国際税務研究ブログ

こんにちわ、TOKYO在住の税理士、木村俊治と申します。国際税務のことについてアレコレ書いています。木村国際税務研究所も

伊藤剛志さんの『国外資産は課税当局にわからない?』の転載

2014-02-21 13:31:00 | 国際税務問題
 国際的な脱税や税逃れを摘発する体制整備が急ピッチで進んでいる。日本の課税当局も、海外当局と協力して納税者の国外資産を把握することが可能になり、少なくとも、スイスの銀行に預けておけばバレない、という状況ではなくなった。最近の課税当局による国外資産の情報取得システムについて伊藤剛志弁護士が詳細に解説し、適正な税務申告と納税を呼びかける。

 

国外資産は課税当局にはわからない?

西村あさひ法律事務所
弁護士・NY州弁護士 伊藤 剛志

 ■ はじめに

拡大伊藤 剛志(いとう・つよし)
 弁護士。1999年東京大学法学部卒。司法修習(第53期)を経て、2000年に弁護士登録。2007年ニューヨーク大学ロースクール(LL.M.)修了(Arthur T. Vanderbilt奨学生)。2008年ニューヨーク州弁護士登録。現在、西村あさひ法律事務所・名古屋事務所代表。金融取引および税務を中心に担当。レポ取引に係る源泉徴収税を巡る税務訴訟を始め、様々な税務調査・税務争訟に関与・助言している。

 先日、弁護士会の委員会に出席した折、ある弁護士さんが、次のようなことをおっしゃっているのを耳にした。

 「日本人がスイスなどの海外の銀行に預金を持っている場合には、日本の課税当局には、その預金の存在はわからない。日本の金持ちの中には、スイスなど海外にある銀行に資産を預けて日本の課税当局から資産を隠し、日本の税金を免れている者がいるのではないか」

 この弁護士さんがおっしゃったようなことは、世間一般の人々が抱いているイメージに近いものではないだろうか。確かに、納税者の資産が日本の主権が及ばない地域にある場合には、租税の徴収・執行について様々な困難と問題が生じる。しかしながら、海外に資産を隠して税金を逃れるような行為を放置すれば、真面目に納税をする者の租税負担に対する不公平感は増大し、租税制度の根幹を揺るがしかねない。20世紀末のいわゆる金融ビックバンにより、日本の外国為替政策は大きく転換し、現在では、個人が海外の金融機関に預金口座などを開設・保有することも容易になっている。日本の課税当局も、このような状況を手をこまねいて傍観しているわけではない。ヒト・モノ・カネの移動の自由が進む世界的な潮流の中で、各国の政府も同様の問題を抱えており、先進諸国の間で国際的な脱税や税逃れを摘発する体制整備の構築が急速に進められてきている。日本の課税当局も、海外当局と協力しながら、国際的な脱税や税逃れを防止するための制度の整備を進めており、少なくとも、先進諸国の間では、海外にあるからといって、課税当局から資産の存在を隠し通せるという状態ではなくなっている。

 今回のリーガル・アウトルックでは、課税当局による納税者の国外資産に係る情報取得などの制度を取り上げる。

 ■ 国外送金等に係る調書

 海外の金融機関にある口座へ送金をしようとする場合、あるいは、海外の金融機関にある口座から国内へ送金をしてもらおうとする場合、通常は、国内の金融機関を通じて送金や送金の受領をすることになろう。このような、国内金融機関を通じた海外送金についての情報は、日本の課税当局が、これを取得できる制度が構築されている。

 すなわち、国内の金融機関を通じた国外送金又は国外からの送金等の受領をする場合、その者は、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」(平成9年法律第110号)に基づき、国内金融機関に対して一定の告知書を提出しなければならない。そして、金融機関は、その顧客の行った国外送金等に関して、顧客の氏名・住所・金額・送金原因、相手方の氏名、国外の銀行等の営業所等の名称や相手国名など、一定の事項を記載した国外送金等調書を作成の上、所轄税務署長に提出することとされている。このような国外送金等調書の制度を端緒として、日本の課税当局が納税者の国外資産の存在を認識・把握することも考えられる。

 ■ 国外財産調書制度の創設

 平成24年度税制改正では、国外財産調書制度が創設された。その年の12月31日において5000万円を超える国外財産を有する居住者は、その財産の種類・数量及び価額などを記載した国外財産調書を翌年3月15日までに税務署長に提出しなければならない。かかる国外財産調書の提出は、平成26年1月1日以降に提出すべき国外財産調書について適用されることとされており、具体的には、平成25年末の国外財産が5000万円超であれば、平成26年3月15日までに国外財産調書を提出しなければならない。

 国外財産調書は、過少申告加算税等の特例と紐付けられている。通常、申告漏れなどがあった場合には、本来、納めるべき税金の他に、過少申告加算税や無申告加算税という、いわば、罰則的な追加の税金が課税される。しかしながら、国外財産に係る所得税・相続税の申告漏れ等があった場合に、国外財産調書に申告漏れなどに係る国外財産の記載がされていれば、申告漏れなどに係る過少申告加算税・無申告加算税を5%分、減額する。一方、国外財産に係る所得税の申告漏れなどがある場合において、国外財産調書の提出がない場合や国外財産調書に申告漏れなどに係る国外財産の記載がない場合には、過少申告加算税・無申告加算税を5%分、増額することとされている。

 いわば、過少申告加算税・無申告加算税を梃子に、納税者に対して、正確な国外財産調書の提出のインセンティブを与えようとするものである。このような国外財産調書が納税者から提出されれば、課税当局は、より直裁に、納税者の国外財産の情報を得ることができる。

 ■ 租税条約に基づく情報交換制度

 日本政府は、2011年10月末現在、52か国との間で二国間租税条約を締結しており、その適用対象国は63か国となっている(旧ソビエト連邦との間の条約が独立後の各国との間で適用されることなどもあり、締結国数と適用国数が異なっている)。

 これらの二国間租税条約には、通常、情報交換に係る規定が設けられている。日本の課税当局は、租税条約上の情報交換規定に基づき、相手国政府に対して、相手国に所在する税務情報の提供を要請することができる。相手国政府は、租税条約に定める一定の拒否事由にあたる場合を除き、要請に係る情報を提供しなければならない。さらには、このような個別の要請がなくとも、相手国の税務当局にとって有益と認められる情報を自発的に提供・交換したり、法定調書などから把握した非居住者への利子・配当等の支払に関する情報を、自動的に相手国の税務当局へ提供するといった情報交換も行われている。日本の課税当局は、このような情報交換に基づいて取得した情報を利用して、納税者の国外資産に係る申告漏れや脱税を摘発することができる。

 人や資本のクロスボーダー化が進展する中で、脱税及び租税回避の抑止という観点から、租税条約に基づく政府間の情報交換の重要性は高まっており、特に、今世紀に入ってから、透明性と課税目的の情報交換に関する「国際的に合意された租税基準」と呼ばれる、新しい情報交換の基準が形成されている。この新しい情報交換の基準の特徴は、(a)自国の課税利益による制限の撤廃(要請を受けた国が自国の課税目的で当該情報を必要としない場合であっても、他国のために情報を収集する義務を明記)と、(b)金融機関保有情報へのアクセス(要請を受けた国は、金融機関が保有する情報であるというだけの理由で、情報の提供を拒んではならない旨を明記)である。

 このような新基準が国際社会に受容された背景には、2008年に発覚した2つの国際的な脱税事件の影響がある。1つは2008年2月、リヒテンシュタインの信託会社の元従業員が同国LGT銀行の1400名の顧客情報を各国課税当局に提供した事件である。各国で税務調査が開始され、特にドイツでは、著名な実業家の脱税事件に発展した。もう1つは、スイスのUBS銀行を巡る事件である。2008年、米国課税当局がUBS銀行に対して米国人顧客の情報開示を求める召喚状を発行した。これは米国とスイスの間の外交問題に発展し、スイス議会・裁判所を巻き込む形で事態が進展したが、最終的には2010年に米国とスイス政府との間の租税条約を改正して、スイス政府が米国に対して米国人顧客の情報を提供した。かかる過程において米国富裕層の一部が米国の適格仲介者制度を悪用して、脱税をしていたことなどが明らかになった。

 さらに、このような事件と前後して、2008年秋以降、リーマンショックに端を発した世界的な金融危機が発生し、金融システムの安定化などの観点からも、不透明な資金の流れが国際社会の中で問題視された。2009年4月には、G20サミットが「銀行機密の時代は終わった」と宣言し、OECDの新基準に基づく情報交換を取り込む多数の租税条約が締結されるに至っている。

 日本政府も、主として2005年以降の租税条約の新規の締結・既存条約の改正において、情報交換に際しての、自国の課税利益による制限の撤廃及び金融機関保有情報へのアクセス、という点を明記するようになっている。また、我が国はこれまで、いわゆるタックス・ヘイブンと呼ばれるような軽課税国との間では租税条約を締結しない方針であったが、2009年以降、バミューダ、バハマ、ケイマン諸島、マン島、ジャージー、ガーンジーといった軽課税国との間で、情報交換を主体とする租税条約を締結し、これら軽課税国に所在する税務情報を取得できる体制を整えている。

 以前は、例えば、「スイスの銀行にある口座の情報は、日本の課税当局に提供されることはない」と信じられていたかもしれない。しかしながら、日本・スイスの間の租税条約も改正され、改正後の租税条約は、情報交換における自国の課税利益による制限の撤廃及び金融機関保有情報へのアクセスを明記しており、租税条約に基づき、日本の課税当局が日本の居住者のスイスにある銀行口座の情報を要請することも可能となっている。日本・スイス間の租税条約を改正する議定書は2011年12月1日に発効しており、改正後の規定による情報の交換は2012年1月1日以後に開始する各課税年度について認められることとなっている。

 ■ 税務行政執行共助条約

 2011年11月、日本政府は、租税に関する相互行政支援に関する条約(税務行政執行共助条約)及び同条約を改正する議定書に署名した。税務行政執行共助条約は、1988年、欧州評議会及びOECDが作成した多国間条約であり、主として、(1)締約国における情報交換、(2)租税債権の徴収の支援(徴収共助)、(3)要請による文書送達(送達共助)を定めている。税務行政執行共助条約は、現在32カ国が署名している。

 税務行政執行共助条約は、国際的な徴収共助の規定をおいている。経済活動の国際化の進展に伴い、日本の租税債権につき納税義務を有する者が国内に財産を所有していないケースも想定される。このような場合、国内で納税者に対して課税処分を行っても、当該租税債権を徴収することが難しかった。しかしながら、今後は、税務行政執行共助条約に基づき、条約加盟国に対して、当該加盟国内に有するその納税者の財産から、日本の租税債権を徴収する道が開けることになる。

 税務行政執行共助条約の批准などの手続は完了しておらず、未だ、日本に対する効力は発生していないが、同条約が発効すれば、国際的な脱税や租税回避に対する有効な対抗手段の一つとなろう。


Lost to Tax Loopholes  木村国際税務研究所

2014-02-21 13:16:39 | 国際税務問題

By Jesse Drucker - Oct 21, 2010 7:00 PM GMT+0900
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Stock Chart for Google Inc (GOOG)
Google Inc. cut its taxes by $3.1 billion in the last three years using a technique that moves most of its foreign profits through Ireland and the Netherlands to Bermuda.
Google’s income shifting -- involving strategies known to lawyers as the “Double Irish” and the “Dutch Sandwich” -- helped reduce its overseas tax rate to 2.4 percent, the lowest of the top five U.S. technology companies by market capitalization, according to regulatory filings in six countries.
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Google Inc. European Headquarters in Dublin

Paul McErlane/Bloomberg
The Dublin subsidiary, which employs almost 2,000 people and sells advertising across Europe, the Middle East and Africa, has more than tripled its workforce since 2006 and is credited with almost 90 percent of Google’s overseas sales, which totaled $12.5 billion in 2008.
The Dublin subsidiary, which employs almost 2,000 people and sells advertising across Europe, the Middle East and Africa, has more than tripled its workforce since 2006 and is credited with almost 90 percent of Google’s overseas sales, which totaled $12.5 billion in 2008. Photographer: Paul McErlane/Bloomberg

Oct. 21 (Bloomberg) -- Google Inc. cut its taxes by $3.1 billion in the last three years using a technique that moves most of its foreign profits through Ireland and the Netherlands to Bermuda. Google’s income shifting helped reduce its overseas tax rate to 2.4 percent, the lowest of the top five U.S. technology companies by market capitalization. Bloomberg's Melissa Long reports. (Source: Bloomberg)
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Google 2.4% Rate Shows How $60 Billion Lost to Tax Loopholes

Paul McErlane/Bloomberg
The Google Inc. European headquarters Dublin.
The Google Inc. European headquarters Dublin. Photographer: Paul McErlane/Bloomberg
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Google Inc. European Headquarters in Dublin

Paul McErlane/Bloomberg
The Google Inc. European headquarters are seen in Barrow Street, Dublin.
The Google Inc. European headquarters are seen in Barrow Street, Dublin. Photographer: Paul McErlane/Bloomberg

The Google Inc. company logo sits at their European headquarters in Barrow Street, Dublin. Photographer: Paul McErlane/Bloomberg
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Google Shows How $60 Billion Is Lost to Tax Loopholes

Mark Tatem/Bloomberg
Pedestrians walk past the offices of the Conyers, Dill & Pearman law firm in Clarendon House located on Church Street in Hamilton, Bermuda.
Pedestrians walk past the offices of the Conyers, Dill & Pearman law firm in Clarendon House located on Church Street in Hamilton, Bermuda. Photographer: Mark Tatem/Bloomberg
“It’s remarkable that Google’s effective rate is that low,” said Martin A. Sullivan, a tax economist who formerly worked for the U.S. Treasury Department. “We know this company operates throughout the world mostly in high-tax countries where the average corporate rate is well over 20 percent.”
The U.S. corporate income-tax rate is 35 percent. In the U.K., Google’s second-biggest market by revenue, it’s 28 percent.
Google, the owner of the world’s most popular search engine, uses a strategy that has gained favor among such companies as Facebook Inc. and Microsoft Corp. The method takes advantage of Irish tax law to legally shuttle profits into and out of subsidiaries there, largely escaping the country’s 12.5 percent income tax. (See an interactive graphic on Google’s tax strategy here.)
The earnings wind up in island havens that levy no corporate income taxes at all. Companies that use the Double Irish arrangement avoid taxes at home and abroad as the U.S. government struggles to close a projected $1.4 trillion budget gap and European Union countries face a collective projected deficit of 868 billion euros.
Countless Companies
Google, the third-largest U.S. technology company by market capitalization, hasn’t been accused of breaking tax laws. “Google’s practices are very similar to those at countless other global companies operating across a wide range of industries,” said Jane Penner, a spokeswoman for the Mountain View, California-based company. Penner declined to address the particulars of its tax strategies.
Facebook, the world’s biggest social network, is preparing a structure similar to Google’s that will send earnings from Ireland to the Cayman Islands, according to the company’s filings in Ireland and the Caymans and to a person familiar with its plans. A spokesman for the Palo Alto, California-based company declined to comment.
Transfer Pricing
The tactics of Google and Facebook depend on “transfer pricing,” paper transactions among corporate subsidiaries that allow for allocating income to tax havens while attributing expenses to higher-tax countries. Such income shifting costs the U.S. government as much as $60 billion in annual revenue, according to Kimberly A. Clausing, an economics professor at Reed College in Portland, Oregon.
U.S. Representative Dave Camp of Michigan, the ranking Republican on the House Ways and Means Committee, and other politicians say the 35 percent U.S. statutory rate is too high relative to foreign countries. International income-shifting, which helped cut Google’s overall effective tax rate to 22.2 percent last year, shows one way that loopholes undermine that top U.S. rate.
Two thousand U.S. companies paid a median effective cash rate of 28.3 percent in federal, state and foreign income taxes in a 2005 study by academics at the University of Michigan and the University of North Carolina. The combined national-local statutory rate is 34.4 percent in France, 30.2 percent in Germany and 39.5 percent in Japan, according to the Paris-based Organization for Economic Cooperation and Development.
The Double Irish
As a strategy for limiting taxes, the Double Irish method is “very common at the moment, particularly with companies with intellectual property,” said Richard Murphy, director of U.K.- based Tax Research LLP. Murphy, who has worked on similar transactions, estimates that hundreds of multinationals use some version of the method.
The high corporate tax rate in the U.S. motivates companies to move activities and related income to lower-tax countries, said Irving H. Plotkin, a senior managing director at PricewaterhouseCoopers LLP’s national tax practice in Boston. He delivered a presentation in Washington, D.C. this year titled “Transfer Pricing is Not a Four Letter Word.”
“A company’s obligation to its shareholders is to try to minimize its taxes and all costs, but to do so legally,” Plotkin said in an interview.
Boosting Earnings
Google’s transfer pricing contributed to international tax benefits that boosted its earnings by 26 percent last year, company filings show. Based on a rough analysis, if the company paid taxes at the 35 percent rate on all its earnings, its share price might be reduced by about $100, said Clayton Moran, an analyst at Benchmark Co. in Boca Raton, Florida. He recommends buying Google stock, which closed yesterday at $607.98.
The company, which tells employees “don’t be evil” in its code of conduct, has cut its effective tax rate abroad more than its peers in the technology sector: Apple Inc., the maker of the iPhone; Microsoft, the largest software company; International Business Machines Corp., the biggest computer-services provider; and Oracle Corp., the second-biggest software company. Those companies reported rates that ranged between 4.5 percent and 25.8 percent for 2007 through 2009.
Google is “flying a banner of doing no evil, and then they’re perpetrating evil under our noses,” said Abraham J. Briloff, a professor emeritus of accounting at Baruch College in New York who has examined Google’s tax disclosures.
“Who is it that paid for the underlying concept on which they built these billions of dollars of revenues?” Briloff said. “It was paid for by the United States citizenry.”
Taxpayer Funding
The U.S. National Science Foundation funded the mid-1990s research at Stanford University that helped lead to Google’s creation. Taxpayers also paid for a scholarship for the company’s cofounder, Sergey Brin, while he worked on that research. Google now has a stock market value of $194.2 billion.
Google’s annual reports from 2007 to 2009 ascribe a cumulative $3.1 billion tax savings to the “foreign rate differential.” Such entries typically describe how much tax U.S. companies save from profits earned overseas.
In February, the Obama administration proposed measures to curb shifting profits offshore, part of a package intended to raise $12 billion a year over the coming decade. While the key proposals largely haven’t advanced in Congress, the IRS said in April it would devote additional agents and lawyers to focus on five large transfer pricing arrangements.
Arm’s Length
Income shifting commonly begins when companies like Google sell or license the foreign rights to intellectual property developed in the U.S. to a subsidiary in a low-tax country. That means foreign profits based on the technology get attributed to the offshore unit, not the parent. Under U.S. tax rules, subsidiaries must pay “arm’s length” prices for the rights -- or the amount an unrelated company would.
Because the payments contribute to taxable income, the parent company has an incentive to set them as low as possible. Cutting the foreign subsidiary’s expenses effectively shifts profits overseas.
After three years of negotiations, Google received approval from the IRS in 2006 for its transfer pricing arrangement, according to filings with the Securities and Exchange Commission.
The IRS gave its consent in a secret pact known as an advanced pricing agreement. Google wouldn’t discuss the price set under the arrangement, which licensed the rights to its search and advertising technology and other intangible property for Europe, the Middle East and Africa to a unit called Google Ireland Holdings, according to a person familiar with the matter.
Dublin Office
That licensee in turn owns Google Ireland Limited, which employs almost 2,000 people in a silvery glass office building in central Dublin, a block from the city’s Grand Canal. The Dublin subsidiary sells advertising globally and was credited by Google with 88 percent of its $12.5 billion in non-U.S. sales in 2009.
Allocating the revenue to Ireland helps Google avoid income taxes in the U.S., where most of its technology was developed. The arrangement also reduces the company’s liabilities in relatively high-tax European countries where many of its customers are located.
The profits don’t stay with the Dublin subsidiary, which reported pretax income of less than 1 percent of sales in 2008, according to Irish records. That’s largely because it paid $5.4 billion in royalties to Google Ireland Holdings, which has its “effective centre of management” in Bermuda, according to company filings.
Law Firm Directors
This Bermuda-managed entity is owned by a pair of Google subsidiaries that list as their directors two attorneys and a manager at Conyers Dill & Pearman, a Hamilton, Bermuda law firm.
Tax planners call such an arrangement a Double Irish because it relies on two Irish companies. One pays royalties to use intellectual property, generating expenses that reduce Irish taxable income. The second collects the royalties in a tax haven like Bermuda, avoiding Irish taxes.
To steer clear of an Irish withholding tax, payments from Google’s Dublin unit don’t go directly to Bermuda. A brief detour to the Netherlands avoids that liability, because Irish tax law exempts certain royalties to companies in other EU- member nations. The fees first go to a Dutch unit, Google Netherlands Holdings B.V., which pays out about 99.8 percent of what it collects to the Bermuda entity, company filings show. The Amsterdam-based subsidiary lists no employees.
The Dutch Sandwich
Inserting the Netherlands stopover between two other units gives rise to the “Dutch Sandwich” nickname.
“The sandwich leaves no tax behind to taste,” said Murphy of Tax Research LLP.
Microsoft, based in Redmond, Washington, has also used a Double Irish structure, according to company filings overseas. Forest Laboratories Inc., maker of the antidepressant Lexapro, does as well, Bloomberg News reported in May. The New York-based drug manufacturer claims that most of its profits are earned overseas even though its sales are almost entirely in the U.S. Forest later disclosed that its transfer pricing was being audited by the IRS.
Since the 1960s, Ireland has pursued a strategy of offering tax incentives to attract multinationals. A lesser-appreciated aspect of Ireland’s appeal is that it allows companies to shift income out of the country with minimal tax consequences, said Jim Stewart, a senior lecturer in finance at Trinity College’s school of business in Dublin.
Getting Profits Out
“You accumulate profits within Ireland, but then you get them out of the country relatively easily,” Stewart said. “And you do it by using Bermuda.”
Eoin Dorgan, a spokesman for the Irish Department of Finance, declined to comment on Google’s strategies specifically. “Ireland always seeks to ensure that the profits charged in Ireland fully reflect the functions, assets and risks located here by multinational groups,” he said.
Once Google’s non-U.S. profits hit Bermuda, they become difficult to track. The subsidiary managed there changed its legal form of organization in 2006 to become a so-called unlimited liability company. Under Irish rules, that means it’s not required todisclose such financial information as income statements or balance sheets.
“Sticking an unlimited company in the group structure has become more common in Ireland, largely to prevent disclosure,” Stewart said.
Deferred Indefinitely
Technically, multinationals that shift profits overseas are deferring U.S. income taxes, not avoiding them permanently. The deferral lasts until companies decide to bring the earnings back to the U.S. In practice, they rarely repatriate significant portions, thus avoiding the taxes indefinitely, said Michelle Hanlon, an accounting professor at the Massachusetts Institute of Technology.
U.S. policy makers, meanwhile, have taken halting steps to address concerns about transfer pricing. In 2009, the Treasury Department proposed levying taxes on certain payments between U.S. companies’ foreign subsidiaries.
Treasury officials, who estimated the policy change would raise $86.5 billion in new revenue over the next decade, dropped it after Congress and Treasury were lobbied by companies, including manufacturing and media conglomerate General Electric Co., health-product maker Johnson & Johnson and coffee giant Starbucks Corp., according to federal disclosures compiled by the non-profit Center for Responsive Politics.
Administration Concerned
While the administration “remains concerned” about potential abuses, officials decided “to defer consideration of how to reform those rules until they can be studied more broadly,” said Sandra Salstrom, a Treasury spokeswoman. The White House still proposes to tax excessive profits of offshore subsidiaries as a curb on income shifting, she said.
The rules for transfer pricing should be replaced with a system that allocates profits among countries the way most U.S. states with a corporate income tax do -- based on such aspects as sales or number of employees in each jurisdiction, said Reuven S. Avi-Yonah, director of the international tax program at the University of Michigan Law School.
“The system is broken and I think it needs to be scrapped,” said Avi-Yonah, also a special counsel at law firm Steptoe & Johnson LLP in Washington D.C. “Companies are getting away with murder.”
To contact the reporter on this story: Jesse Drucker in New York at jdrucker4@bloomberg.net.
To contact the editor responsible for this story: Gary Putka at gputka@bloomberg.net.
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インターネット事業と課税

2014-02-17 13:46:53 | 国際税務問題

木村国際税務研究所

□問題の所在

http://www16.ocn.ne.jp/~zeek3333/internetkazei.html

米国のインターネット通販大手「アマゾン・コム」(本社米国シアトル)の関連会社、アマゾン・コム・インターナショナル・セールス社(本社米国シアトル)が、東京国税局(外国法人部門)の税務調査を受け、日本国内の事業をめぐり、2005年(平成17年)12月までの3年間について、140億円前後の追徴課税処分を受けていたことが共同通信の記事(2009/07/05)でわかりました。

アマゾン側は法人所得決定処分を不服として異議申し立てを行い、審理に先立ち、日米租税条約による米国歳入庁と2国間協議を申請したというものです。

1.インターネット・クラウド社会とは(グーグル課税)

情報社会(IT)が社会に及ぼす影響を考えるうえで絶対におさえておかなければならないことがあります。インテル創業者、ゴートン・ムーアが1965年に提唱した「ムーアの法則」です。IT産業は40年たった今もこのムーアの法則に相変わらず支配され続けており、これから先もかなり長い間、支配され続けるだろうということです。(『ウエブ進化論―本当の大変化はこれから始まる』(梅田望夫 ちくま新書 2006)

ムーアの法則とは、「半導体性能が1年半で2倍のスピードで増加することからその値段が劇的に下がっていく」、いわゆるチープ革命を指しています。

第一次インターネットバブルの崩壊の時代(2000年春)には何も変化が行らなかったように見えましたが、情報が氾濫し、玉石混交だったネット社会の中から秀逸な情報をみつける検索技術(WEB検索)、あるいは万人のニーズは万様なので、そのニーズに合った情報をコンピュータの力で提供する技法(ネットサーフィン)なども開発されてきましを た。

これは本屋の店先に陳列されているものの中から目的物を探すという現実社会から、インターネットの検索を通じて、世界本屋(そこには数百万冊が用意されている)から書籍をダウンロードするという行動に変化していくことを示しています。印刷業、著作業、出版社、流通業、テナント、交通システムそしてコンピュータ産業自身も整理淘汰されていくわけです。

複雑系経済学の研究家、ブライアン・アーサーという人がおります。その人が言うには(1)われわれが想像もしなかった完全に新しい産業が勃興する。(2)IT技術革新は18世紀の産業革命をしのぐ強烈な革新であるということです。

情報ハイフエイ構想が内外で叫ばれています。「ITインフラ」といわれる現象です。ITインフラは光ファイバーの普及で情報の伝達スピードを飛躍的に速くし、だれにでも届くように末端をチープに提供するというものですが、実際にはITインフラばかりが拡大したのではなく、「Iインフラ」が飛躍的に拡大しているのです。Iインフラとは情報そのものの生産、加工、抽出を行う「情報発電所」の建設です。その情報発電所は今までは、私たちのパソコン上にも存在し、細々と発電していたのですが、今ではITインフラの向こう側、クラウドの世界に存在するようになったのです。それがクラウド社会と称するものです。

具体的に見てみましょう。

世界的IT企業といわれるグーグル社は実はIT企業ではなく、I企業だったのです。グーグル社は先進コンピュータソフトウエアメーカー(たとえばマイクロソフト社)や世界規模情報小売業(たとえばアマゾンン、楽天)などのビジネスモデルを展開するIT企業を超えて、情報そのものを生産・加工・抽出する技術を開発していきます。シリコンバレーにある巨大な施設で数万台の小型コンピュータを使い、情報の超集中、超分散を繰り返しているのです。

2.Amazon課税

Amazon.com創設者・CEO ジェフ・ベゾス

1995年、アメリカ・シアトルで現CEO のジェフ・ベゾスがAmazonを設立し、当時黎明期にあったインターネットでの物品販売をいち早く開始しました。現在ではアメリカのほか、カナダ、イギリス、日本、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、中国の9ヵ国に開設しています。全世界での売り上げは、合計481億ドル(2011年)を超え、インターネット通販のグローバルカンパニーとして多くのお客様に支持されています。Amazon では「Day One」という言葉がよく使われます。そこには毎日が常に新しい1日であるという意識を持ち、新しいことに挑戦していこうという精神が込められています。Amazon は、これからも世界中の皆様にご利用いただけるよう、常に「Day One」の精神で新しいことにチャレンジしていきます。

アメリカ、カナダ、イギリス、日本、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、中国、インド、ブラジルの世界11ヵ国に展開中です。

日本では、Amazon.co.jpは現在、東京、札幌カスタマーセンター、仙台カスタマーセンターのほか、市川、八千代、川越、常滑、堺、大東などのFC(フルフィルメントセンターの略、倉庫および配送センター機能)を拠点にビジネスを展開しています。 (2013年2月1日現在)

 PE課税―国際インターネット事業者の場合

世界の本屋、アマゾンンは米国法人です。いわゆるITビジネスモデルは米国で開発しました。「地球上で一番早く、クライアントに本を届ける」がモットーです。日本へは書籍を流通させる倉庫(デイストリ ビューション・センター)を作り、日本法人の配送業者に運営させます。書籍を内外の本屋から仕入(輸入)れて消費者に売却し、手数料を取る現地問屋(これは本屋さんでも卸売業でもありません)も作りました。メンテナンス・返品・クレーム処理などに対応する日本法人に委託します。

そして、肝心のアマゾンの日本支店みたいな拠点はこの国に置かないことにします。電子社会では、ヒト・モノ・カネを投資国に投入しなくても、消費者と本を売る者との契約は通信(インターネット・サーバー)を経由して商売ができるからです。むろん、情報収集や宣伝広告、系列社員訓練などは日本で行われますが、それらは「補助的業務」とみられ、日本で所得が発生する事業行為ではありません。物流倉庫にしてもアマゾンの本店のため、本の品ぞろいをすることは本店事業を補完する「内部取引」とみられ、内部取引から「国内源泉所得」は発生しません。

こういう風にビジネスモデルを構築する結果、日本ではアマゾンの尻尾(日本で儲かった利益)が見えないステルス(Stealth)なPE「恒久的施設ゼロ作戦」構想が完成しました。

□アマゾンの世界展開―機能集中と機能分散

アマゾン・コム社の2008年度の年次報告書などによると、課税された関連会社は「アマゾンドットコム・インターナショナル・セールス」(本社・米シアトル・外国法人)で、同社は販売問屋業務を「アマゾン・ジャパン」(日本法人・東京都渋谷区)に、物流業務を「アマゾンジャパン・ロジスティク」(日本法人(千葉県市川市)に委託し、それぞれ手数料を払っていますが、顧客(消費者)との販売契約や商品仕入契約はセールス社と直接行なっており、日本では支店等(PE)をおいて営業活動をしていないとされています。

 

 

 

 

 

 

 

3.IT・クラウド社会の国際課税の在り方

 

(1)電子商取引の発展と税制とのかかわり

   
テキスト ボックス: 経済取引への影響テキスト ボックス: 税の側面テキスト ボックス: 流れ
   
出所:『電子取引と国際税制』(国際課税京都フォーラム世話人会代表 金子宏・立命館大学社会システム研究所所長・中村雅秀編・清文社 2002)資料4.「電子商取引:課税の基本的枠組」(平成10年10月OECD租税委員会報告書)24p.

インターネット社会、クラウド社会、超クラウド社会と進展していく今日、各国が独自の租税制度・徴収制度・調査執行をしていた時代はおわりました。サイバーな社会の反対側、われわれが住む現実の社会にも変革の波が押し寄せているのです。もっとも、国際課税の場面では、20世紀的発想の国際協調という意味合いのOECDの取り組みがありました。そこでは二国間の租税条約、あるいは多国間の租税協定や徴収共助などのツールを利用して「二重課税の調整」、「自国民の権益保護」、「相互に税の特典の供与」、「相互情報交換」、「特定の徴収共助」、「共同研究」など時局に対応した各改定・創設は行われてはいました。最近では、タックスヘイブン対策、あるいは世界IT企業への課税攻勢として多くの宣言がなされているのは皆さんの知るところです。

ところで国際課税とはなんでしょうか?今までは「国境を超える二国間の取引」のことを指していたのですが、今では「国境および相手国を意識しない超空間での取引」も含まれることになりました。

(a)国際課税の原点―進出企業の利得に法人所税を課税する場合

進出企業の利得に課税する法人所得税法は納税者である「事業体を認識」し、「その事業が国内で行われているか」、あるいは「国内で発生している所得に実質的に関連しているか」によります。

前者(PE+国内源泉所得)は日本はじめOECD各国が採用している「PEなければ課税せず」の元となる考え方です(日本はこれを「総合主義型」といい、OECD諸国はPEに帰属したものだけに課税するので「帰属主義型」といいます)。後者の考え方は、「実質関連原則」といわれPEの有無で判断するのではなく、「国内で儲かっていて、それが国内にあるなんらかの組織体(固定的施設)と名目的でなく実際に(effectively)、結びつける関連性(connectivity)があれば(強行的に所得をその施設に配分して)連邦税を課す」というもので米国でのみ採用されています。→帰属主義型とは区別されています。→日本はこの考え方で課税することはできません。

①事業体の認識

事業体を認識されたくない多国籍企業はそれをクリアすべく「ハイブリッドな事業体」を地球上にばらまくようになりました。

超空間取引では、ITインフラを駆使して地球上の有利な地点(たとえばタックスヘイブン所在のSPC)のサーバー拠点から取引(売買)を発信します。製品(情報)の製造(加工)はアイルランドの現地子会社へ、ノウハウのグループ間提供サービスはバミューダSPCへ、決済・運用などの金融取引はオランダBVへ、アジア流通はシンガポールPLCへというグループ企業の分散が進むサプライチェーン構想・・といった業種が2000年ごろから出現し始めました。そして本来のビジネスモデルを開発したオリジネーターは姿を隠していきます。課税されてはたまりませんから。

②事業の展開場所

「PEなければ課税せず」型の税制の下では、物理的ツール(ヒト・モノ・カネ)を使う事業が進出国内で展開(carry,ずっと保持していく)されていなければなりません。そしてIT産業の中枢、サーバー(記憶装置)の所在地はPEと認定されます。→WEB運用者やポータルサイト、プロバイダーは今のところ、(代理人)PEとはなりません。

国境を越えて事業活動、投資活動を行う場合に相手国にどのような事業体、拠点を置くか、税の節減を考えた場合の「拠点づくり」が租税戦略(タックスプラン)の中心課題でした。

多様な事業体(Diversified Entity)の中からその国で有利(所得に課税されず、あるいは本国送金に課税されない)な法的組織を選び、もっとも効率的な拠点をその国に置く(あるいは置かない)ことが拠点づくりだったのです。

○多様な事業体(DE)の例

日本における拠点(外国→日本)

米国における拠点(日本→米国)

内国法人(外資系・合同会社)

Corporation(会社)、LLC、LPS

外国法人(支店・店舗・代理店・問屋)

branch(支店)、Joint-Venture(共同事業)、連絡事務所、代理店

外国の任意組合に準ずる組織経由

パススルーを選択したパートナーシップ

外国の匿名組合に準ずる組織経由

ペイスルー型投資スキーム

外国の信託投資ファンド経由

信託財団(パススルー証券、ペイスルー証券)

非居住者預金(JOM)経由事業者(金融取引業者など)

IBF(オフショア勘定)経由事業者

連絡事務所(リエゾン・研究所・専用倉庫、補助的業務)

連絡事務所

IT企業のサーバーの所在地

不明

(b)国際課税の原点―消費税を課税する場合

日本の消費税法で云えば、国内において譲渡した製品、貨物、サービスは課税事業者が消費者から受領して国へ払うことが義務付けられ、その一方、国内で仕入れた製品貨物・サービスの消費税を購入先へ支払うものと規定されています。モノ・サービスの輸入については、引取り時内国消費税を払い、輸出では免税となります。また、国外における譲渡・役務の提供は不課税となります。電子的コンテンツをインターネット経由で外国からダウンロードした場合にもサービスを輸入して提供を受けていることになるので引取り時課税が適用される余地はありますが、実際に通関はしておらず、国際郵便局も経由していないため把握できません。→対価が1万円以下の輸入郵便物(サービス)は関税施行令で関税を含め消費税が免除されています。

 

5.「国境、相手国政府を意識しない超空間での取引」への課税

ところが、物理的拠点を必要としないIT・クラウド社会が出現すると「拠点課税」の基礎が揺るぎ始めます。モノ・サービスの契約・提供・アフターサービスはインターネットを経由して地球上の最も有利な場所でコントロールする、消費者国へは物理的拠点を置かない、BtoC取引(ビジネス2コンシューマー)が可能となったためです。課税される国に物理的拠点を置かない「ゼロPF作戦」が展開されていきます。

超空間取引はどうなっているのでしょうか。実は超空間取引に対する国際課税のルールといったものは法制化されていません。しかし、IT企業が特にアメリカのIT企業がインフラを駆使して好き勝手な場所から商売を始めだすと消費者国の政府がおかしさを感じ始めます。企業ビジネスの利益の根源(源泉)はキャッシュフロー(課税ベース)が流出(浸食)した消費者国にあるという考え方です。OECD参加国は、初めは、おそるおそる「ITサーバーのある場所」に電子プロダクツの利益を課税するといっていたのですがそれでは追いつかなくなり、最近ではフランスのサルコジ元大統領が取引高に着目した販売税構想をぶち上げ、ドイツはキャッシュフローに代替されるプログラムの流量を高速道路を利用する運転手からのゲートインカム(通行税)構想を述べるなどしています。

IT企業側は相手国政府に捕捉されない宇宙空間からステルスPE機を使い、消費者国の超空間の戦場で政府軍と交戦状態にある?といったところでしょうか。

(a)ゼロPE作戦(ステルスPE)

2009年7月、「本社機能の一部(日米租税条約で定める恒久的施設にあたるもの)が日本にある」として東京国税局から140億円前後の追徴課税処分されたことが報じられました。アマゾンン側は「米国に納税している」と主張し日本とアメリカとの2国間協議を申請。アマゾンンジャパンも「課税は不適切」とし、日本での納税義務は無いという立場でした。 2010年9月、日米当局協議の結果、日本の国税庁の主張は退けられ、国税庁は銀行供託金の大部分を解放しました。つまり国税側が負けたのです。

(b) 機能の分散とアウトソーシング

  新聞記事を読んでみて、アマゾン・ジャパンの日本語サイトから日本の書籍を注文しても、カードの支払いは外貨(米ドル)で外国法人名にされています。メンテナンスについても一考されています。WEBから指示された電話先(たぶん、国内の電話番号)でオペレーターは出ますが、居場所は特定されません。簡単な会話の後、オペレーターは故障品を、「後日お送りするEメールに記載されている住所へお送りください」とのことです。その送り先は国内のどこかですが「修理センター」となっており、特定の会社名はありません。「私たちは地球上で一番早くサービスを実行します。」の文字。

(c)ゼロPE作戦 

PE認定すると、対日本売上から対応する経費を控除することになります。海の向こうの経費(今回の場合は、膨大なシステム構築等の費用のうち、日本対応分)はなかなか認められないので、勢い売上にマージン率(60%)をかけた金額が所得として認定される傾向にあり、その点が、移転価格課税に比べて厳しい課税につながります。
 今回の場合、販売事業がインターネット経由ということなので、OECD等の議論に基づけば、国内に注文受け付けのサーバーがあり、それをPEに認定するというのが普通ですが、アマゾンほどの会社が、そんな「へま」をしないと思われます。インターネットによる販売業(電子商、B2B)で、注文を受ける企業の店舗・事業所・ヒトが国内になければ、商品の譲渡契約の相手先(セールス社)のサーバーに到達した瞬間に、サーバーの実在場所の国に課税権が生じると考えられています。→法律により規定されているものではありません。PEの認定のための便法です。→サーバーの所在場所にPEを認定するのであれば、この場合は多分、国外のどこかにあるので課税はできません。

そこで、新聞記事のように、「委託された問屋法人が実質的に支店機能を果たしていた」と認定したようです。

(d)代理人PE

この「実質的に」と云う言葉を課税の根拠(課税要件)にすることはできないので、多分「実質的に」は、現地問屋をセールス社の日本代理人PEに認定したのではないでしょうか。そこで代理人PEとは何を言うのかが大事になります。

現地問屋(内国法人)の株主がアマゾン本社であったとしてもそれはグループ企業の一員であるというだけで、その本人事業の代理をしていることにはなりません。代理人の認定にはルールがあって、とても複雑な構成になっています。

先ず、日本についてですが、「常習代理人」が代理人PEとされ、「独立代理人」はPEとされません。

 たとえば、通信衛星事業をやっている国際通信社(外国法人)が、日本の企業からの通信を通信衛星が日本上空を通過している間に受信し、他の外国に転送する商売をしています。国際通信社の日本現地子会社に、通信サービスの受託契約書を作らせ(日本で作成し)、サービス・フィーも日本の銀行で受け取ったとします。その場合でも、『日本現地子会社は、親会社のため、「注文取得」代理業(問屋業は注文取得業といえます)をしているのであって、国際通信社の通信サービスを代行しているわけではありません。すなわち親会社の「業務」を本人に代わって代理営業する日本PEではありません』と突っぱねることは可能です。→問題は「課税すべき企業の利得がなにからできているのか」(国内源泉所得の特定)、「そのPEはその所得の帰属者か」(OECD型租税条約国)、が特定できないために起こります。→米国との間では「実質関連原則」がからみもっと複雑になります。→日本の租税条約優先主義や米国の内国法優先の考え方など。

○「常習代理人」

法人税法施行令186条1項は「常習代理人」の規定を置き、「外国法人のために契約を締結する権限(その日本企業が有し)、かつ、これを常習的に行使(するとき)米国親会社との間に、代理人PEが成立する」としています。そして、法人税基本通達(20-2-6)は「常習性」がある代理人はPEとなり、「常習的でない単発の権限行使」は代理人PEにはならないとしています。常習代理人から除かれる例示としてIATA(国際航空運送協会)の傘下にある互いの航空会社のために互いに相手方のため運送の契約を顧客との間で締結する権限を行使している状況は「常習的に行使していることにならない」としています。→そのほか、総合商社が外国企業のため総代理店を引き受け、特定商品を輸入する場合や不特定多数のため、輸入を代行する問屋業なども「常習的に行使していない」とされます。→したがって、国内では、常習的とは「継続・反復して特定の者のために契約権を行使する場合」をいうものと考えられます。一方、租税条約では、常習代理人に似た「従属代理人」という概念があります。「もっぱら又は主として一つの外国法人のために、常習的に、その事業に関し契約を締結するための「注文の取得、協議その他の行為のうち、重要な部分をする者」を従属代理人とし、代理人PEとするというものです。→この場合、租税条約によっては「従属代理人」(専属代理)の反対側「独立代理人」(商社・問屋)の概念を定義しているものもあります。独立代理人は本人から「経営上の独立」、「経済上の独立」テストを受け、それをクリアした場合に独立代理人とされます。・・・というのが西洋流の考え方です。

○大成損害保険会社事件(米国租税裁判所)

  米国租税裁判所「大成損害保険会社事件」:①本人から法律的にも経済上も独立している場合、独立代理人となる。②本人に代わって第三者が代理業務を行う場合に比べて、その代理人の場合は異常性(通常の方法以外の方法)が認められ、「本人性」が強いので従属代理人になる。③形式的に契約締結権限が結ばれており、事実としても本人のための代理権を行使している場合、専属的であり、従属代理人となる。→一応OECDのコメンタリーと同じ判定。→我が国でも租税条約の締結がある国との課税交渉では、この独立代理人(その国でPE課税されない)の意義・実態について争われます。→平成20年度改正で法人税法にとりこまれています。

(e) 棚卸資産の譲渡契約

外国法人課税の上で、事業の所得(一号所得、物品・サービスの譲渡等による所得)が国内源泉所得に該当するためには、「譲渡に係る重要な契約(商談)が国内において事業を行う者(の社員)との間で締結されたか(合意に達したか)」にあります。これは対面型(ヒトとヒト)の契約を前提にしていますが、インターネット上の売買の商談は人を介して成立するのではなく、カタログを見て指定された電話先に買い申し込みをやっているようなものです。ヒトの意思を介する契約の場合は片一方が「ヒト」、もう一方が「機械」ということで成立していますが、どちら側にもヒトがいないケース、例えば株式のプログラム売買、どちらもプログラムが判断して株式の売り買いを行い、売買契約書はバックオフィスに翌日届くなんていうケースでは、売買契約の場所及び意思決定を重視する現状の外国法人課税税制はワークしていません。

株式売却益は、どの国で注文があり、どの国で売却したか、あるいはその国のトレーダー(ディーラー)が仕入れから売り上げまで関与したか、などのファクターで課税する移転価格的課税手法が外国法人日本支店に適用されています。

実務上は、株式の仕入地に資金コストを負わせ、売却地にキャッシュインさせますが、利益の配分は、投資会社の本店がある国で、グローバルブックをつけていて、各国のディーラー人件費の割合とか、資金負担の割合とかで世界拠点に割り振る「グローバル・トレーデング」手法をとっています。→譲渡損益の配分ファクターには様々な理論があって、移転価格課税、外法課税でもめる要素でありますが、大抵、本国に有利にシステムが組まれています。

○サーバーはPEか?

OECDの電子商取引(電子出版)の課税ルールの「PEの認定」については、業者がサーバーにアプロードしたことにより貯蔵され、消費者がインターネット上で「ワンクリック」して購入意思を示し、それがサーバーに達してサーバーから消費者の末端にダウンロードされた時点で契約が終了するという過程(誰も見たものはいませんが)から、サーバーのある場所で課税するという理論構成をとっています。ですから、頭のいいIT企業は、サーバーをタックスヘイブンにおいて、そこで契約が成立したと考えることにしているのです。

○ドメインヘイブン

「.tv」というドメインがあります。ツバルはオセアニアにある国家で、海抜が最高でも5mと低いため、海面が上昇したり地盤沈下がおこったりすれば、国の存在そのものが脅かれることになります。それで「.tv」という魅力的なドメイン(インターネット、サーバーの所在地国を示すアドレス:世界のドメイン:http://www.bio.nagoya-.ac.jp/~SugashimaMBL/harada/1237_toplevel.html)を世界に提供して、資金調達しています。つまり、インターネット・サーバーの避難地、タックスヘイブンだということです。→さすがにアメリカはこのような租税回避を許していないようですが日本ではどうなんでしょうか?→もし楽天が電子商売だけ別にしてツバルに引っ越してしまったら?津波対策もしっかりして・・・。このようにヒト・モノ・カネを物的場所を介さないサイバー空間の事業を今迄のように「PE」の事実認定と「PEなければ課税せず」の原則で課税を律していこうとする法制はそろそろ曲がり角に来ているといえそうです。http://atlas.cdx.jp/nations/oceania/image/ftuvalu.gif(ツバル国旗、ツバルはトップレベルドメインとして割り振られた “.tv” を米国カリフォルニア州のdotTV社に5000万ドルで売却。この売却益を元に、2000年に国連加盟を果たした。)

 

6. 移転価格課税との関係

資本系列50%以上の国外関連者間(外国親会社vs日本現地法人)の取引で、物流業務や問屋、バックオフィス業務の取り分が独立企業間価格(ALP)に比べ小さいというだけであれば、コミショネア問題(問屋としての業務サービスに対するコミッション料率はいくらが適正なALPであるか)として移転価格課税することになります。しかし、日本PEが存在しなければ国外関連者間取引がみつかりません。仮にセールス社の日本拠点が存在すると仮定すると、セールス社本店とセールス社日本支店の利益配分は、移転価格税制ではなく、外法課税のルールで利益(480)を分配することができます。→しかし、480が全部、セールス社の利益としてIRSに申告されているとは思われません。アマゾン社の世界戦略では想像ですが、バミューダ知財会社、オランダBV、アマゾン・グループの総本山(アマゾン・コム?)にも分散されているのではないでしょうか?

7.外国法人課税の制度(法人税)

法人税法第3編138条以下は外国法人の「法人税の課税標準と税率」、「所得税の源泉徴収の有無」、「確定申告義務」などが書かれています。

 

(1)内国法人と外国法人の違い

内国法人は内外の法律に基づいて設立した法人で「日本に本店の住所を定めて登記所に登録した」法人。

外国法人は内外の法律に基づいて設立した法人で外国に本店の住所地があり、「日本に支店の住所を定めて登記所に登録した」法人。

(2)外国法人の納税義務

 

内国法人は無制限納税義務者として「全世界の所得」に対して法人税の納税義務があります(法法4①)が、外国法人は制限納税義務者として、「国内源泉所得」に係る所得のみ法人税の納税義務があります(法法4②)。外国法人の課税概念は図1のとおりです。

 

図1

 

 

 

 

 

 

 

(3)恒久的施設

外国法人の日本における活動拠点を「恒久的施設(PE)」といいます。次の三種類に区分され、恒久的施設のない外国法人を四号外国法人といいます。

○ 恒久的施設の区分

一号該当外国法人

「支店PE」

国内に支店、工場その他事業を行う一定の場所で政令[1]で定めるものを有する外国法人

二号該当外国法人

「建設PE」

国内において建設、据付、組み立てその他の作業又はその作業の指揮監督の役務提供(「建設作業等」)を一年を超えて行う外国法人(前号に該当するものを除く。)

三号該当外国法人

「代理PE」

国内に自己のために契約を締結する権限のある者その他これに準ずる者で政令[2]で定めるもの(「代理人等」)を置く外国法人(第一号に該当する外国法人を除く。)

四号該当外国法人

「日本にPEなし」

前三号に掲げる外国法人以外の外国法人

 

(4)国内源泉所得

 

国内源泉所得は次の所得(対価)をいいます(法法138条各号)。

外国法人に課される法人税の課税標準及び法人の所得税の課税標準となる「国内源泉所得」はその種類により「源泉地決定ルール」や課税方法が異なるため、11の種類(一号から十一号)に分類されています。具体的には「事業所得」や「国内にある資産の所得」あるいは「不動産譲渡」・「不動産貸付」・「利子所得」・「配当所得」・「貸付利子」・「使用料」・「保険金」・「金融商品類似分配」・「賞金」・「匿名組合分配金」などです。各種所得の「ソース・ルール」はそれぞれ異なります。

○ 国内源泉所得

事業所得(一号所得)

国内において行う事業[3]の所得

国内にある資産の所得(一号所得)

国内にある資産の運用、保有[4]若しくは譲渡による所得[5](次号から11号までの所得に該当しないもの)[6]

その他国内に源泉がある所得(法令178所得)

その他その源泉が国内にある所得として政令で定めるもの[7]

人的役務提供事業所得(二号所得)

国内において行う人的役務の提供事業に係る対価[8]


不動産等の貸付対価(三号対価)

国内にある不動産等の貸付の対価


預金・社債等の利子の対価(四号対価)

内国法人の発行する債券利子等に係るもの


株式の配当等の対価(五号対価)

内国法人から受ける配当等に係るもの


貸付金等の利子等の対価(六号対価)

国内において業務を行う者に対する貸付利子で当該業務に係るもの[9]


工業所有権等の使用料等の対価(七号対価)

国内において業務を行う者から受ける工業所有権等に係る使用料等で当該業務に係るもの[10]


広告宣伝のための賞金の対価(八号対価)

国内における事業の広告宣伝等に係る賞金[11]


生命保険等の年金等の対価(九号対価)

国内にある営業所等を通じて契約した生命保険等の年金[12]


金融商品の給付補てん金、利息又は差益の対価(十号対価)

国内にある営業所等を通じて契約した金融類似商品等に係る給付補てん金、利息、又は差益


匿名組合契約等の利益分配の対価(十一号対価)

国内において事業を行う者に対する出資につき匿名組合契約等に基づいて受ける利益の分配[13]


 

(5)外国法人に係る法人税の課税標準

恒久的施設ごとの課税標準

外国法人に係る法人税の課税標準は「恒久的施設(PE)」の区分ごとに「国内源泉所得」に係る所得(対価)の金額が異なります。

各恒久的施設(PE)の法人税が課税される国内源泉所得の範囲は以下のように規定されています。

○ 恒久的施設と法人税が課される国内源泉所得との関係

一号PE

全ての国内源泉所得に法人税が課税されます。


二号PE

138条一号~三号の国内源泉所得のすべてと同四号~十一号の国内源泉所得のうち、建設PEに帰せられるものに対し法人税が課税されます。


三号PE

138条一号~三号の国内源泉所得のすべてと同四号~十一号の国内源泉所得のうち、代理PEに帰せられるものに対し法人税が課税されます。


PEのない外国法人

次のイ」とロ)に法人税が課されます。

イ)138条一号の国内にある資産の運用・保有、不動産の譲渡所得その他政令で定めるもの

ロ)138条二号~三号

 

○法人税基本通達の課税表

外国法人に対する法人税及び源泉徴収に係る所得税の課税関係の概要

 

(6)本支店間内部取引

日本側から外国へ投資、貸し付けなどを行うことをアウトバウンド(日本⇒外国)投資といいます。その反対に、外国から日本へ投資、貸し付けなどを行うことをインバウンド(外国⇒日本)投資といいます。右矢印: アウントバウンド

木村国際税務研究所

 

右矢印: インバウンド投資

ところが、内国法人(本店)と内国法人(外国支店)との金銭の受送金、サービスの提供などは内部取引(上の図の点線矢印)であるため、「取引」に入りません。このところが重要です。会計科目上は本店送金とか支店送金とか言われ、損益科目は発生しないのです。これには理由があります。法人税の課税所得は一法人の会計単位であらわされ、本支店勘定取引は決算の際、互いに消去されることから来ています。

 

□無形資産の移転・使用料と移転価格

 

□所得相応性基準

 

  米国では、1986年に無形資産取引に対する特別ルールである所得相応性基準というユニークな基準を導入し、当該問題に本格的に取り組んでいる。
 そこで、本研究では、この所得相応性基準について、まる1法令上の位置づけ、まる2無形資産取引形態別適用方法、まる3判例における取り扱い、まる4実務上の適用状況と課題という観点から分析を行った上で、同基準を日本に導入することの意義について考察することを目的とする。『[1]米国租税法上の無形資産の評価の実情と日本に対する示唆― 所得相応性基準の分析を中心として ―』http://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/49/asakawa/hajimeni.htm

 

 

 

8.消費税問題

○フロムロシア・ウイズゴールドフィンガー

ロシアは金(ゴールド)の委託販売を日本の商社(問屋)や流通業者(乙仲・配送・倉庫)に委託し、それぞれ手数料を払っていますが、販売業者(神田の丸丸貴金属)とロシアの契約は商社(問屋)に任せており、商品仕入契約は商社(問屋)とロシアが直接行っており、日本では支店等をおいて営業活動をしていないとされています。→じゃ~、商社はロシアのエージェントってわけにはいかないのか?KGBみたいな・・。そうです。商社が代理人かどうかは結構、議論されており、商社の業態は通常、多数の外国法人のため、日本総代理店などを務めており、それは問屋業である、一の外国法人のため「専属的」「常習的」「従属的」に代理をしていないので代理人PEとはならない・・と結論されています。→つまりロシア(公団)に法人税をかけられない。日本商社に法人税はかけられますが商社は手数料(一兆円×0.25%?=25億円)しか取っていない。ロシアの金の生産コストはたぶん1000円/グラム。それが日本では3000円/グラムで売れるので一兆円の仕入れで三兆円の売上、二兆円はもうかるハズ→これが申告されない!えらいこっちゃ→外国法人部門がんばってよ!→税務署:「でも象の尻尾捕まえて全体ゾウなんてネ、法律変えてくださいヨ、たとえばツウインビー課税とか」「流通、決済金額に薄く、投資額にも薄く・・なんて具合に」

 

□ IT企業と消費税課税

消費税についての本件の課税関係について考えてみます。通常、有形物の輸入商品は輸入業者である者(アマゾン・ロジステック社)が輸入貨物の引取り時、引取り消費税を支払っています。とこ ろが、電子ブック、音楽、映像、パソコン応用ソフトなどの無形のコンテンツは、貨物(有形物)の輸入という概念がないため、消費税を課税するチャンスを失います。つまり、内国消費税は免税となるのですが、アマゾン社などと競合する国内のコンテンツ販売会社はそれでは勝負になりません。

輸入貨物

輸入貨物

電子情報のダウンロード購入(国内業者)

電子情報のダウンロード購入(外国業者

消費場所

日本国内

日本国内

日本国内

消費税の課税先

通関時、引取業者

販売時、国内業者

無税

 








 

□外国企業に消費税を課すことが出来ないのは何故か

日本では、消費税は国内での取引が課税の対象となり、国外で行われる取引は課税の対象ではない。サービス提供企業が国内にあり、かつ、国内にあるデータ配信拠点から、音楽や電子書籍、パソコンのソフトウェアなどを配信しているのであれば国内取引として課税される。しかし、外国企業が、海外にデータ配信拠点を設置してサービスを提供する場合には、国外取引とみなされ課税を行うことが出来ない。

そのため、外国企業は消費税を設定せずに、より安く商品価格を設定することも可能となる。

例えば、1,000円の電子書籍を販売する場合、紀伊国屋書店などの国内の電子書籍ストアでは、消費税込みで1,050円で販売する。しかし、日本のAmazonでは、Kindle版の電子書籍を消費税を抜いて1,000円で販売している。これは、「Amazon.co.jp」というサイトがAmazon.com Int’l Sales, Inc.およびAmazon Services International, Incという海外企業による運用であり、課税対象とはならないためである。

これでは国内企業はたまったものではない。楽天は電子書籍に参入する際に、Koboというカナダの子会社による販売とし、データ配信用のサーバもカナダに置く方法をとった。Googleのインターネット広告も同様に、サービス提供企業と、配信拠点を海外に置いているため、外国企業との取引とみなされる。

□サーバーを国外に持っていけば消費税は課税されないか→No.

10.政府の対策

□グローバル企業への国際的な課税への取り組み

このような状態を打開するため、国際的な枠組み作りが始まっている。経済協力開発機構(OECD)は、電子商取引への課税強化などを明記した行動計画を、7月19日に発表。この行動計画には、インターネット上の電子商取引に限らず、なるべく税金が安い国に拠点を置くことで節税を行なっているグローバル企業の「課税逃れ」を防ぐための内容も盛り込まれた。7月20日に開かれた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも、OECDの課税ルールの抜本的見直し案を支持している。

EUでは付加価値税(VAT)を導入し、EU外からのデータ配信にも、サービス提供企業が所在する国ではなく、消費者がいる国において課税されるルールを採用している。EU外の事業者が、EU内の消費者に対してサービスを提供する場合は、EU内に事業所等を設立するかEU加盟国のいずれかの国に事業者として登録し、その国に消費税を一括納付するという仕組みとなっている。

日本においては、今後、政府の税制調査会において、グローバル企業へのインターネットでのデータ配信に対する課税について議論すると報じられている。

ITmediaの記事によると、ICT総研の分析では、電子書籍の市場規模は、12年度の729億円から13年度は1010億円に成長すると予測される。また、電通の調査によると、インターネット広告についても、日本の市場だけでも2012年度は8,680億円となり、13年には1兆円突破も視野に入っているという。

今後ますます伸びると期待される分野だけに、課税が出来ないのは問題であるとも考えられる。日本でも付加価値税などの仕組みを導入するべきではないだろうか。たとえ消費者が負担するものであっても・・。

 

 

 

11.日本支店を活用する租税回避

日本にPEを置かないで税を逃れるケースとは反対に、日本でヒト、店舗などのPE活動がないのにわざわざ「ペーパーPE」を置いて悪さを働く者もいる。

 

(1)では、次の場合はどうなりますか?

Q:アメリカ、デラウエア州法務局に日本法人(A社)が株主となって登記したLLC(B社)の日本支店登記を日本の登記所に申請して認められた場合は、米国法人(B社)の日本支店と認められますか。

A:デラウエアでLLCとして登記が認められ、日本でもその認証によって、外国法人の日本支店となります。⇒ただし、そのLLCが日本の税務調査でLLP(組合みたいなもの)と認定される場合はB社の日本支店はA社そのもの(すなわち同一の内国法人)とみなされます。

(2)では、次の場合はどうなりますか?

  Q:アメリカ企業(C社)が日本に有限会社(D社)を設立しており、その資産負債をアメリカ企業の日本支店(C社の日本支店)へ営業譲渡した場合のキャピタル・ゲイン・ロスの課税はどうなりますか。

A:日本には平成13年度から組織再編税制が導入されています。百%の親子会社(いずれも内国法人)間の株式譲渡・資産評価はある一定条件がととのえば、株式・資産の譲渡が簿価で行われたものとして、譲渡損益を認識しません。D社株式の売買・資産譲渡先が外国子会社の日本支店である場合もある一定の条件の下にキャピタル・ゲイン・ロスを認識しないことができます。

外国法人の日本支店と認められて登記


宝の島々(TREASURE ISLANDs) 木村国際税務研究所訳

2014-02-10 13:11:18 | 国際税務問題

宝の島々
(TREASURE ISLANDS)
ニコラス・シャクソンは『毒された井戸』の著者である。:アフリカの石油をめぐるダーティな政治体制の物語、王立国際問題研究所(チャザム・ハウス)の設立委員、フィナンシャルタイム誌に定期寄稿する実務経験ジャーナリスト。
エコノミストのほか多数のジャンルをカバーする。

目次

ペーパーバック・エデションに寄せて
グローバリズムの値段としては受け入れがたいね、そうじゃないかい?

プロロ-グ
いかに植民地主義は正面玄関から出て行き、横の窓から戻ってきたか
1章
どこからも歓迎されない
―オフショアへようこそ 8
2章
技術的海外
―ベスティ・ブラザース社に課税する:米のプリンから絞り出す 33
3章
中立性という儲かるトンネル
―スイス、ヨーロッパの古くから秘密の法域の国  49
4章
オフショアの反対側
―ジョン・メイナード・ケインズ及び金融資本との格闘 63
5章
ユーローダラー:ビッガー・バン
―ユーローダラー市場、銀行ならびに大脱走 80
6章
くもがクモの巣を張る
―いかに英国は新植民地主義を打ち立てたか 103
7章
アメリカの没落
―いかにアメリカは悩むことをやめ、オフショア・ビジネスを愛するようになったか 124
8章
開発という名目のすごい水抜き器
―いかにタックスヘイブンは貧困国家に害を与えているか 147
9章
絶え間なくしゃべる奴
―危機のルーツ  166
10章
レジスタンス
―オフショアの理論屋部隊と共闘す 193
11章
終生オフショア
―人類としての要因  215
12章
グリフィン
―ロンドン・コーポレーションの街 244

結論
―再びわれらの文明を批判する 280

注書き 293
謝辞 320
索引 321

ペーパーバック・エデションに寄せて
「グローバリズムの値段としては受け入れがたいね、そうじゃないかい?」
成功したかにみえる「革新」という「堕落」が腐りきったドアをけ破って家に蹴りいれられた―と経済学者ジョン・K・ガルブレイスに言わしめた「革新」は、「腐敗したもの」に置き換えられて、それがいかに広く、深く世界に分散していったかを示して、自著『宝の島々』の初稿はおどろくほど売れたものだ。タックスヘイブンは今やグローバル経済の花形で、その触覚は進むべきあらゆる方向に伸ばされている。
世界的金融危機がおこった2007年以前にも、人々は「何か地球に悪い影響を及ぼすもの」を感じて吐き気をもよおしていた。それが何か、トラブルの原因を特定することはできないでいた。私は、そして今では大抵の人々が信じていることではあるが、『宝の島々』の背後にあるアイデアを詳細に調べるには今までとは全く違う新しいレンズ―それは栄光と腐敗を含むあらゆる地球規模のプロジェクト―を通して見る以外になにもわからないということだ。事実、もっと深く探ってみれば、タックスヘイブンを理解することなしには、近代世界の経済の歴史は何もわからないとさえ言える。
この本のレビューは驚きの連続になることだろう。この本に対する私が最も好きな賛辞は2011年のタックスヘイブン会議を傍聴した者からもたらされた。著名なタックスヘイブン容認派の彼は、この本が浅薄で間違いだらけで、その結果すぐに反論に遭ってぺしゃんこになるだろうと言うのだ。「ず~と失望した」と言うことらしい。数えきれないほどのレビューが氾濫している。そしてレビューの大部分は基本的問題に言及されていない。
だれもこの英国が、広大なタックスヘイブンの網の中心部に陣取って獲物を待ち構えているクモ自身だとは思っていないのだ。地球上に数兆ドル規模の企業価値や資本をばらまきながら、それをロンドン・シティへ吸いこもうとしているクモ。誰もロンドン・コーポレーションのシティできわめて奇妙な何かが起きているとは否定しない。英国の「オフショア・アイランド」は、古くから城塞のない砦として機能してきた。それは何世紀もの間、混乱する英国の銀行の歴史に抵抗してできた「うねり」だった。もっともそれは銀行を保護するためにほとんど見えない傘をさしているようなものだが・・・。だれもアメリカが今や巨大なタックスヘイブンなんだということを否定する者もいない。ある特定の層が迫力を込めて演説することもたまにはあるが、大抵は「アメリカのエリートたちが復讐の意味でこの世界―犯罪集団がはびこるリバタリアン(無政府主義)の楽園―を作りだしているのだ」などという研究や分析を発表するような人はいなかった。そこでは税収カットとか規制緩和などと「腐敗」が音もなく吹き荒れているのにもかかわらず・・・。そして周囲にある一般的な問題点に関する熱い議論に比べれば、私のこの特別声明などに興味を持つ人も少ない。私は「このグローバル金融の世界の危機的状態を作り出しているのはタックスヘイブン諸国であり、タックスヘイブンからの投資は今や世界で最大の金額になっている」ということを言いたい。
「タックスヘイブンはちっぽけな島々のことをいうのだ」という常識が通用している。タックスヘイブン、小さなマフィアの集団・・・これらはもはや死に語である。
タックスヘイブンを正しく理解する人々は―「タックスヘイブンとは何者?実際、それはどこにある?」―と考えるが、その他の人々は「ま~、常識の範囲じゃないか」と考える。
過去、つかみどころのない世界史が積み重ねられていたので「虚構」に次ぐ、「虚構」が私の論文で確認される結果になっていた。
二、三人のコメンテーターは公正に私の著書『宝の島々』を批判している。不満の種は私の論争好きとものごとに対する怒りっぽさだと言う。私はこれらの批判には答えない。なぜならこの本は意見書であって、現状に必要だと思うからだ。
ケイマン島にいるある怒りっぽい奴が、私に「バカ者」という意見を送ってきたが、彼に「私が真実について何かウソを書いているか、その個所を見つけてみろ」と注文すると彼は見つけることはできなかった。私が書いたものにウソがなかったからだ。
最終章、ロンドン・シティでは重要でないが二、三の事実の修正を求められた。申し訳なく思い、その詳細をここに明らかにする。それでも、この本とその分析は何の浸食も受けるものではない。
「タックスヘイブンは資本社会の必需品で、それは過重な負担に抵抗し、ときには二重課税の回避に役立っている」とする見解がある。それについては議論の余地はあるが、そういう見解はわれわれに害を及ぼすことになる。キーポイントは「それらが世界中に急激に拡大している」ということなのだ。
一体全体そのゴールはどうなると思うか?大量の取引、金額、金塊・・・をバックに入れて逃げだした「所得」の洪水。
ガーデアン紙のピーター・プレストン氏の私に対する批判は意味がない。『宝の島々』はいわく、彼の言では、「(この本は)商売のやり方について、ウィキりークスからオーバル・オフィスまでと同じように何の改革にも役立っていない。なぜなら、誰も解決手段や代替手段を述べないからだ。結局(文字通り)“代替手段”などはないのだ」と。続けて彼は言う。「問題に取り組む時だけ」、「夢を見ているんです」と。
この意見は「見捨てられた希望」(Abandan Hope)を述べているのです。これが物事を面白くしてくれるのだ。ある意味で、意見批評は部分的に正しいところもあるもので、こちらサイドの経済群はあちらサイドのオフショア群の経済を私たちが想っている“オンショア”にたぐりよせようとするものだ。ちょうど、この本が刊行された2011年1月、英国政府は大企業にオフショアへの所得の移転を推奨する法人税改革を進めていた。税務スペシャリスト、リチャード・ブルックスはこの動きを「1914年以来の大改悪だ。2011年8月にはスイスの銀行に秘密に預けていた英国法人の所得に多少の課税をしただけで、その富はまた、秘密のドアの向こう側に不明朗なまま眠らせる結果になった。まったくふざけた汚いフォローアップだ」と述べている。
このエピソードはまさしくオフショア前進行進曲の一曲として『宝の島々』に収録されている。「これに抵抗できるだろうか?80年前の大恐慌以来、政治的に大改革をするなんて試みは金輪際なかった。政府はオフショアを抱きすくめて、戦おうとはしない。2007年以来起っていることは、われわれの身体を銀行に売って、そしてタックスヘイブンに奴隷として連れて行かれている、そんな感じじゃないか?」
しかし、『見捨てられた希望』の意見は全く、端から端まで間違ったことを書いている。「われわれはこの文明を変えることができないのか?」「もう変化がはじまっているじゃないか」

 私のこの書の最後に、このアンチテーゼが述べられている。「頭のいい連中が登場するイギリスの舞台にだまされない英国(UKアンカット)のシナリオが登場し、時代を変え始めた」

 どんな編集シナリオかを知りたいだろうが、そういう筋書きを税に関する論争的なトリックをたくらむ学生たちや年金生活者やビジネスマンたちをシティの舞台に出演させるようになった。彼らは、恐れに直面して禁欲的になっているイギリス居住者たちが、「税金から開放される方法を企業に考えろ」と即したのである。開放される方法はそれが他の納税者の責務の上に「只乗り」していることになるものだ。
 オフショア・ダイビング会社、それは、“大西洋の真っ只中を航行中の船”みたいな存在で、税の仕組みの網を避けて、自在に位置を変え、浜へ流れてきたり、流れ去ったりする浮遊物である。それは社会(オンショア)から遊離していると集中砲火をあびた。2011年のことである。
2011年、それを歓迎する発言がUKアンカットでもなく、タックス・ジャステス・ネットワークでもなく、グラクソ・スミス・クラインから起こった。グラクソは世界の製薬会社だ。5年から10年前まではタックスヘイブンに関する会議の主題は、「いったいどれくれいタックスヘイブンに流れているか」だったが、今はそれを防ぐコンプライアンスの醸成に時間の大半が割かれている。
それにはとてもとても多くの時間を必要とするし、実現の見込みが薄い「希望」以外の何者でもない。
他の人たちは“見捨てられた希望”を別の方向に導いていく。それは危険な方向なのだが、手に負えないオフショアに風穴をあけるにはいい方法なんだという。
すなわち金持ちに減税してやり、貧乏人へは序々に課税を強化する―のが良い方法だというのだ。マネロンに対するより緩い法の網掛けなどなど・・。
それは”しょうがないな”というよりも、タックスヘイブンよりは増しな方法論だという。
というのはこの方法はあらゆるところからカネをあつめるのが可能になるからだという。「それ」とは英国自身を、シティオブロンドン自身をタックスヘイブン化することであり、(つまり自国内の無税地帯を作り出す)、ずいぶん、前からそれは実行されている。
BBCのロバート・ペストンが彼の著書で、「英国政府が最近、“オフショア前進行進曲”で法人税を改悪する動きに対し、“それはグローバリズムの対価なんだ。そうとは思わないか?”」と書いている。
 オフショアに対する大きな語謬があると思う。タックルするのは難しいので、ただそれに言及するだけなら異論はない。だが、そこに戦うべき理由があるのだ。もし戦わず敵に屈してしまうとすれば、我々はどうなってしまうのか。
「グローバリズムのコストだって?何のコストだ?」。違う、オフショアはグローバリズムの許されないコストなのだ。見捨てられた希望に迎合することは賛意を表するため肩をすくめて、「これに毒されているやつらをどこか他に丸めて突っ込んでしまえ」と言うようなものだ。

 ドアは腐食している。私が注視しているこのものが社会的に受け入れられるものであるかとの論議が動きだしている。この動きは本当の変化をきたすための必須条件である。来つつあるのだ。アメリカでは私の考え方が紹介され、議会で法案化を審議されている。他の国でも同じような動きがある。裕福な国の集まり、OECDでさえ、グローバルな金融秘密を糊塗する大うそつきであるにもかかわらず、非常に早くそのもののバックボーンをアウトライン化する試みが行われ始めた。二、三年前、NGOや労組、教会もついに私のこの納税道義を論ずる意見に言及しだした。今や、部分的にこの書籍『宝の島々』に影響されたメジャーな映画も製作されていると聞く。
 もちろん、多くの人々、組織体が、タックスヘイブンが世界にポーズをとっていることの危険性の大きさに目覚めているとは思うが、「たとえば英国の政治家はどうだろうか?」、BBCは著作の時間(At the time of writing)で奇妙な沈黙を守っている。:時々特別なタックスヘイブン事件に言及することはうれしがるが、たいていは大事件としては扱わない姿勢。:英国にとってオフショア問題はその爆心地である。それが国を超えてグローバルに英国の放送界に波及するという意味で爆心地なのである。
彼らは全部「見捨てられた希望ないしは見放された希望」にかかる議論を心に留め置くことが出来ただろうか?彼らは何かをおそれているのだろうか?彼らは、『宝の島々』から表出される意見に反対する人々から単純に忠告されるだけなのだろうか?
たぶん、彼らは「私が考えるような心配事のおそれはない」と考えている。

多分。

だが、今、諸君自身で確かめて見るが良い。
                    
                              ニコラス・シャクソン、2011年8月


研究ノート 「電子商取引と課税」    木村俊治

2014-02-04 23:26:44 | 国際税務問題

研究ノート

「電子商取引と国際課税」
―グローバルに展開する電子商取引業者の利益に対してどの国で所得課税すべきか、あるいは内国消費税課税(付加価値課税)はできるか―

Electronic Commerce and International Taxation

木村国際税務研究所
主宰(税理士)木村俊治
Shunji Kimura
 

1.問題の所在
米国のインターネット通販大手「アマゾン・コム」(本社米国シアトル)の関連会社、アマゾン・コム・インターナショナル・セールス社(本社米国シアトル)が、東京国税局(外国法人部門)の税務調査を受け、日本国内の事業をめぐり、2005年(平成17年)12月までの3年間について、140億円前後の追徴課税処分を受けていたことが共同通信の記事(2009/07/05)でわかりました。
アマゾン側は法人所得決定処分を不服として異議申し立てを行い、審理に先立ち、日米租税条約による米国歳入庁と2国間協議を申請したというものです。その結果、「アマゾン側の事業の拠点が日本にある」とする東京国税局の事実認定は誤りであるとされ、「PE(恒久的施設)なければ課税せず」の租税条約の定めにより法人税の課税額全額がアマゾン側に還付されたもようです。
○図1 アマゾンの世界図(想像図・著者作成)
       


   

   


法人税法(141条3項)によると、日本国内に支店等を持たない外国法人(ノンPE)の「事業の所得」(法法138条一号前段)は課税されません。この「PEなければ課税せず」の原則は、日米租税条約でも踏襲されており、米国企業が日本国内に支店などの租税条約でいう「恒久的施設」(法法141条1項にいう「主たる事務所等」)を持たない場合には租税条約でいう「企業の利得」(法法138条一号前段にいう「事業の所得」)は日本に確定申告する義務はありません。
 関係者によると、アマゾン・コム・インターナショナル・セールス社(セールス社)は米国以外の外国に対する通信販売サービスを提供する会社であり、日本に限らず、世界のどの国にもPEを置いていないと主張しています 。
2.内国法人と外国法人
「アマゾンジャパン・ロジスティクス」、「アマゾンジャパン」は日本法人ですが、「アマゾン・ドットコム」、「アマゾン・ドットコム・インターナショナル・セールス」は米国法人です。
法人税法上、内国法人と外国法人とでは課税の方法が違います。
外国法人は、「国内源泉所得」があり、事業所等のPE(ピーイー・恒久的施設)があれば、課税されます。→制限納税義務者→国内源泉所得のみ課税、外国で稼いだ所得は課税されません。
内国法人は、上記に関係なく全ての所得(海外支店等の所得も含めて)に課税されます。→無制限納税義務者→全世界所得課税→外国税額控除で二重課税を回避。
○図2 米国法人から見た日本とアメリカの税務申告(著者作成)
 

   
 

 

□「PEなければ課税せず」の原則
 法人税法141条3項は、日本国内に支店等(「恒久的施設」)を持たない外国法人の「事業の所得」は課税されません。これを「PEなければ課税せず」の原則といいます。

相手国(日本)に外国法人(米国本店)の日本PEがある場合に「事業の所得(国内源泉所得)」に課税するという方法は日本法人税法の規定ですが、日米租税条約もほぼ、同じ規定振りです。ただし、PEの有無は(税務担当者の)事実認定によることになるので、両国課税当局間や納税者の主張と食い違いがしばしば生じます。
米国企業が日本国内に事業所・支店などの租税条約でいう「恒久的施設」を持たない場合には租税条約でいう「(日本で稼ぐ)企業の利得(事業の所得)」は日本に確定申告する義務はありません。
特に、電子商取引ではインターネットを通じて販売契約、引き渡し、代金決済がおこなわれるため、日本国内にヒト(営業社員・役員)、モノ(店舗・倉庫)、カネ(銀行口座、バックオフィス)を置くことは必ずしも必要でない時代がやってきました。そして、電子コンテンツ(音楽・映画・電子書籍・商品ソフトウエア)についてはサーバー経由、消費者への直接販売(ダウンロード)なので、全く日本へPEを置いていないとする国際IT企業の主張はもっともであると考えられます。
○図3 サーバー所在地がPEであるという考え方(著者作成)

3.国内源泉所得
国内で発生した所得のことを「国内源泉所得」(法人税法138条)といい、外国法人は国内源泉所得のみが課税されます。
国内源泉所得とは「事業の所得」以外に、本邦の大陸棚で掘削を行う場合の「アウトプットやサービス」、国内に存在する「不動産の譲渡・賃貸所得」、あるいは国内営業者から払われる「利子」、「配当」、「貸付料」などをいい、所得の種類はだくさんあります。下線で示すようにそれぞれの所得ごとにソース・ルール(領海内(大陸棚)や不動産の所在などで内外を判定する基準)が規定されており、具体的でトラブルは多くはありません。
一方、「事業の所得」が国内源泉所得に当たるかどうかのソース・ルールは、「当該業務が国内で行われていること」(これを国内業務主義)によります。「国内で行われている状態」の判断要素は法律に定められておらず、事実認定に任されています。→業務の執行状況を見る場合、ヒト・モノ・カネが中心となります。→本稿は外国法人の課税標準(国内源泉所得)については論述しません。
4.消費税問題
「国内IT業者と外国IT業者とでは、内国消費税の課税方法が違うのでしょうか」という質問をよく受けます。また、新聞等で、「国内業者は消費税を納めているのに、アマゾンやグーグルは消費税を払っていない。これは内外、不公平で早急に改正されるべきだ」といった記事が散見されます。
(1)本当に内外不公平なのでしょうか?
実は、消費税の課税ロジックは、所得課税のように「自分の所得に課税し、その所得者が自主的に申告する」ではなくて、「国内における資産の譲渡・役務の提供を受けた者から消費税をあづかり、受け取ったものが支払者に代わって申告する」なのです。たとえば、アマゾン・セールス社の「資産を譲渡する拠点」(販売店・代理人PE)があって、課税事業者であるとすると、彼らの(国内における)販売取引額に消費税が含まれており、それを受け取ったものとみなして税務署に申告するということになります。→ここで、問題が生じます。その消費税を受け取ったものが日本に拠点がない場合(たとえば外国電子商ビジネス・国際宇宙通信会社・外国の本屋からの直送)は所得申告もないので課税事業者かどうかわからないということです。また、自主申告制であるため、国内に拠点がなければ申告されないということです。
※所得課税ではなく、取引課税であること。しかしながら所得方式で消費税を計算すること。課税事業者以外は消費税の申告を要しないこと。課税事業者はその取引に消費税を要求したかに限らず課税されること。輸入した貨物に係る引取消費税制度があるが、有体物に限られること。消費者による電子コンテンツのインターネット経由購入は、外国から役務の提供を受ける場合に準ずる(貨物ではないため通関しない)。役務の提供は一般的に「提供者の住所地(外国)で提供している」とされるので不課税であること。国際取引の局面で「外国業者が国内で役務提供を行っている状態は日本支社などの拠点がある場合に限られるのではないか→役務提供には通関しないので引取時消費税は課税されていない(提供地は外国で不課税であること)など。
(2)この場合、日本に日本支店等や連絡事務所等の人的物的組織がないときはどうなるでしょうか?
資産等が国内で譲渡(消費)されているのは間違いありませんが、アマゾン側が消費税を請求している様子はありません。消費者側は税込みで払っていると認識しているとしても、消費税の受取者であるアマゾン側は「日本の消費税をあづかっている」という感覚はありません。では、「アマゾンは無申告なのか」という疑問が起こるのももっともです。
(a)輸入貨物・電子コンテンツ・ダウンロード
輸入貨物は引取消費税を払い、販売は国内でされるため売上消費税をもらう。
消費者が外国にあるサーバー経由電子コンテンツをダウンロードした場合は国内取引に当たらず(不課税取引)、外国IT業者は消費税を消費者からもらうことはありません。
※電子書籍等を外国の業者からインターネット経由で取得した場合については、やはり消費者の輸入行為(外国→消費者)ではあるが税関(保税上屋)からの引取行為がないため消費税を払う必要はない。したがって、アマゾン側も日本の消費税について認識していない(あるいは認識しようとしない)のです。
(b)国内IT業者・国内に拠点がある外国法人の場合
内国法人、及び国内に事業所等(PEとは限らない)がある外国法人で、基準年度の課税売上(国内売上+輸出売上)が1千万円以上である場合は、帳簿に基づき消費税を納付する義務がある。代理人PEである場合も同じ。仕入れについての消費税も同じ。
この一見、不公平に見える消費税の仕組みですが、電子コンテンツの場合と同じく眼に見えない役務の提供、たとえば、著作権の使用料を請求してくる外国法人のような場合、役務の提供がどこで行われたかという判定では、著作権の登録地もしくは著作者の居住地で提供したということになります。米国人のプログラマーの作品の提供であれば、その代価を国内の課税事業者が払ったとしても不課税となり、仕入れ税額控除はできません。→海外で書籍を購入した場合を想起せよ。→したがって米国プログラマーは日本に消費税申告することはないのです。
○図4 課税逃れ対策の行動計画のポイント

(出所:読売新聞 2013年6月朝刊より)
5.解決策
(1)所得課税
「サイバー空間は外国か?」という問いにまだ、答えはありません。電子商取引(インターネット・ビジネス)の事業の所得が、国内源泉所得にあたり、「恒久的施設」がなければ源泉地国で課税できないという、20世紀的思考では、この質問には答えられないからです。
これに対して国税サイドも研究の取り組みがあります。「サービスPE」という第三の概念を導入するというものです。「サービスPE」の源泉地はサービス提供地(すなわち、消費者所在国)とし、「PEなければ課税なし」(拠点が原則は適用しないといものです。
また、外国証券業や外国銀行が行うグローバル・トレーディングの事業(世界中で24時間地球周りで連続的な売買を繰り返す)では国内源泉所得の概念を捨て、当該業務に従事するデーラーの給与総額等で日本に配分する所得を決定する方法などが実際に行われています。→いずれにしろ日本に支店が、そしてヒト、モノ、カネなければどうしようもありませんが。
(2)消費税課税
課税事業者とは基準年度(その事業の開始事業年度の2年前の事業年度)の課税売上が1千万円以上(当時は3千万円)の個人・法人です。したがって、その事業年度の売上額が把握されていなければ課税事業者かどうかわからないわけで、日本に拠点がない外国法人が日本の課税売上高をカウントする、そして申告するとは考えられません。
→これは消費税法導入時(平成元年)からの懸案であり、消費税申告を帳簿方式で自主納税させる日本型の消費税のウイークポイントだったといわれます。その解決方法は、①代理人申告型の導入:電子商取引のように国内に拠点がない事業者の国内における資産の譲渡等の取引業者に申告代理人を強制する。→資産の譲渡等を内国法人に委託する委託販売についても強制する。②帳簿方式をインボイス方式(VAT)にあらため:外国法人への支払に関し、消費税額を源泉徴収して国に納めさせる(欧州で実施されている)。→一般消費者が支払う場合、カード決済会社に源泉徴収義務を課すなどの方法が検討されているようです。
こういった研究は不断に行われており、いずれ、多国間(OECD等)の合意を得て、矢継ぎ早な国際関係税制の改正(租税条約等の改定)がおこっていくと考えられます。