世相と心の談話室

世の出来事に関する話、心理学的な話、絵と写真をもとにした雑談などのコーナーがあります。

愛国心――創作詩「僕の名前は日本です」

2005年04月07日 10時09分01秒 | 世の出来事放談
僕の名前はニッポンと言います
日の本と書きます
「日出ずる国」という意味です
暗かった世界に
最初に光を放つ存在になれ
そんな願いを込めて誰かがつけてくれました
本当にそういう意味かどうかは知りません
僕がかすかな記憶をもとにつくった話かも知れません

その名前をつけてくれたのが
親なのかどうかも分かりません
僕の親は、イザナキノミコトとイザナミノミコトと言います
母のイザナミノミコトは、僕を生んだ後、数多くの神を生みました
土、海、風、山、木、野、穀物・・・・・
最後にヒノカグツチノカミを生んだとき
その神によって火傷をおって亡くなりました
でも、僕は今でも母が生きていると思っています

僕の年はもう2千歳ぐらいになるでしょうか
僕のからだには1千億個の心が住みついています
それらの心が多種多様な細胞となって息づいています
でも、ある種の細胞は僕の心を蝕みます
例えば、僕の「誕生神話」は嘘だと言います
「それは時によって変わるお前の父親がつくった嘘だ」と言うのです
50年以上前からそう言われています
僕の父親が変わる?それじゃ母親は誰?
そして僕の誕生神話が嘘だったら
僕はどうやって生まれてきたの?
60年前まではみんな「誕生神話」を信じていたじゃない!
急にどうして嘘になってしまうの?
その声を聞くとき、僕はとても悲しくなります
それじゃ僕ってどこから来たの・・・・・?

僕は誕生して以来、いろいろと変わってきました
何度も大人になろうとしてきました
でもいつも不完全で、一度も大人になった記憶がありません
そんな自分でも、細胞たちが僕を支えてくれる限り
僕は青年期の不安定な心を全て受け入れてきました
そんな自分が、95年ぐらい前から
とても心を支え切れなくなったのです
あの忌わしい暗黒心の時代から・・・・・

あの時代、僕の心には黒い細胞たちが蠢いていました
健全な細胞たちはみんな沈黙していました
それより以前、僕は元服を迎えました
明治維新という名前で元服式を終えた僕は
僕のための歌と勲章をもらいました
歌は「君が代」という題がついていて
勲章は白地に日の丸の模様がついているものでした
遠い記憶なので確かではないのですが
確かその頃だったと思います
その歌と勲章は
暗黒心の時代に崇拝されました
それはすなわち、僕自身を崇拝してくれたということです
それに僕にまつわる偽の「誕生神話」がくっつきました
そして僕は有頂天になりました

しかし、健全な細胞たちの囁きが聞こえていたのも事実です
「騙されるな、騙されると身の破滅だぞ・・・・・」
でも、その声を僕は無視していたと思います
確かこんな期待を抱きながら無視していたと思います
「もし僕が騙されているのなら、健全な細胞たちが何とかしてくれる・・・・・」
そうして僕は、身の破滅へと転がり落ちていったのです

体はボロボロになり、あらゆる細胞が死んでゆくのを見たとき
僕は初めて自分が騙されていることに気づきました
そして、健全な細胞たちが僕を助けてくれなかったことにも気づきました
健康な体なら
防止・抑制・殺菌の機能を持った細胞が
健全な働きをしてくれる・・・・・
そう信じていた僕は、そうならない自分の体=心に絶望しました
自暴自棄になりました
最後は砲弾に肉片が散るよりも凄まじく
熱くなった皮膚が一瞬で溶け
灼熱の中であらゆるものが破壊され
毛髪も足も腕も胴体も
全て熱風に溶かされて
焼け爛れた壁に影となって張り付きました
地獄でした
これ以上ない自己破壊!
何も考えられず、何も信じられず、何も思い出せない絶望
そんな絶望すら嘘に思えた虚無感!
分かってもらえますか?分かっていただけますか?
この時の心の中を・・・・・「中」という言葉も失うほどの虚無感を・・・・・

それから数年
僕は体を蝕んだ黒い細胞たちを憎みました
黒い細胞は確かに癌でした
それは健全な細胞も黒く醜いものへと変えていきました
でも僕は知っています
一部の細胞たちが
黒い細胞に変わったふりをしていたことを・・・・・
それらは僕の体の中で
自らが生き延びるために変装していたのです
だから暗黒心の時代が終わると
それらはあっさりもとの細胞に変わりました
僕の心の中で、何かが違うという叫びがありました
僕の心は、どこに行こうとしているのか
とても危ない不安と混沌が心を占めました

僕の名前はニッポンです
日の本と書きます
暗黒心の時代に僕を支配していた父親は
玉砕して亡くなりました
代わって外国から僕の新しい父親が来ました
彼は僕の癌を手術して治そうとしました
完全に治ったかどうかは分かりません
その父親は、民主主義と自由を教えてくれました
でも僕の母親の行方は依然分かりません
僕は母が絶対生きていると信じています

父は僕を一人前の大人にするために
いろんなことを教えてくれました
僕は一生懸命勉強しました
世界のトップクラスに入るために
大変な努力をしました
でも僕の心はずっと分裂したままです
僕の心にはまだ黒い細胞が残っているような気がします
そして僕が心配するのは
その黒い細胞の1つが力を増したとき
健全な細胞たちがあっさりとまた
黒い細胞になったふりをするのではないかということです
健全な細胞たちの一部は
僕の歌と勲章を軽蔑します
ある細胞は、僕の歌を歌う人を攻撃します。 
ある細胞は、僕の勲章が掲げられるのを阻止します。 
でも、僕は知っています
そんな細胞が本当に僕を守ってくれるのでないことを

僕の名前はニッポンと言います
日の本と書きます
「日出ずる国」だったはずの僕は
「日迷う国」となっています
僕の心の中には
1千億個の様々な細胞が
いろんな叫びを発しています
苦悶と嘆きと悲しみと
非難と中傷、いじめの陰湿な声
虐待された者達の無言の泣き声
歓喜と悦楽、不安と希望、絶望と祈り
憎悪と恫喝、自己顕示欲の強い高飛車な声
意味もなく殺される人々の恨みの声
僕の心ははち切れそうです
いつか心がポッキリ折れて
またわけの分からない自分になりそうで・・・・・
僕って何なのだろう?

僕は自分の未来に自信がありません
僕の体=心の中で
黒い細胞が再び蠢くのではないか
僕の健全な細胞たちは
再び黒い細胞に支配されるふりをするのではないか
そんな細胞たちは、僕の体=心です
だけど、僕がそれらを統制することはできません
僕は、細胞たちがつくる体=心を受け取るだけです

ある細胞は僕に言います
「もっと自分に自信を持ちなさい!」
自己愛というやつです
でも、その同じ細胞が
僕が愛国心を口にした瞬間
眉をひそめるのです
これって何か変…・・!?
僕にとっては自己愛=愛国心なのに…・・

また、ある細胞はこう言います
「暗黒心時代、君のために戦ってくれた細胞たちに感謝しなさい」と…・・
でも、僕は知っています
何のために戦っているのか分からずに
消えていった細胞たちの悲しみと怒りを…
そして僕は分かっています
それは僕のためでなく
暗黒心時代、僕を支配していた父のために
意味もなく消えていったことを…
後に残ったのは
真っ暗で底無しの虚無感!
僕は高らかに、僕の歌を歌えない
僕は高らかに、僕の勲章を掲げられない
返してくれ!僕の歌を
返してくれ!僕の勲章を

ごく最近
僕の小指に噛みついた隣人がいます
その人は、今も小指を噛んだままです
その人は、僕の小指が自分のものだと言います
他にも僕を苦しめる隣人たちがいます
暗黒心時代、当時の父が
その人たちの体の肉を切り取りました
僕の黒い細胞たちがそれを貪り
健全な細胞たちは、その栄養を摂取しました
だから僕にも罪があるのです
僕の小指が噛まれたのも
僕が隣人に苦しめられるのも
その復讐だと思います
仕方ないことです。仕方のないことです!
仕方のないことですが、
どうして噛まれた小指を治そうと
いろんな細胞が動き回らないのでしょうか
一部の細胞が動いても
それが黒い細胞になりそうで
僕はものすごく恐いのです
僕のなかには
暗黒心時代の父の遺伝子が
確かに組み込まれているようで
僕はたまらなく恐いのです

こういうとき
「ああ、痛かっただろ?痛かったね…」
と、いたわってくれる母がいてくれたらと
残念でなりません
僕は母が生きていることを信じています
時々、母の声を聞き、母の夢を見るからです
僕を生んでくれた母は
過去に生きた細胞たちに見守られています
その細胞たちは暗黒心時代より前の細胞です
数百億個もあって
死んでいるのではありません
魂が細胞に変わって息づいています
それらはかつて
神仏の御霊を心にして
地上で生きていた細胞たちです
その細胞たちが整然と並んだ大広場
その奥に宮殿があり
その中に僕の母がいます
そして僕は彼女の声を聞くのです
「母はここにいます。こちらへおいで…」
でも、今いる僕の場所から宮殿までは
限りなく遠く
何千年もの時間が必要です
――僕はそんな夢を見るのです

僕の真実の「誕生神話」とは
どんな物語なのですか?
偽りの父がつくった神話ではなく
本当の話を聞かせてください
今の僕は何を信じて
生きていけば良いのですか?
打算にまみれた自己愛ではなく
本当の愛を教えてください
未来の僕は
どこに向かって進めば良いのでしょう?

僕は知っています
自分の体=心の中にある細胞が
いろんな叫びと蠢きを持っていて
それが非常に不安定であることを…・・。
「個性が大事」という色に染まった細胞があると
周りの細胞はその色に染まります
そして「個性が大事」と大合唱しながら
他と違う細胞を潰していくのです
ところが、そこに強い力が生じれば
みんな一瞬にして「右へならえ!」となるのです
力の持ち主の機嫌を伺いながら…。
――そんなことがない時でも
僕の心は拠り所を失って
空虚と不安だけが
漫然と沈殿しています
僕の体=心には
そういう性質があることを
僕は知っています
だけど、それらの細胞は
僕の体=心です
僕はそれらを全て受け入れ、許し、抱きしめて
歩んで行くでしょう、あなたの所へ…・・

だからお母さん、
僕はあなたを探そうと思っています
あなたを探す旅に出ようと
思っています
それが・・…それだけが…・・
今の僕を支えてくれるような気がします
できれば、
旅の地図をつくってくれる
お父さんも欲しいです
真実の神話のなかで
正しく導いてくれる
本当のお父さんが欲しいです

お母さん!
僕はあなたを探す旅に
出ようと思っています
母国という言葉の響きのように
その温もりで僕を守ってください

日本を代表する花が
桜であるように
日本を名乗る僕=心を象徴するものは
何なのでしょうか?
今僕はどこにいるのでしょう?
これから僕はどうなるのでしょう?
何よりも、僕って
何なのでしょうか?

僕の名前はニッポンです
日の本と書きます
それはかつて
「日の出ずる国」
という意味でした!

愛国心について、私なりに今考えていることを、詩にしてとりとめなく表現してみました。次回のページでは、その愛国心について、論述の形で述べてみたいと思います。

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