国際税務研究ブログ

こんにちわ、TOKYO在住の税理士、木村俊治と申します。国際税務のことについてアレコレ書いています。木村国際税務研究所も

ベトナムの給与課税

2008-02-26 19:24:25 | 国際税務問題

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ベトナムの給与課税
                           木村国際税務研究所
□ 税法
高額所得者所得税法(Personal Income Taxation High Income Earners)

□ 個人所得税は申告賦課課税制度
申告賦課課税であるが、事業所に所属する場合は源泉徴収が奨励されている。
つまり、給与の源泉徴収はしてもしなくても良い。

□ 居住区分別の課税
1)ベトナム居住者
(ベトナム到着日から12ケ月以内において合計183日以上滞在した者)
2)ベトナム非居住者
(ベトナム到着日から起算して12ケ月以内において、183日未満滞在した者)
区分 課税対象所得 適用税率 申告及び納税方法
居住者 全世界所得及び第三者から受取った贈与金 累進税率 源泉徴収・確定申告
非居住者※ ベトナム国内源泉所得及び第三者から受取った贈与金 一律25% 源泉徴収・確定申告
(出国までに納税しなければならない)
※非居住者については、短期滞在の場合の免税措置(日越租税条約)が適用される場合がある。

□ 課税所得
定期所得と不定期所得に分けて課税される。

1)定期所得
定期所得→給料・賞与、住宅手当、留守宅手当、その他の各種手当、法人の所得とされない生産、役務の対価として定期的に受取る所得

■ グロスアップ
会社が負担する現地所得税はタックスオンタックス(グロスアップ)課税される。

□ 現物給与
住宅手当、会社借上社宅、帰国飛行機代、各種生活用品無償供与、自家用車のリース料、車庫代、医療費負担、光熱費・水道料金などの会社負担額など

□ 住宅手当とみなされる給与
従業員の基本給与の15%と滞在ホテル代、借り上げ家賃の全額とのどちらか低い方を所得に加算するみなし課税がある。★ベトナム税務当局とネゴ可能。

□ 控除項目
住宅控除額のみ

□ 非課税所得
危険手当、僻地勤務手当、転勤手当(経常的に転勤する場合)、出張費、出向手当、社会保証、疾病手当、障害手当、生保損保の保険金、外国人駐在員の帰国飛行機代(ホームリーブはだめ)、ベトナム国内で支払われる幼稚園から中等学校までの子女教育費

2)不定期所得
海外あるいは国内からの金銭あるいは物の贈与、宝くじ懸賞金、技術の使用料又は手数料、建築設計費、その他類似する不定期所得

□ 外貨換算
ドンは中央銀行発表の為替レートにより換算、その他の外貨は財務省発表の為替レートを使用する。

○ 外国人居住者の定期所得に対する税率           単位千ドン
ランク 月次平均所得 税率(%) 税額算定方式 源泉徴収
1 ~8000 0 ― ★してもしなくても良い。
2 8000~20000 10 月額給与*10%-800
3 20000~50000 20 月額給与*20%-2800
4 50000~80000 30 月額給与*30%-7800
5 80000~ 40 月額給与*40%-15,800
外国人非居住者(183日未満) 25 ベトナム源泉所得*25% 日越10%
○ 外国人居住者の不定期所得に対する税率
不定期所得の種類 税率(%) 源泉徴収
技術移転 5% なし
宝くじ賞金、セールスプロモーション奨励金 10% なし

□ 個人所得税の申告
定期所得の個人所得税は前年度の申告額あるいは予想年間所得額を12で除した額を基礎として一ケ月ごとに予納する。手続きは会社でも本人でも良い。年度末あるいは出向契約が終了する時点で実際の確定額がでるのでそれとの差額を2月28日(契約終了の場合はその日から30日以内、帰国する場合は帰国するまでに申告)までに納付するか、還付額がある場合は、翌年の予納額と相殺する。

□ 着任年の申告
当初入国の12ケ月後に1年分の申告を行なう。翌年分から暦年の申告となる。当初の1年分が翌年と重なるときは差し引き計算をして調整する。

□ 留守宅払(日本払い)の給与
現地の社長として赴任する場合、最初からベトナム居住者(外国人)として扱われる。居住者は全世界課税であるため、たとえ、日本国で支払う格差補填金、留守宅手当もベトナムの課税所得を構成する。
しかし、実際には、ベトナムの高税率、所得控除項目がないため、50%を超える実効税率となるので、正直に申告しているものは少ないと考えられる。
ベトナム課税当局は最近、租税条約の情報交換制度(日越25条)、徴収共助(同26条)を使って、日本における支払額を補足する手段を用いており、他の外国企業の駐在員等の給与水準よりも極端に少ない全世界所得を申告するのは避けるべきです。
フリンジベネフィットについても課税が強化されている。グロスアップも常体化している。

□ 社長人件費の親会社負担について
日本の移転価格税制の適用上、現地人件費の親会社負担は「役務提供」取引として扱われる。つまり、第三者が人材をベトナム法人に派遣する場合、そのコストを誰が負担すべきかという観点からは当然「出向先」ということになるので、無償(人件費がコッチモチ)での役務提供は言語道断ということになります。そして、人材派遣会社が派遣する場合は当人の人件費プラス派遣会社のマージンも加味しますが、親子間の派遣については、そのコスト(役員の給与・報酬)分だけでよいということにしています。いずれにしろ、子会社の役員の人件費を親会社が負担してしまうことは日本の税務調査で「寄付金扱い」を受けるのでしない方が良いでしょう。

□ 格差補填の通達
法人税法基本通達9-2-47には、社員を海外にある子会社へ出向させた結果、現地給与額が減少し、本来の給与額との差額を出向元法人(貴社)が支払う「留守宅手当」は出向元法人(貴社)の損金とする(すなわち、寄付金としない)規定がありますが、これは、法人税法における損金益金の考え方で、移転価格税制(租税特別措置法66の4)とはリンクしていません。

□ 現地所得税の親会社負担→租税負担契約
ベトナムの税率が高すぎるので、日本で給与を受けた場合に日本で課される所得税の金額を超えるベトナム所得税を本人の留守宅手当てとして支給する(ベトナム当局には教えない)方法(「租税負担契約」といいます。)があります。親会社(貴社)の損金とすることができます。現地ではベトナム現法と役員との間では租税負担契約を結ばないことが肝要です(ばれてしまう。)。

□ 外国人駐在員の生活用品のベトナムへの持ち込み
輸出入関税法により輸入関税は免除される。

以上