春のいたずら

■春のいたずら

長い時間が流れて　いくつも雨が降って
咲き誇る傘の間に　一瞬見えた笑顔
でも三十分の遅れが　キミを怒らせて
声も後ろ姿も　遠ざかってしまった
あのとき　見送ったままの春の風
最高気温が湿ったままの　かったるい日々
飽きるくらいに　身を潜めて
十万年が　私の前を通り過ぎた

春のいたずら　思いがけぬユラユラ
首すじに光る汗と　まぶしい光のダンス
あのときのままのキミが　フォトフレームを抜けて
赤信号の向こう側で　誰かを笑う
命を削って　時間を食べて
ここまで泳ぎ着いて　ひと休み
そんな私を横目でにらんで
キミは颯爽と　時間を超えていく