巷で小さく話題沸騰中の「ハーブ&ドロシー」を見て来た。
とあるクリエーターが強烈プッシュで
またそのフライヤーがなんともおしゃれで
これは見なければならぬだろう、と公開後すぐに駆けつけた。
NYに暮らす、現代アートのコレクター夫婦のものがたり。
出演しているアーティストの言葉を借りるなら
とにかく『面白くて、可愛くて、情熱的。』
コレクションの定義も、小さくて安いもの、と単純明快だ。
ハートウォーミングなドキュメンタリーに違いないのだが
少しだけアートをビジネスとしている業界に足をつっこんでいる自分としては
複雑な思いがしたのも事実だ。
アーティストとの個人的つながりのもとにコレクションして来たハーブ&ドロシー。
ひとりだけ登場したアートディーラーが
『正直面白くはない』と言っていたのはまぎれもなく本音であろう。
気づけば彼らの膨大なコレクションはすさまじい価値となり
ワシントンのミュージアムに寄贈され、後世に伝えられる。
正直、
彼らのように
収集になみなみならぬ熱意を持って、人生を費やしているコレクターは
この世にゴマンといる。
まわりを見渡しても、石や瓶、ポスターや鳥の巣など。
このものがたりの主人公は、
道具の世界では“出世”というコトバがあるが
そんなアートの出世とは無縁の美しきコレクター像、である。
しかもキュートに齢を重ねた愛すべき老夫婦、である。
この映画を見て感動を覚えた多くの若い人たちには
朝、暗いうちから東寺や四天王寺の蚤の市にお出かけすることをオススメしてみる。
この日本にも
ハーブ&ドロシーが、そこここにいることにきっと気づくはずだから。
なんだか辛口だけど
この感想は、決して映画としての魅力を否定したものではないことを付け加えたい。
この映画そのものが、まさしくアートの佳品であるからして。