ほんとうの意味でのスキルアップを

いろんな引き出しを持つのは、とても大切だと思います。それから本を見分ける目を養うのも大切ですが、見分けて一方を否定するようになると困りものです。
「良い本を選べ」と言われ、とても困って入り口から入れない人もたくさんいます。「良い本」とはさすがに言えない時代になったのはお分かりになったようで、「よく選べ」と言うようになった。
私は、「ボランティアは選ばなくてもいい」と言いたいです。以前のブログにかいたように「利用者が選びやすい状態をつくればいい」と言います。

例えば、幼い子の絵本で言えば、「認識できるようリアルに描いてあるほうがいい」と「目の器質的状態から、単純化した絵のほうがいい」という、つまりは対極にある理論があります。前者は薮内正幸、後者はD・ブルーナなどが例にあげられます。
前者を絶対視してしまうと後者を否定し、後者を崇拝すると前者は無意味な本になる。宗教というのはそういうもので、一つを突き詰めていくと他はすべてだめになる。

図書館にはいろいろな年代の人がきて、その子の発達段階もさまざまなので、さまざまな表現形態の本を入れればいいし、ボランティアはいろんな本をその子にあわせるべきだと思います。
つまり、ボランティアのスキルアップされた状態は、さまざまな本をこだわりなく取り出して、相手の気持ちのままに受け入れていける状態ではないでしょうか。

ある種の本を選んでそれを押し付けるのが、スキルアップされた状態と勘違いしている人たちがいるような気がしてならないのです。
昔話絵本の説明では、よく「さんびきのこぶた」の絵を引き合いにだして説明されます。豊栄図書館でも今やっていますね。
 福音館書店の「金のがちょうのほん」の本を広げて「このブタの絵は上質で、リアルでブタの本来の姿がかかれています」
他のイラストっぽくデフォルメされた絵本を見せて「これは子どもの認識をあやまらせますね」と、こうなる。

でも、昔話って「中身をぬく」のであって、様式化されたイメージなのですよね。極端な話、抽象画でもいいし、♪マルかいてチョン♪のえかき歌のブタで「これは一番目のブタで」とやってもいい。その方が語法にあってる。耳で聞いて、リアルな絵を思う人、アニメ画を思う人それぞれです。
なぜかリアルで古典的なイメージがいいということになっている。けれどそれに向かって行くことは、つまり語法に反した方に向かうということです。

最初はいいものを、という意識は大切にしたいとやってきました。子どものお稽古だって「最初はいい先生」と選ぶ。おいしい良質なものを食べていると、化学調味料で味付けされたくどい食べ物がわかる、ということです。
最初は有名大学を出た方が「いい先生」のような気がするので、お金があればそうするけど専門バカにでくわすこともあるし、昨今経歴詐称もけっこうある。離乳食は大切に、次の段階では自然食品すべてで毎食まかなうわけにいかないので、カップラーメンも食べることがある。
「離乳食」「最初のいい先生」に例えられるような絵は、どっちかというと「まるかいてチョン」ではないかと思うのですが、どうでしょう。

 できたら、偏らないように、いろんな価値をまぜあわせるのが一番いい方法ではないかというのが結論です。混ぜ合わせることの大切さを知ることがボランティアのスキルアップではないかなと思います。

 自分の保育園時代を思い出します。姉はキリスト教の幼稚園に行っていたが、わたしは市立の保育園でした。で、姉がもらってくるキリスト教のきれいな絵カードがうらやましくてしょうがなかった。なにやらリアルにキリスト様や天使の様子が細かく書いてあった。いっぽう、お部屋のすみにままごと人形があって、まるかいてチョン式の顔の人形がかわいくてしょうがなかった。金魚の絵がかかれたブリキのおもちゃの金魚の絵が好きだったし、あれは初山滋の絵だったのだろうか、子どもむけの絵本をぼんやり見ていた記憶がある。
 そういった情報が渾然となってなんとなく生きてきたのだし、それを否定されるのは、その当時の人たちみんなを否定することになるのではないでしょうか。

それから、太古の時代から語りがあり、そこから絵が生まれて絵本につながっていったことを思うと、絵本から語りのコースに行くのは、歴史をさかのぼることだなあと思うようになりました。階段を登るステップアップというより、人間本来の力をあてにして 階段を下りながら赤ちゃんがえりしていくみたいな。
 昨日、日帰りで全日本語りのまつりに行ってきました。東京子ども図書館も協賛していたけど、『こどもとしょかん』に何も書かれていないし、わが新潟の語りの先生がたは今まで一言もそう教えてくれなかった。これからですね、きっと。
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