骨董屋の小僧は頭が固くなる

 私は新潟市の図書館の問題を昔から書いてきました。
子ども時代は短いからよい本だけを、と突き進んできた過去があり、今また児童図書館研究会の本を読んで、右傾化は止まらないんだなあ、と思っています。

 「骨董屋の小僧よろしく過去の良い本を見ていると、次第に良い本が見分けられるようになる」とよく言われ、最近の本にも書いてあります。私は以前からこれに関して「変だなあ」と思っていました。
 これはもしかして、言いにくいけど、脳が固定化したとか 頭が固くなって違うものが受け入れられなくなる、という現象ではないでしょうか。リリアン・スミスが図書館の本だなに今ある本をみんな捨てて自分の好み(良い本?)を入れていったという逸話ですが、これも、ある時期に頭が固くなった結果ではないかと思うのです。「あの本もこの本も・・・」と古典本リストを見て嬉しくなるのは、昔を懐かしんで幸せになる脳の働きではないでしょうか。特定のものが権威になったせいで、それに合わない人が迷うようになり、世の中の分断が進みましたね。

 「骨董屋」というのもキーワードです。古いものの目利きができるというのは大切ですが、それでは新しいものはその延長上にあるのでしょうか。骨董屋さんは新しいものを「これは新しいからダメだ」と退けているでしょう?本はそれでいいのでしょうか。
 過去、新潟市の絵本講座の講師は読み継がれているAという本を例に出して「ここが良い」「これを読んだら子どもの良い反応があった」と言い続けました。聞いている私たちは「そうですか」と受け入れていたのです。
 付け加えるならば、例えばAという本についてはわかりました、では違うBというまだ評価が定まっていない本について語って欲しかったのです。そのうちに私は、「この講師の人たちはどこかで読んだ本の評価を口にしているだけなのではないか。だから新しい本はまだ評価が出ていないから説明できないのではないか」と思うようになりました。これを繰り返していけば、小僧さんや受講生は頭が固くなるのは仕方ありませんね。
  新刊本を読んだときに「とげのように刺さる」箇所があって、それが悪いところだとおっしゃっているけれど、これが実は固くなった頭が刺激をうけていることで、それはとても大切なことではないかと思います。一年毎に図書館権威者の研修を受けないと続けられないボランティアでは、図書館の子分になるばかりで、図書館のための図書館が出来上がっていくばかりでしょう。

 これからは多様性の尊重が大事です。図書館も持続していくように考えたほうが良いと思います。違うものを積極的に受け入れるために、小僧さんは常に頭を柔らかく、今の子どもの様子を見て、それに近づいてもらいたいのです。一つの本や話にも多様な見方があって、いろんな人の様子を見ているとその感覚の幅の広さに驚かされた経験はないのでしょうか。それとも権威を見せて発言を封じているのでしょうか。
  
 それから、生々しい話ですが、ボランティアにはいろんな人がいます。階級社会のように、一部のお局様とそれを取り巻く人がいます。かつて「あなたにはこの本の良さがわからないのね。おーっほっほっほ」と笑う人を何人も見てきました。陰でおっほっほおばさんと揶揄されたりしていました。これは新潟だけの問題ではないでしょう。
 普段は普通の良いおばさんなのに権威に目がくらむと他が低レベルのように見えてしまう、という人間の情けなさで、恥ずかしいですが私にも覚えがあります。そこで気づいたのは、これらを唱えるのは、一言一句同じ言葉を覚えるストーリーテリングが得意な人たちが多いということです。遠い家元の言葉を暗唱して自分の言葉を忘れ、「良い本」見分ける感性も暗唱しているのではないかということです。この『子どもに定番絵本の読み聞かせを』を読んで思うのは、「家元の言っていることを復唱しているみたいだ」ということです。暗唱スタイルのストーリーテリングを「危ないよ」と私が言うのはこういう理由からです。
 もしも「あなたはこの本の良さが…」と言われたら、安心して「私はあなたと頭が違うからわからない」と言えばいいと思います。
 
 もちろん、古典本というようなカテゴリーでプログラムに入れるのも、一つの方法です。そして、ウケる本を時々入れるのも一つの方法です。
 ウケる本で笑って息を吐くと、反動の吸う息のように次のものを吸い込みやすくなりますので、落語のまくらのように次の話が入りやすくなります。
 そして、芸術性という切り口です。ウケて笑うというのは想定を裏切られたときに起こるもので、「なんだこれは」という岡本太郎ばりの発見は、芸術でもありますから、大事にしたいですね。

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