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第5話(3)

謎の潜水艦(3)

 「これより台湾海峡の捜索を行う。」
「艦長、海峡は水深が浅く、敵に発見された場合、逃げ場がありません。」
「それに、台湾海峡は今回の演習行動範囲に入っていません。」
「実は航海長、われわれには極秘の作戦任務が与えられているのだ。」
キム航海長の顔に緊張が走る。

 およその位置がわかっているとはいえ、潜水艦で沈没船を見つけるのは至難の技だ。
ソナーで海底を探って、疑わしい場所にダイバーを潜らせる以外に無い。
数日間、夜間は浮上、昼間は水中での捜索が続けられたが、空振りに終わった。

 “R103” 号の前部魚雷発射管室は特殊部隊隊員用のスペースになっており、そこから海中への出入ができた。
何回もの水中捜索活動で、隊員たちの疲労がたまっている。
「日本の強盗どもに先を越されては、“偉大なる首領様”に申し訳が立たぬ。」
「身をなげうって祖国のために任務を遂行しよう。」

 イ大尉の両親は日本からの帰還民だったため、出身成分は動揺階層とされ、何かと差別された。
努力と忍耐で海軍士官学校に入り、今の地位を得たのだ。
“絶対に任務を成功させ、次のステップに進むのだ。”

 ある日の午後、“R103”号のパッシブソナーが人工音を捉えた。
1マイル以内で水中作業をしている音だ。
イ大尉らに出動待機命令が出る。

 ターナー中佐らは白金のインゴットを漁船まで持ってくる方法を考えた。
小型キャスターで船室から船外に運ぶ。漁船から魚網をたらし、ウインチで引き上げる、という寸方だ。
キャスターにインゴットを積み込み、ロープで引っ張る。
仕事がはかどり、デッキに金属塊の小山ができた。

     
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