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脚本『いいのかな』 明和義人ものがたり子ども版

1 『いいのかな』
ある かいてんすしやさんに、まぐろちゃんが いました。
ほかのなかまも たくさんいました。
ところが、このおみせでは                  

2 まいにち、いたまえの いたさんが、おすしたちの ごはんを とりあげるのです。
「さあ、きょうのぶんの ごはんをだせ」
いたさんは、それを、こっそり じぶんの ゆうごはんにしたり おみせでいちばんえらい 
しゃちょうさんに あげたりしていました。
「あしたからは、もっと出せ」
「むりだ、これいじょうあげたら すしとしてやっていけない」
<ぬきながら>
「どうしよう」                

3  くろい てまきちゃんや、しらがの 中トロちゃんは いいました。
「いたさんを やっつけろ」
 まぐろちゃんはいいました。「それより、てがみをかこう。だって いたさんは ちからもちだし、たたかっても ぼくたちがまけちゃうよ。しゃちょうさんに たのもう。ごはんを
とらないでくださいってね」                         

4  ところが これをこっそりきいていたのが、シャコちゃんです。
「いたのダンナ、まぐろたちが あんたに はんこうしようとしてますぜ」
「そうかシャコ、よくしらせてくれた。おまえには ごほうびをやろう。」 
                            

5  「こら、まぐろ、てがみをかこうなんて もってのほかだ、こっちへこい」
   「わー」「たいへんだ」「シャコが いいつけたんだな」「いたさんをやっつけるぞ」



6  カンカンカン、てまきちゃんが あいずで ちゃわんをたたきます。
「みんな よういは いいかあ」
カンカンカン 「わさびを まるめろ」
カンカンカン「あしを ふんばれ」             


7 すしたちは わさびだまを なげつけます。
「えーい」ぺたっ、「さあどうだ」ぺたっ。
いーけないんだ いけないんだ   <三分の一ぬく>
センセに いってやろ。ぺたっ
あーらら こらら       <三分の二までぬく>
とうちゃんに いってやろ。ぺたっ
いーのかな いいのかな
  <ぜんぶぬく>                     

8 かーちゃんに いってやろ。ぺたぺたぺたっ。
にんげんたちも びっくり。「これはたいへんだ」       

9 「ひゃーたすけてくれ、しゃちょうに みつかっちゃうよ」
いたさんたちは にげていって しまいました。
「よかったね、まぐろちゃん」「しんぱいしたぞ」
「いたさんが いないから、これからは なんでも じぶんたちで やらなくちゃ いけないね」 
<三分の一ぬいて>
 「なに?ごはんがたりないって?わたしのを きみにあげるよ。まぐろじるしの けんと 
こうかんだよ」
<三分の二ぬいて>
「わさびがあまっちゃった。てまきちゃん、あずかってちょうだい。」
「うん、あずかっているあいだ、こまっているおすしに かすからね」
<ぜんぶぬく>  
                         

10 「キズはどうだ。わしが なおしてやるから、また みんなのために はたらいてくれよ」
こんなふうに、このおすしやさんは、まぐろちゃんを まんなかに、みんなで おしゃべりしながら たのしくまわっている おみせになりました。          

11 ところが そこへやってきたのは、しゃちょうさんです。
「こうさんだ。あたらしいごはんを わけてあげるから、みんなで わけなさい」
 <はんぶんぬいて>
「そら、ここにおくぞ」「わーい、しゃちょうさんは いいひとなんだね」
おすしたちは おおよろこびです。
すると、しゃちょうさんは こういいました。
「ごはんのかわり、と いっちゃなんだが、おねがいがある。おい、だれか。
まぐろちゃんと 中トロちゃんを ここへよんできてくれないかな」
<のこり ぬく>         


12 「うん、いいよ」と うなぎちゃんが とことことこ。
   「くんくん、いいにおい。あっ、これは うなぎのたれだ。あれ、じゃあ これは 
ぼくのごはんじゃないか。あたらしいごはん って、ほんとうかな」  
   

13 「まぐろちゃん、中トロちゃん、いってしまって だいじょうぶ?」
   「ああ、だいじょうぶだよ。しゃちょうさんと なかよくなって かえってくるからね」
ところが、しゃちょうさんは いいました。
「へっへっへっ。やっと てのひらに のったな。ところで、てまきちゃんは どこかな」
「えーっと、えーっと、わかりません」
「なに、わからんだと?けしからん。」             


14 「えいっ、ぎゅっ」
  「あっ、まぐろちゃん、中トロちゃん」「たいへんだ」「こわいよ」 おすしたちはおどろいて、おとなしく なりました。まぐろちゃんも中トロちゃんも、いなくなってしまったのです。

                               

15 「こんどは ぼくたちでなんとかしよう」
「まぐろちゃんのことは わすれないようにしよう」
「そうだ、あのはんこだ」
みんなは のれんに まぐろじるしの はんこをおして、
いつまでも たいせつにしたと いうことです。



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