国際税務研究ブログ

こんにちわ、TOKYO在住の税理士、木村俊治と申します。国際税務のことについてアレコレ書いています。木村国際税務研究所も

平成21年税制改正(国際課税)

2009-03-05 19:01:51 | 国際税務問題

こんにちわ木村です。衆院可決したようなのでここで発表します。

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平成21年度税制改正のポイント 

所得税法関係

所得税法44条の2:減額された外国所得税額の総収入金額不算入等

居住者が事業所得等の計算をする上で、外国所得税等は必要経費に算入できる。そして、その外国所得税等が減額された場合は、減額された年分の総収入金額に加えることで整合性を図っている。ところで、居住者がその外国所得税等について外国税額控除を受けた場合においては必要経費に算入せず、外国税額控除のみを受ける仕組みである。その場合において、その外国税額控除を受けた年分の外国所得税等が減額された場合は、その減額後の外国所得税等を基に外国税額控除を再計算して控除過大額(減額外国所得税等-正当計算の外国税額控除額)があれば修正申告する仕組みとなっていた。控除不足額があれば翌年以降に繰り越されることになっている。減額された後の外国法人税額を控除限度額として計算した修正後の控除限度額を上回る金額については、総収入金額に算入されるとしていた⇒改正後は、外国税額控除の適用を受けた年の翌年「以後7年間の各年」において外国税額控除の対象となった外国所得税額等が減額になった場合に適用されることとなる。「7年間」とした理由は繰越税額控除(限度超過額・控除余裕額)の繰越期間が7年となったことに平仄を合せたため。

所得税法45条①六:家事関連費等の必要経費不算入等

罰金・科料(外国又は「これに準ずるものとして政令(98条)で定めるもの」が課する罰金または科料に相当するものを含む)ならびに過料は必要経費に算入しないこととしていた⇒今次の改正で(外国又は「その(外国)地方公共団体」が課する罰金または科料に相当するものを含む。)並びに過料は必要経費に算入しないことに改められた⇒政令(98条《外国に準ずるものの範囲》)から本法に吸い上げ、外国の地方公共団体からの罰金・科料の範囲を明確にしたもの

同九:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定による課徴金及び延滞金については必要経費に算入できないが、課徴金及び延滞金について「(外国もしくはその地方公共団体又は国際機関が納付を命ずるこれらに類するものを含む。)」として、欧州独占禁止防止委員会などの課徴金等にも対処する。

所得税法46条《所得税額から控除する外国税額の必要経費不算入》:

外国税額が納付税額を上回る場合は還付する(所法138①四)のであるが、同時に事業所得等の必要経費に算入されないことになる。旧法では「外国所得税の額につき・・・当該外国所得税の額は・・・必要経費に算入しない」としていたが、新法では「控除対象外国所得税の額につき・・・当該控除対象外国所得税の額は・・必要経費に算入しない」とした⇒還付される外国税額は総収入金額に算入するのであるが、当初、外国税額を必要経費に算入しないのは、その全額(支払外国税額)ではなく、控除対象外国所得税であれば足り、その余の差額は必要経費に算入できる(法人税法でいえば、その差額を損金算入できる)ことと明確にしたもの。

所得税法95条関係《外国税額控除》

外国税額控除については「外国所得税を納付することとなり場合」の事実関係の範囲を「居住者が通常行われる取引と認められないものとして政令で定める取引に起因して生じた所得に対する外国所得税を納付することとなる場合を除く」としていた。⇒政令221条《外国所得税の範囲等》3項は自由還付(一号)、自由納付猶予(二号)、資本還付配当に対する所得税(三号)、外国附帯税(四号)について外国所得税等とはみないこととし、同4項は循環金融型貸付ローン取引で発生した外国源泉税(一号)、特殊関係者間の債権譲渡のうち、債権譲渡者が保有していた期間に係る受払利子に特定国(租税条約の締結国)において租税の免除を受けた後の利子の対価で契約された場合の取引に係る外国所得税相当額(二号)

これを今次の改正では居住者が・・・その外国所得税の額(「居住者の通常行われる取引と認められないものとして政令で定める取引に起因して生じた所得に対して課される外国所得税の額、居住者の所得税に関する法令の規定により所得税が課されないこととなる金額を課税標準として外国所得税に関する法令により課されるものとして政令で定める外国所得税の額その他政令で定める外国所得税の額を除く。以下、この条において「控除対象外国所得税の額」という。」をその年分の所得税から控除するに改められた。⇒新政令を見なければ詳細は分からないが、旧法3項、4項の平仄に合わせて記述しただけではないかとも考えられる⇒なお、その外国の国内税法で免税として置きながら外国法人(その国の非居住者)に対して日本のタックスヘイブン対策税制を回避するため、自由課税標準、自由選択税率とするチャネル諸島(ガンジー島)の例が知られている。

所得税法161条関係《国内源泉所得》

同条六号は「当該業務に係るものの利子(政令で定める利子を除く)」としていたが、今次改正では「当該業務に係るものの利子(政令で定める利子を除き、債券の買戻しまたは売戻し条件付売買取引として政令で定めるものから生ずる差益として政令で定めるものを含む。)」とした。⇒改正の趣旨は、いわゆるレポ取引の売買差額は、国内源泉所得の六号所得に該当するとしたものである⇒論議の多いところである。

法人税法関係

《受取配当等の益金不算入》

所得税法23は、同23条の2が新設されたことから、旧法における「・・・配当等の額(次条第1項・・)・・」から「・・配当等の額(24条第1(配当等の額とみなす金額・・)・・)」と変更された。

《外国子会社から受ける配当等の益金不算入》

所得税法23条の2が新設された。

1項「内国法人が外国子会社(当該内国法人が保有しているその株式又は出資の数又は金額がその発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の二十五以上に相当する数又は金額となっていることその他の政令で定める要件を備えている外国法人をいう。)から受ける前条1項1号に掲げる金額(以下この項及び事項において「剰余金の配当等の額」という。)がある場合には、当該剰余金の配当等の額から当該剰余金の配当等に係る費用の額に相当するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額は、その内国法人の各事業年度の所得の計算上、益金の額に算入しない。」

2項「前項の規定は、確定申告書に益金の額に算入されない剰余金の配当等の額及びその計算に関する明細の記載があり、かつ、財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定により益金の額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。」

3項「税務署長は、1項の規定により益金の額に算入されないこととなる金額の全部または一部につき前項の記載がない確定申告書の提出があた場合または同項の書類の保存がない場合においても、その記載または書類の保存がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その記載または書類の保存がなかった金額につき1項の規定を適用することができる。」

4項「適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格事後設立により外国法人の株式または出資の移転が行われた場合における1項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。」

《法人税額から控除する外国子会社の外国税額の益金算入》

法人税法28は間接税額控除の適用を受ける場合の控除対象税額の益金加算の条であるが廃止されたため削除

《外国子会社から受ける配当等に係る外国源泉税等の損金不算入》

内国法人が益金不算入の適用を受ける外国子会社から受ける剰余金の配当等については、それに課された外国源泉税等の額は、その内国法人の損金とされない。⇒本来、受取配当金に課された外国源泉税は、損金に算入するか外国税額控除(直接税額控除)するかは企業の選択であるが、当該剰余金の配当等について益金算入されない限りにおいて(益金不算入は企業任意であるため)損金に算入しない⇒益金不算入額は当該剰余金の配当等の95%相当額であるが、5%相当額に係る外国源泉税も損金不算入である⇒外国税額控除(直接税額控除)を適用する場合は、当該外国源泉税の額は所得に加算する⇒益金不算入を適用する外国子会社からの配当等について、当該国で発生した外国源泉税(源泉徴収に類する方式で課された特定の外国法人税を含む)は損金に算入されない⇒益金不算入とならない外国子会社からの配当については損金算入が可能な外、当該国で発生した外国源泉税(源泉徴収に類する方式で課された特定の外国法人税を含む)を直接外国税額控除の対象とできる。

出資比率