かなぶち鍼灸調体堂の「先ずは只管打歩」なほぼ毎日譚

基盤を追求すると、ついに「歩く」迄遡ってきました。

脳への激しい衝撃:脳震盪に関して

2013年05月08日 | Bike
米国国立衛生研究所(NIH)のニュースレターから転載します。

自転車ロードでも落車などで脳震盪になる可能性は大なので、知っておくべき知識だと思います。
もちろん、ヘルメットの着用が大前提ですが。

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脳への激しい衝撃:脳震盪について知っておくべきこと

 脳とは、人体の司令塔である。脳は柔らかく、繊細な組織で、頑丈な頭蓋骨の中で緩衝液に浮いた状態で存在する。しかし、頭部への衝撃/激しい揺れがこれらの保護作用の限界を超えると、脳震盪として知られる軽度の脳損傷につながる。

 アメリカ合衆国では、100万人/年に脳震盪が発生している。受傷原因は転倒/交通事故/スポーツ(サイクリング/スケートボード/スキー/フィールドスポーツなど)である。脳震盪患者の半分は未成年者である。彼らの場合、サッカー/アメリカンフットボールといったスポーツをしている際に受傷している。

 米国国立衛生研究所所属のリハビリテーション研究者であるBeth Ansel博士は「脳震盪は軽度の脳損傷と考えられているが、もっと重大な問題と捉えられるべきである。少なくとも、すぐに解決される軽度の損傷と考えてはならない」と語る。きちんと処置すれば、大半の受傷者は完全に回復する。しかしAnsel博士は「一部の臨床例では、脳震盪によって思考力/注意力/学習力/記憶力に影響が残る場合が見られた」と語る。

 一度目の脳震盪は、二度目の脳震盪を受傷する危険性を増大させるとして知られている。そして、二度目の脳震盪は(一度目に比べ)より重症となる可能性がある。脳震盪が発生する原因/その徴候を認識することを学習するのは重要である。それにより、脳震盪を始めとする頭部障害を回避/適切に処置出来るようになる。

 ワシントン大学(シアトル)所属の、小児の怪我及びその予防の専門家であるFrederick Rivara博士は「頭蓋骨は脳に対する大半の外傷を防止するような構造であるが、頭蓋骨内で脳が動くのを防止するようには出来ていない。脳震盪は、脳が頭蓋骨内で前後左右に激しく動いたり、その結果として頭蓋骨内面にぶつかって衝撃を受けることで発生する」と語る。つまり脳が頭蓋骨内で激しく揺れることで脳組織が損傷したり、脳内で有害な変化が連鎖的に発生し、正常な脳機能の発揮が阻害される。

 頭蓋骨の骨折/脳内出血/脳内の腫脹といったより重篤な損傷はX線撮影などの画像検査で検出可能である。しかし、脳震盪を診断するのはより困難である。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)所属の小児脳障害専門家であるChristopher Giza博士は「脳震盪は外部から目視で診断出来ないし、標準的な画像検査装置(MRIやCT等)でも診断出来ないこともありうる。なので、通常は脳機能の異常を示す兆候/症状を基に診断を下す」と語る。

 よく見られる症状は吐き気/頭痛/思考の混迷/めまい/記憶障害等である。脳震盪患者の10%で意識の喪失が発生する。また、脳震盪患者では、基本的な質問に対してきちんと答えられない/動作がぎこちないという症状が見られる。

 Rivara博士は「(脳震盪の)症状は受傷直後に発生し、受傷から1~2日後まで見られる場合がある」と語る。

 脳震盪患者の90%では、症状は7~10日程度で消失する。科学者達は、脳震盪からの回復により長期を要する患者を対象に研究を進めている。米国国立衛生研究所が資金を提供しているある研究では、オハイオ州立大学のKeith Yeates博士が、軽度の脳障害で救急治療を受けた8~15歳の患者を対象に調査を行なっている。
 Yeates博士は「(調査対象の)患者の大半は極めてすぐに回復するか、少なくとも兆候が悪化することはなかった。しかし、全体の10~20%は受傷後に顕著な症状を示し、中には受傷から12ヶ月経過後もそれらの症状が残存する例も複数見られた」と語る。

 研究グループによると、身体に関連した症状(頭痛や目まい等)はかなり早急に消失する傾向にある。しかし思考に関連する症状(記憶力/注意力に関するものを含む)は長引く傾向にある。意識を失った患者/MRIによる検査で何らかの異常が見つかった患者では、問題が長引く危険性が高いことが明らかとなった。

 Yeates博士は「(意識を失った/MRIによる検査で何らかの異常が見つかった)小児患者では、その後の人生の質(QOL)が有意に低下する傾向が見られる。特に、学習において何らかの問題が生じやすいという明確な証拠が得られている」と語る。

 Yeates博士のグループは、脳震盪に対する各人の反応を予測する方法を模索している。軽度の脳障害の基盤を成す生物学的知識及びそこから導かれる知見については殆ど分かっていない。米国国立衛生研究所が資金を提供している研究者達は、脳震盪の直接の影響/受傷後の回復過程について、成人と未成年者の脳で何らかの違いがあるかどうかを調査している。また、他の研究者達は、脳が反復して障害を受けることで発生する問題について試験を行なっている。

 脳震盪を受傷した直後の脳は脆弱であり、二度目以降の衝撃を受けるとより重大な傷害となる。しかし、なぜそうなのか/どれ位の期間脆弱な状態が続くのか、ということは分かっていない。Giza博士らの研究グループは、最初の軽度の脳震盪によって、脳がグルコースをエネルギー源として利用する量が減少することをラットで確認した。最初の脳震盪から24時間後に二度目の軽度の脳震盪を受傷すると、エネルギー源として利用されるグルコース量は更に急減し、記憶力に生じた問題が長期間継続した。しかし、その後数日間かけて回復した後においては、エネルギー源として利用されるグルコース量は元に戻り、二度目の軽度の脳震盪による影響は一度目のそれと大差無いように思われた。

 Giza博士は「今回の試験結果から言えるのは、脳震盪を2回連続して受傷すると、その影響は格段に酷くなる、ということである」と語る。脳によるグルコースの利用は危険度/回復に要する時間を評価する方法になる可能性がある。Giza博士は続けて「しかし現時点では、脳震盪を受傷した後に何が起こっているかは明確になっていない」と語る。

 複数の研究で、一度目の脳震盪から10日以内に二度目の脳震盪を受傷する危険性が最も高い事が明らかとなっている。仮に一度目の脳震盪を受傷した人がいれば、あらゆる活動(スポーツを含む)を直ちに中止すべきである。脳の機能障害は、受傷者の思考を曖昧にしているだけではないからである。刺激に対する反応時間は遅延し、バランス能力にも何らかの悪影響が及び得るので、結果として二度目の脳震盪を受傷し易い状態にあるからである。

 Rivara博士は「脳震盪を受傷した徴候が認められれば、直ちにプレーを中止し、医師の診断を受けるべきである。現時点で明確に言えるのは、全ての兆候が解消されるまで一切の活動を中止し、解消後に徐々に活動量を増やしていくようにするのが望ましい」と語る。

 脳震盪を予防するには幾つかの方法がある。Rivara博士によると「まず、ヘルメットを着用することが大切である」とのことである。そして、その他競技毎に適切な頭部の防具を着用し、各競技のルールをきちんと守ることが大切である。また、高齢者においては、生活の場をより安全なものとすること、つまり転倒を招きかねない障害物を取り除いたり、階段に手摺を両側に設置したりすることが重要となる。

 Ansel博士は「現時点で言えることは、軽度の脳震盪であってもその予防方法/正確な診断方法/処置方法/評価方法を確立する必要がある、ということだ」と語る。

 そのような研究は継続しているが、やはり予防が一番である。周りで脳震盪が発生した時に備え、その徴候を認識する方法を学習しておこう。そして、脳震盪の徴候を示す人がいれば、直ちに活動を中止させ、医師の診断を受けさせよう。
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