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第6話(1)

すべては藍色の闇の中(1)

 1975年、中国では10年間に及ぶ文化大革命の動乱が終わりに近づいていた。
1971年のニクソン訪中以来、米中国交正常化の動きが加速し、台湾海峡の緊張は緩んだ。

 ベトナム戦争は2年前のアメリカ軍撤退、75年のサイゴン陥落で終結し、アメリカは内向きの傾向を強めていた。
しかし、中国封じ込めの最前線、台湾への中国軍の侵攻は阻止しなければならない。

 アメリカ海軍のタング級潜水艦“ハーダー”は、東シナ海で中国海軍の監視に当たっていた。
“ハーダー”は艦齢20年を越えた通常動力推進の攻撃型潜水艦で、退役間じかの老朽艦だ。原子力潜水艦はソ連に向けられている。

 “ハーダー”は尖閣諸島沖で国籍不明の潜水艦の推進音をキャッチした。
非常にうるさい、旧式の潜水艦の出す音だ。
音紋分析の結果がジェーマー艦長に報告される。

 「ロメオ型潜水艦と思われます。」
「中国の潜水艦か、北朝鮮のものか?」
「わかりません。しかし、哨戒なら数ノットでしょうが、ターゲットは10ノットの高速で走行しています。何かの任務遂行中と推測されます。」
「面白い。追跡してみよう。」

 謎の潜水艦は中国沿岸に向かわず、外洋を目指している。
“ハーダー”の方が優速で、相手との距離が5000mまで縮まった。
「ターゲットに警告を与えよう。探信音波発信!」
艦首のソナードームから音波が発信される。

 “R103”号の艦内にピーンという、甲高い音が響き渡った。
「敵に発見された!」
任務を成功させ、意気揚々と祖国に帰還しようとしていたパク艦長は、突然のことにパニックに陥ってしまった。

参考図:「現代の潜水艦」、中村雅夫編集、学習研究社、2001
     
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