長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

山本一力著【サンライズ・サンセット】

2018-05-14 11:17:01 | 本と雑誌

時代小説の名手が現代小説を執筆、しかも舞台は江戸からニューヨークへ。
変わらぬ人々の営みが、滋味深く心に沁みる…。
江戸とマンハッタンは似ている!
『ホワイト・キャブ』
田舎町に住むマーサは、亡き夫との思い出の地、ニューヨークに降り立った。
同行した孫の反対を押し切り、タクシーではなくリムジンに乗り込んだマーサ。
ドライバーは、高値を吹っかけようとほくそ笑むが…。
『ピクルス』
古書店店主・アンソニーは、地上げのあおりを食って閉店するグリーンマーケットの店主のために、あることを計画した。
マーケットを愛していた大勢の住民たちが集い、奇跡のような一夜が幕を開ける…。
『キューバン』
キューバン・カフェの名物は「コーン・スペシャル・アラ・ハバナ」である。
ナディアの父親ルピオが作り出した、焼きトウモロコシだ。
こども時分に祖国キューバで食べた味を、記憶をたどりながら仕上げた一品である。
店は盛況で客は列を作って待っている。
ところで、店のある通りは美観保持にうるさく、ゴミが朝8時を過ぎても店先に出ていたら、風紀委員会からクレームがくるのだ…。
『バーバー・プンチャン』
メイリンが再びウォール街の床屋に働き口を得て、わずか5年しか過ぎていなかった。が、街は大きく変わっていた。
一番の違いは客が大きく減っていたことだ。
収入も少なかったし、住んでいるクイーンズからの通勤には1時間近くかかった。それでも街の雰囲気が好きで、メイリンは通い続けた…。
『C・P・D』
ニューヨーク市では13歳以下のこどもが単独で遠くに出かけることを禁じていた。
そんな中、パトリックと親友の澄晟(チョウセイ)はある冒険を計画していた…。
『グリーンアップル』
マックは14年前、22歳で志願入隊していた。
除隊してのそれからは…アメリカでは戦闘に向かった兵士には、ひどく冷たい態度を取るらしい…、ランボーで描いたように、ベトナム戦争の英雄でさえ、浮浪者以下の扱いだった。
日本では復員してきた兵隊さんには、結構手厚く迎えたと聞く、ただし、勝手に戦争して敗戦した、職業軍人に対しては冷たい態度だったそうだ。
とにかくマックは、JFK空港に向かうために、タクシーを捕まえようとしたが、イエローキャブはいなく、最近見かけるようになった、アボカド色のキャブに乗った。
「JFK空港だけど、いいかい?」
「規則ではダメだけれど、イエローキャブがいないから、いいよ」
マックは何故か、遠回りの道を指定し、20ドル札を、ドライバーに差し出した。
ドライバーの名はトム。
トムもかつてはイラクへの兵隊としてその地を踏み、闘っていたのだった…。
江戸もニューヨークも変わらぬ、著者の語り口、何故だか可笑しくなって、それでも江戸人情もニューヨークの人情も変わらぬ情緒として描いているのが面白い♪一力節は不変である!
樋口有介の時代小説に、山本一力の現代小説、本当に至極興味深く味わった。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。