
潜水艦がゆっくり停止する。
隊員たちはウエットスーツに身を固め、エアタンクを背負い、水中銃、ナイフで武装し、水中スクーターをチェックする。
総員15名、いずれも2年間の厳しい訓練を乗り越えてきた。
「イ大尉、出動!」
圧力調整室に海水が勢いよく入ってくる。
圧力の調整をした後、出入り用ハッチが開かれ、水中に飛び出す。
青黒い世界だ。
ぼんやりと真っ黒な巨大な船体が横たわっている。
水中スクーターの尾灯を頼りに、フォーメーションを組む。
前方、側面は水中銃を持った隊員がつく。
ブリッヂ後方のデッキ付近にぼんやりした灯りが見える。
手で合図し、ゆっくりと近づく。
ボブとケリーが同時に異常に気がついた。
ブリッヂ上方から魚群のようなものが、覆いかぶさるように近づいてくる。
手すりをつかみ、身構えたとき、パッとライトの集中砲火を浴びた。
その強い光と身体に何本もの焼け火箸を突き刺されたような痛みを感じたのが、ボブの最後の記憶だった。
隊員らが2人の身体を蹴飛ばすと、ゆらゆらと船外に落ちていった。
イ大尉はすばやく、隊員らを警戒グループと船内捜索グループ、インゴット運搬グループにわけた。
参考図:「APS水中銃」、Wikipedia
