隠れ家-かけらの世界-

今日感じたこと、出会った人のこと、好きなこと、忘れたくないこと…。気ままに残していけたらいい。

大味でない、ステキな大作~『コールドマウンテン』~

2007年05月03日 23時22分06秒 | 映画レビュー
コールドマウンテン』(アンソニー・ミンゲラ監督、2004年)

 久しぶりに、難しいことを考えずに浸れる映画に出会えたような。なぜか理由はないんだけど、最近は、重くて、テーマはなんなの?と問わずにはいられない映画ばかりだったし。

■失われた命の先に生まれた「家族」
 この作品は、南北戦争末期の南部を舞台にした究極のラブストーリーであり、壮大な人間ドラマ。
 ひと目で恋に落ちて、それほど深くお互いに知り合わないまま、男インマン(ジュード・ロウ)は戦場へ、そして女エイダ(二コール・キッドマン)はインマンの帰りを信じることで過酷な暮らしを生き延びようとする。
 悲惨な戦争の場面や、脱走してエイダのところに戻るまでの旅のようすの中に、一つ一つがとてもとがっているエピソードがちりばめられていて、インマンの長い苦悩と必死な思いが無理なく伝わってくる。夫を戦争で失い乳飲み子を抱えた若い女性との一夜の心の交流や、破天荒な牧師との出会いなどが心に残る。
 牧師であり大きな存在であった父親(ドナルド・サザーランド)を失い、一人路頭に迷っていたエイダの前には、優しい隣人の紹介で、生きる術を知り尽くしたたくましい女性ルビー(レニー・ゼルヴィガー)が現れる。ピアノは弾けても、鶏をさばくことはできず、星の名前は知っていても、パイさえ焼けなかったエイダが、ルビーの教えで、牧場の仕事をし銃を操作できるようになっていく…。その二人に芽生えていく友情が美しい。正反対の二人がそれぞれに魅力的で強く優しいところ、それだけでもこの映画を観る価値があるように思えるくらい。
 インマンは奇跡のようにエイダの待つコールドマウンテンに帰ってくるが、脱走兵を探し回る義勇軍の手で命を落としてしまう。エイダとの初めての夜のシーンは本当にきれいで情熱的で…、それだからよけいに、暗雲を予感させてしまう。
 何人のも命を奪い、自分は汚れてしまったと言うインマンは、これからエイダやルビーと過ごしながらどんなふうに自分を取り戻していくのか、それは叶わぬ夢になってしまったのだけれど。
 そしてラストの穏やかな「家族」の場面。インマンが残してくれた娘とエイダ、ルビーの家族、そして父親、家族を失い、その過酷な体験から声を失ったサリー…。インマンはいないけれど、その命の先にこの「家族」が生まれていたんだと、見ている私たちは少し救われる思いを味わう。

■好きな俳優ばかりで、シアワセ
 それにしても、ジュード・ロウの端正でりりしい姿! このところ、女優ばかりが光って見えていたのですが(あくまで、私が、ですが)、久々のヒットです。目がいい。目がいつも何かを物語っている。美しいけど軽薄ではない、って、なかなかいないですよ。私の中では、トム・クルーズが「美しくて軽薄な男優」の筆頭なんですけどね(これ、別にけなしているわけではないです)。
 二コール・キッドマンは大好きな女優。この人も目が強くて、そこが魅力。私としては、『めぐりあう時間たち』の病んだバージニア・ウルフが秀逸でした(この映画は、私のベスト5に入ります、たぶん)。お嬢さんのエイダがルビーとのふれあいによって、生きている女性に変わっていくさまに、とても心が躍りました。女らしくて賢くて、優しい…、って、もう完璧じゃないですか?
 そして、これも大好きなレニー・ゼルヴィガー。『シカゴ』『母の眠り』とまったく異なる女性を演じながら、いつも心の中の躍動を自然に表現する人で、そしてやっぱりあの目がいい(笑)。眠そうな、ちょっといたずらっ子のような? そういえば『ブリジット・ジョーンズの日記』をまだ観ていなかったことを、今ちょっと恥じています。ルビーでアカデミー助演女優賞を受賞したそうだけど、エイダと対照的な女性を演じて、見事でした。
 ちなみに、エイダの父親役はドナルド・サザーランド。初めて観た『M★A★S★H マッシュ』以来、大ファンです。『コールガール』『ジョニーは戦場に行った』とか、印象的。私にとってはちょっとエキセントリックな印象をずっと捨てきれないのですが、こんな穏やかな演技をするほど、いい感じで年を重ねていたのですね。


 エピソードが数多く織り込まれ、インマンの逃亡生活、エイダとルビーの暮らし、という二つの大きな流れを配しながら、少しも冗長にならずに、淀みを感じさせずに物語が進んでいくところに、演出の妙味も感じました。
 「大作」とか「壮大なドラマ」というコピーを見ると、ついつい避けたくなってしまう私ですが、「品のよい」大作であったことを最後に付け加えておきます。
 おもしろかった!

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