長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

宮部みゆき著【荒神(こうじん)】

2017-05-15 17:54:55 | 本と雑誌

時代小説というよりは、ファンタジー時代噺といったところか。
東北小藩の山村が一夜にして壊滅する。
怪物はなぜ現れたのか?北の民はどう立ち向かうのか?
時は元禄、東北の山間の仁谷村が一夜にして壊滅状態となる。
隣合うニ藩の関ヶ原の合戦以来の因縁、奇異な風土病を巡る騒動…。
不穏さをはらむこの土地に“怪物”は現れた。
仁谷擁する香山藩では病みついた小姓・直弥や少年・簑吉らが、香山と反目する永津野藩では専横な藩主側近の弾正や、心優しきその妹・朱音らが山での凶事に巻き込まれていく。
礫も弓も鉄砲も、それに火さえつうじぬ、恐るべき怪物の正体とは?
交錯する北の人々は、それぞれの力を結集し、“災い”に立ち向かう!
山は飢え、怒っている…。
大魔神のような一大スペクタクル作品といえる。
ただ違うのは、大魔神は善の使者だが、この怪物は悪の塊である…。
結末は切なく哀しく美しい。

有栖川有栖著【鍵の掛かった男】

2017-05-15 17:14:12 | 本と雑誌

2015年1月、大阪・中之島の小さなホテル<銀星ホテル>で一人の男・梨田稔(69)が死んだ。
警察は自殺による縊死と断定。
しかし梨田の自殺を納得しない人間がいた。
同ホテルを定宿にする女流作家・影浦浪子だ。
梨田は五年ほど、銀星ホテルのスイートに住み続け、ホテルの支配人や従業員、常連客から愛され、しかも2億円以上預金残高があった。
影浦は、その死の謎の解明をミステリ作家の有栖川有栖とその友人の犯罪社会学者・火村英生に依頼。
が、調査は難航。
梨田は身寄りがない上、来歴にかんする手がかりがほとんどなく人物像は闇の中で、その人生は「鍵の掛かった」としか言いようがなかった。
生前の彼を知る者たちが認識していた梨田とは誰だったのか?
結局、自殺か他殺か。
他殺なら誰が犯人なのか?
密室よりも冷たく堅く閉じた、孤独な男の壮絶な過去とは?
思いもしない悲劇的結末が関係者全員を待ち受けていた。
珍しく本文の三分の二程は、火村が入試で動きが取れず、有栖川有栖が刑事よろしく単独で捜査する。
あとの三分の一でいよいよ火村が出馬するが、現場のスイートルームを検分し、僅かな手がかりから、直ぐに他殺である事を示唆する。
そしてある事から、一瞬にして犯人を特定してしまう…。