2007年11月18日(月)
ウェリントン、ホークストン通り
朝六時ホテルの東の窓から太陽があがってくる。茜色の光がIRDビルに遮断されて分散されるため、まぶしくはない。南の島の日差しは強烈。
唐は小さいいびきを掻きながら形のいいお尻をむき出して眠っている。
Wピータースは労働党ヘレンクラークと手を携えて酒場の壁に乗り出していた。ヘレンは男で、ピータースは花嫁の姿のハリボテ・・・・
ボルジャーもロジャーもロンギも対面して笑ってる。
NZ市民の美徳と悪徳はマウイとの闘争に尽きる。
1843年のワイラウ大虐殺[1]が幕開け。
キャプテン・ウエイクフィールド(当時21歳)が1839年、ネルソンの代理としてNZ殖民会社を40万ドルで創設、50人の白人とワイラウに上陸、兄のギブソン(44歳)とともに南の島にリトル・ロンドンを造ろうとした。彼は「シドニーからの手紙」や「英国そして米国」などの出版物から母国そのままのシステムを殖民国に入れるのは難しいものだと考えていた。豪州も米州もどちらかというと経済的独立が優先すると考えていた。とにかくリスクのある商売は経済的安定が大事だから。彼はリトルイングランドの土地を買収し、ロンドンからの移民がそれを買うことによりにより大領主にのしあがることを画策した節がある。
しかし、カールマルクスが予言したとおり、資本主義の輸出は文字通り破綻した。資本主義の基本は物でなく社会的人間関係にあった。つまり、先住民たるマオリとの関係。
1840年2月6日北島ワイタンギで条約が結ばれた。北島を交渉で、南島は発見者として英国領とするもの。しかし、どこにもあるようにそれは不平等条約であり、現在のNZもそれによる不公平の練り直しが国民の急務とされている所以。18世紀の英国殖民拡大主義はNZで終焉を迎えた。
と隣からスルスルと手が伸びてきて、首根っこがつかまれ、押し倒された。オレンジマンゴのにおいのあるスリフテイな唇が重なってきた。
□ 北東横断列車
オークランド
朝7時30分
オーバーランダー201号はブリトマート駅を音もなく滑り出る。
一路南を目指す。
マオリのおば様が隣同士になる。車内はNZの退職おまわりさんや現職サラリーマンで満員御礼状態だ。
640キロというと東京~八戸位の距離だろうか。11時間の長旅は新幹線になれた日本人には心地よい贅沢な時である。「旅の過ぎ行くまま・・・♪」なんて素敵じゃない。
□ 車内ビュフェで
「NZ国民は400万人」
「羊は?」
「・・・・」
「38百万頭」
「じゃ10倍だね。」
退職警官はいう。アジアをあちこち行ってるがの。日本だけは行きたくない。
「なんで?」
「人間がゴチャゴチャいるだろう。あれはすかん。」
「あなたの国だって羊を足すと相当な人口(?)密度になるでしょう。」
「羊と人間を一緒にするのか?」
「香港は別なんですか?」
「ま、香港は中国じゃないしナ・・・」
唐が口を挟む「香港も台湾もひとつの中国なの!」
「君たちは親子か?日本から移住するつもりはないかネ」
「年金生活でこの国で働く必要がなければ受け入れるのじゃがね。」
「物価が高いでしょう。2DKで1週400ドルもするんじゃ、とても年金では無理だね。」
唐が「大丈夫、私がワーキングビザで働くから」とけなげに返事した。
□ 麻薬、運転
LSDやヘロインはクラスA、マリファナやハッシッシはクラスB、その他のクスリはクラスCで、18歳以上だとコンビニで手に入る国である。もっともこの12月から取り締まりは厳しくなるが・・、まして、飲酒運転はおおらかである。事故さえなければであるが・・日本人パブで大いに飲んだ加藤某はハーバーブリッジをノースコートへ帰宅するハズ。
□ 娯楽
クイーンズ通り日本料理写楽では娘に実によく似た顔立ちの女の子がいた。けなげにかつテキバキと動いており好感した。ワーキングビザかどうか聞き忘れたがオークランドに4年、遊ぶ暇はあまりないらしい。
お父さん(俺)もストリップにはいく。税関通り(ブリトマート駅の向かい)に「ショーガール[2]」。
「アドミッション?」いくら?
「20ドル」と無愛想な女
中でビールを2本注文するが15ドルと書いてあるので20ドル札を出すとちゃんとおつりはくれる。しかし、あとでホテルで確認したら「Not Legal Tender」
「なにこれ・・・」つまり店内だけで通じる5ドル(1ドル札+2ドル札2枚)というわけ・・これってサギくさいよね。ツーリストが2度来ることはないよな。ショーガールのガーターにくくりつけても喜ばないと思う。
□ ガソリン価格
NZも日本円換算140円である。相当に高い。
「NZも日本も同じ火山国でしょう。」
「石油も鉱山もありません。無資源国なんですよ。」
「車はメーカーってないですよね。」
「関税が300%のころはトヨタや本田があったんだけど、全部撤退・・」
「でも車の普及率は世界で一位だよ」
「NZは広いから一家に一台ではむりなんだ。アウトドア用にもね」
「日本の中古車は相当人気がある。でも7年以前のものは輸入禁止になる来年から」
「そこで輸入ラッシュか」
「中国もそうらしいじゃないか?」
□ IRD
なんと幸運なことか。
このホテルの隣は財務省内国歳入部(IRD)である。国会議事堂から数分、小高い丘の下に10階建て八角形の白と灰色のツートンカラーのビルが建っている。別段、目立つ必要もないな。「Inland Revnue Department」と一階のエントランスに書いてあるだけ。政府の建物が集中しているから何の変哲もない。脱税事件が起こることもないであろう。ウエリントンは静かな平穏な街である。表面的には・・。
しかし、裏の歴史になるとそうはならない。特に政治の世界においては・・・
実に大部分の国会議員は誠実であり、よく働き、仕事をしたがる。彼らが国民に正直でない場合は彼らは単純にナンセンスを吹きかける。嘘とは違うのだ。国民がいうのを躊躇していることの方が口に出していることよりも格段に大事なことであり、政治家はよくそれを知っている。
□ ウエリントンの夜
とにかく人がいない。人口密度が少ないから仕方ないか。名古屋の地下鉄街どころじゃない。8時時点でまだ、空は薄明るいが、店は全部しまっている。銀座どおりをあるいているのは酔っ払いと旅行者らしい夫婦連れぐらい。とてもさびしい。酒場は盛り上がっているのか覗くが誰も入ってない。ガラン~としているのだ。月曜日の成果も知れないので明日もう一度経験してみようと思う。しかたがないので昼間、半日観光のオジサンに教えてもらった税関のなんとかワーフ(たしかビクトリア・ワーフだったかな。)でビールを2本、レッドワインをグラス一杯。なんとも味気ない首都ネ。思い当たる節がある。ワシントンに行ったときも同じような思いをしたのである。ワシントンも人口は極端に少ない。国会議員がいくようなエスタブリッシュメントの宴会場はあるのだろうが(実際、議員会館みたいな奥様連中が行くコジッカリしたビルが近くにあった。みんな車で行ってるから飲んでいたらおおごとだよね?)旅行者にとっては首都は冷たいものだ。日本の公務員はすべて首都に配置されている。その辺の悲哀はなめてるのだろう。
そういう意味では東京はすばらしいところだとつくづく思う。
□ なまり
NZの英語なまりは相当なものである。
ビールとジャパニーズチキン(つまりヤキトリ)を頼むとかわいいお嬢さんが
「アイテインアイテイ」
「パードン?」
「ユーテイクビーアアンドチキンズトタルアイテインアイテイ」
「なんですか?ほかのものはいりませんよ!」
「アイテインアイテイ、ユー!」
とにかく勘定かな、カウンターに10ドル札、20ドル札、50ドル札をならべると彼女はあわてて20ドル札を引き抜いた。
つまり、18ドル18セントだった。
「A」を「あ」と発音するのは少し慣れてきたが(「サタディ」は「サタダイ」)、エイティン(18)を「アイテイン」というのは驚いた。後で彼女に「ゴメン、君はエイテインといったのだね?」と聞くと「そう「アイタイン」」だって・・・・あくまでもNZ娘は頑固。
□ 法律書
気がついたのだがNZの街の本屋には日本で言う「法律書」「六法全書」は存在しない(ようだ。)。というのは、法律書はWEBで専門家がただで見れるためらしい(本当に見れるかKITBL+Yで検討中)。日本も同じ状況がでているが「六法全書」はあいかわらず売れているだろう。何が違うのかな。国会の庭は夜9時を過ぎてもライトアップされていて、浮浪者風の2~3人が階段に座っている。全然仕切り(壁)がない。実際には相当貧富の差があるだろうが表面的には公平に見えるのがNZだ。誰でも何時でも国会の庭まではいける。中は無理!
★この中に{唐」なる人物が登場しますがフィクションですから登場人物は架空のものですから念のため。
□ 夫婦恋愛事情
2007年11月22日:朝4時34分:
オークランド郊外:オークウッドポートランドホテル
要するに多くの夫婦を観察してきたが、それぞれ様々である。
年齢が50歳代では、まだまだ、イチャイチャしているが、世間体を取り繕っているように私には見える、キリスト教の影響が大きい。「デグニティ」の精神はここNZではものすごく浸透している。
60歳を過ぎると(エ~真実的・本当?)退職者、退役者の夫婦が目立つ。私が旅行者であるため、彼らも旅行者である場合なのだが、エスコートが板についている。どのような観光地にいっても基本的には夫婦単位で、つまり、親子や女性同士、男性同士の行動は見られないのである。これに比べ、アジア系は修学旅行、観光旅行、ビジネス出張いずれも集団型で、家族サービスとしても親類、一族郎党タイプになる。そこには個としての「アイデンティ」が今だ確率していないように私(エ~真実的・本当?)にも映る。
NZの最終の夜はオークランド郊外のモーテルを手当てした。私の目算では明日、朝9時半の出発は相当に早いと思ったからだ。だが、目算はずれた。一体人の少ないNZでしかも郊外ということになると走っているのは車だけで人っ子一人周りには居ないのだ。勿論、酒場も店舗も何もねい。テレビはあるがインターネットは「アウトオブオーダー」、テレビに例のチャンネルもねい。これでは何をすればいいのかわからない。公園的裏庭的スペースは実に広いが、だだぴろいだけで何の変哲もない。プールがあっること担っているが、7メータ四方の小さい水たまりで勿論誰も泳いでいないし、水辺にはちかづけないよう柵がしてある。鍵がかかっている。気温も15度ぐらいでうす寒いくらいだ。5月なのに!!
まわりにはレストランなど微塵もないので、モーテルのダイニングを利用することになる。全て夫婦としての利用であって、比較的質素な食事振りである。
ハウスワイン6ドル、メインデッシュ24ドルくらいだろうか。
それでも円換算2500円だから2人分で5000円。NZ人としては出費かも知れない。
しかし、日本的感覚でいうといったん、旅行に出ると夫婦であっても散財するし、夕食でもフルコースということになる。そうすると2万円ぐらいはザラである。(すくなくともわが夫婦の場合だが)
西洋人に比べ4倍の食費を使ったとしても、夫婦の愛情を表現したことにならないということに私は気づいた。平常心でも夫婦旅行はできるのである。
[1] Wairau massacre
[2] www.showgirls.co.nz
唐が口を挟む「中国、中国って言わないで・・なにしろ13億も居るんだから仕方ないじゃない」