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日本カナダ文学会の活動と紹介

NEWSLETTER Number 81

2024-04-01 | Newsletter

NEWSLETTER

THE CANADIAN LITERARY SOCIETY OF JAPAN

L’association japonaise de la littérature canadienne

Number 81        

Spring, 2024

 

会長挨拶

日本カナダ文学会会長 佐藤 アヤ子

 

花の季節となりました。会員の皆様にはお元気にてご活躍のことと存じます。NEWSLETTER 81号をお届けします。

私事ですが、2024 年 3 月 15 日から 3 月 22 日までシアトルとバンクーバーに行ってきました。コロナ禍のために海外はしばらく自粛していましたが、3 年半ぶりの訪問でした。今回の訪問は、私が所属する日本ペンクラブと国際交流基金共催のフォーラム、「北米日本文学フォーラム」に参加するためでした。このフォーラムは、北米における日本文学への関心を深めるためで、シアトルで開催された「全米アジア学会」とブリティッシュコロンビア大学アジアセンターで行われた「日本文学フォーラム」に、講演者で作家の平野啓一郎さんと参加しました。1990 年代初めの日本のバブル経済崩壊に伴って海外では日本文学への関心が薄れたときもあったようですが、現在では日本文学への関心が以前にも増しているという実感を得ました。様々な分野で多様化が進む現在、日加の作家の比較研究も面白いのではないかと思う昨今です。

短い滞在でしたが、旧知の間柄である McLuhan 研究の第一人者でブリティッシュコロンビア大学のRichard Cavell 教授と劇作家で performance studies 研究者であるサイモンフレイザー大学の Peter Dickinson 教授とお会いでき、最近のカナダ文学等の動向を聞くことができました。短いバンクーバー訪問でしたが、古い友人たちに再会でき、楽しかったです。

それにしても、シアトルでもバンクーバーでも物価が高いのでびっくりしました。日本の物価の倍以上でした。3 年半の間に、こんなにも値上がりするのかと思いました。円安の日本に外国人観光客が押し寄せるのも納得できますね。

しかし、変化は物価だけではなかったです。東京よりも早く、桜やこぶしの花が満開でした。これも気候変動問題のひとつかと思いながら青空に映える美しい花々を観賞しました。また、 ブリティッシュコロンビア州では山火事が多く起こっているという話もあちこちで聞きました。 カナダ環境・気候変動省は、ブリティッシュコロンビア州における 2017 年の記録的な森林火災は人為起源の気候変動が主因とする研究を発表しています。

会員の皆様の一層のご活躍を祈念いたします。

 

第 42 回日本カナダ文学会年次研究大会のお知らせ

 

第 42 回日本カナダ文学会年次研究大会は、室 淳子会員のお力添えをいただき、6 月 15 日(土)に名古屋外国語大学で開催します。現在、対面開催に向けて準備を進めておりますが、コロナ禍の影響もあり、Zoom の設定も行います。

午前の部では、新会員のニューファンドランドのメモリアル大学の Dwayne Avery 准教授の発表、午後の部のシンポジウムでは、「カナダ文学と動物」をテーマに荒木陽子会員、白井澄子会員、出口菜摘会員が参加します。特別講演では作家の Lisa Moore さんと自然写真家の大竹英洋さんをお迎えします。奮って対面でご参加ください。また皆様に詳細をご案内します。

開催日時:2024 年 6 月 15 日(土)10:30-16:30

会 場:名古屋外国語大学 日進キャンパス(愛知県日進市)

開催方式:対面+オンライン(Zoom)

 

<午前の部>

〇 研究発表 Dwayne Avery 会員

〇 総会

<午後の部>

〇 シンポジウム「カナダ文学と動物」

≪Canadian Literature and Animals≫

荒木陽子 会員、白井澄子 会員、出口菜摘 会員

〇 特別講演 Lisa Moore 氏、大竹英洋 氏

 

開催校より

室 淳子会員

第 42 回日本カナダ文学会年次研究大会は、2024 年 6 月 15 日(土)に名古屋外国語大学日進キャンパスで開催いたします。現在、対面開催(一部オンライン)に向けて準備を進めております。詳細につきましては新学期開始後に改めてお知らせいたします。多くの会員の皆さまとお会いできることを楽しみにしています。

名古屋外国語大学日進キャンパスへのアクセスおよび宿泊情報:

★アクセス: (https://www.nufs.ac.jp/outline/access/access/) 名古屋駅➡(地下鉄東山線)上社駅 24 分

➡大学専用バス 15 分

★宿泊: 名古屋駅または東山線沿いの宿泊施設はアクセスがスムーズです。

(参考)ホテルメルパルク名古屋 (https://www.mielparque.jp/nagoya/); ホテルルートイン名古屋今池駅前

(https://www.route-inn.co.jp/hotel_list/aichi/index_hotel_id_591/?utm_source=google&utm_medium=gbp&utm_campaign=web)

 

 

< 連載: カナダ文学との出会い 第18回 >

伊藤 節 会員

あれは子供時代のいつ頃だったのだろう。緑の切妻屋根とはどういうものかもわからないままアンの世界に完全にのめり込んだ時期があった。その頃私の住む地域からかなり離れた海のそばに孤児院というものがあった。子供心に「コジイン」という響きは何ともいえない切ない不安のようなものを感じさせた。そんな孤児院からアンはやってくるのだが、彼女の幸せ作りをする才能は際立っていた。「ああマリラ、今この瞬間、あたしはプリンスエドワード島中でいちばん幸福なのよ」。そうかと思えば「あたし、絶望のどん底にいるんですもの。小母さんは絶望のどん底にいるときものが食べられて?」との嘆き。「わたしゃ、絶望のどん底になんかいたことがないから、何とも言えないね」と応ずるマリラ。マリラと「そうさのう」を連発する兄マシュー。そしてもちろんアンとギルバードとの関係などなど。いま思えばモダニズムに抗うモンゴメリの姿など多様な解釈をもたらすだろうが、子供にとっては胸に響く面白さだけで十分で、あの頃はよかったと思わせる『赤毛のアン』との出会いであった。

英文学を専攻するようになって暫くして夢中になったのが放浪のモダニストと称されるマルカム・ラウリーとその代表作『火山の下』(1947)。元英国領事と元妻イヴォンヌとの胸の苦しくなるような生がメキシコの祝祭日の 1 日、意識の流れ手法で描かれている、という解説などは役に立たない。人間の生の混沌を解体によって示そうと、物語ることに抵抗しながら書くという、不可能性をはらんだその手法。1987 年の 5 月には UBC 開催の New Perspectives on Malcolm Lowry と題する 4 日間の国際シンポジウムに参加するためバンクーバーに飛んだ。プログラムチェアはアトウッド批評でもおなじみのシェリル・グレイス。メジャースピーカーはラウリーとの深い絆を示していたポストモダン作家のロバート・クロウチであった。この時 UBC は季刊誌 Canadian Literature No.112 を刊行しており、その巻頭論文が『侍女の物語』とディストピアの伝統に関するものであった。2 年前にこの話題作を出したアトウッドに関心は持っていたが、カナダ文学とアトウッドの立ち位置を明確に意識しはじめたのはこの時であった。「サバイバル」と題されたそのユニークなカナダ文学案内こそがある意味でカナダ文学との本当の出会いといえるのかもしれない。時を経て、女性作家研究会の仲間と二度にわたってトロントに赴き、それから数年かけて現代作家ガイド『マーガレット・アトウッド』(2008) の刊行にこぎつけた。アトウッドに指南された作品中のカナダの森をめぐるあの時の旅は、今思うと二度とはあり得ない名実ともに豊かなものであった。今や『侍女の物語』は続編『誓願』や、Hulu 配信のテレビドラマシリーズとともに大きな反響の渦を巻き起こしているが、単なる仕掛け人ではないこの作家の世界を注視することはこれからも続いていくだろう。

 

新刊書紹介

〇 日本ケベック学会『ケベックを知るための 56 章』第2版、(明石書店、2023 年 12 月)

2,000 円+税 ISBN978-4-7503-5661-7

 

事務局からのお知らせ

<学会費のご案内>

学会誌『カナダ文学研究』第 31 号ご送付の際に、2023 年度までの学会費納入状況のお知らせを郵便振込用紙とともに同封いたしましたので、ご確認ください。また、新年度の学会費につきましても、お振り込みください。大学等の機関からお振込み頂く場合には、お名前が分かるように事務局までご一報頂けますと助かります。振込手数料につきましては、ご負担ください。

振込先:

郵便振替口座: 00990-9-183161 日本カナダ文学会

銀行口座: 三菱 UFJ 銀行 茨木西支店(087) 普通 4517257

日本カナダ文学会代表 室 淳子

正会員 7,000 円

学生会員 3,000 円

 

編集後記

○ 不調が続いていたパソコンがついに反応しなくなりました。コロナ禍に始まったわからないことだらけのオンライン授業と自宅待機の日々を共に過ごしたここ 4 年を思うと、大事な相棒を失った気分です。とはいえ新学期は目前で感慨にふける間もありません。新しい相棒を探しに行こうと気持ちを切り替えています。(Y)

○ ニセコで春スキーをしてきました。春スキーをすると、年度の終わりと新学期の始まりを肌で感じることができます。ゲレンデを滑りながら、過ごしたシーズンの終わりを迎える切なさを感じると同時に、新学期に向けた準備を考えながら、新たな挑戦に気持ちが高まります。2024 年度がどんな一年になるか、楽しみです。(T)

○ コロナ禍のスタートと共に入学した学生たちが、無事、新生活へと旅立っていきました。同じく東京での生活を始めて4年、変化の荒波は押し寄せつづけます。それでも、今は少し、深呼吸して春の空気を。石神井に英国人の同僚を訪ねた際、自然豊かな公園のある東京のよさに触れました。運がよければカワセミも見られるとか。花々の名を言いあって、百日紅には英語で Indian lilac という美しい呼び名があると知りました。明るい春の空気と希望を胸に新年度を迎えようと思います。 (S)

 

NEWSLETTER THE CANADIAN LITERARY SOCIETY OF JAPAN 第81号

発行者 日本カナダ文学会

会 長 佐藤 アヤ子

編 集 沢田知香子 & 戸田由紀子 & 山本かおり

事務局 名古屋外国語大学 現代国際学部 室 淳子(副会長)研究室

〒470-0197 愛知県日進市岩崎町竹ノ山57

TEL: 0561(75)2671

EMAIL: muro@nufs.ac.jp

HP: https://blog.goo.ne.jp/kanadabungakukai84burogudayo

会長連絡先 EMAIL: ayasato@eco.meijigakuin.ac.jp

 

 


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