伊達 純のヒロシマ日記

反戦・反核・反基地などの平和運動、反原発運動、反貧困運動、グローバリゼーションの問題などについてヒロシマから発信する

5/12(土)第6回グローバリゼーション講座「途上国が抱える債務問題と貧困」報告

2007年06月11日 23時42分13秒 | グローバリゼーション
「グローバリゼーションを問う広島ネットワーク」の第6回グローバリゼーション講座「途上国が抱える債務問題と貧困」の報告を掲載します。

 第6回グローバリゼーション講座「途上国が抱える債務問題と貧困」は、5月12日(土)午後5時より、「債務と貧困を考えるジュビリー九州」の大倉純子さんを講師として行なわれました。参加者は21人でした。
 まず参加者が自己紹介をし、どのようなことに興味・関心を持っているのか等を話しました。それから大倉さんのお話が始まりました。

■アフリカの貧困、拡大する世界の経済的な格差
 まず大倉さんは、子どもの栄養不良の率が高いのは、サブ・サハラ(サハラ沙漠以南のアフリカ、南アジアであること、世界で1日1ドル以下の絶対的貧困で生活する人は13億人、1日2ドル以下で暮らす人は約30億人(世界の人口の約半分)、極度の貧困で命を落とす子どもが1日に3万人、特に深刻なのが人口約8億8千万人のアフリカで、世界で約50か国の後発開発途上国のうち34か国がアフリカの国であること等のデータを示しました。
 しかも貧困・格差は拡大しています。アフリカで極貧状態にある人は、1990年には2億4200万人だったのが、2000年には3億人、2015年には3億4500億人になるということが言われています。また世界で絶対的貧困層は、1980年に5億人(9人に1人)だったのが、2000年には12億人(5人に1人)、世界で最も貧しい20%の人々の収入と最も豊かな20%の収入との比率は、1970年には1:30だったのが、1997年には1:74になったということが言われているのです。
 エイズは、もはや死病ではないのに、薬が手に入らないために亡くなるということも起きています。世界のエイズ患者4000万人のうち、アフリカが2580万人、240万人のエイズ死者のうち78%が南部アフリカに集中しているのです。
 IMF(国際通貨基金)・世界銀行が設立されたのが約60年前の1946年、日本のODA(政府開発援助)が開始されたのが約50年前の1954年、アジア開発銀行(ADB)が発足したのが約40年前の1954年です。40年、50年、60年と援助をやってきて、なぜ格差が大きくなるのかと大倉さんは問いかけます。
 UNDP(国連開発計画)とUNICEF(国連児童基金)によると、絶対的貧困を無くすのに必要な金額は1年800億ドル×10年=8000億ドル、世界の軍事費は1兆1180億ドル(2005年)であることも紹介されました。

■日本のODAの問題点
 日本のODAは、額は世界第2位ですが、ジェンダー(社会的・文化的性差)開発指数(Gender Development Index:GDI)では17位、贈与費利率が56.3%と少なくDAC(開発援助委員会)諸国中最下位、経済インフラプロジェクトが多い、アジア地域への援助が約50%を占め、アフリカへの援助は8~10%と少ないなどの問題があります。
 また日本政府の「援助哲学」は、「経済インフラを借款で支援し、経済成長を通して途上国の自立と貧困削減を図る」というものですが、実際には住民の生活や環境を破壊したり、人権侵害・腐敗を助長したりするようなプロジェクトであったりする訳です。
 そして統括を外務省から首相官邸に移す、外交・金融・財政面で「国益」にかなう戦略的「経済協力」へ転換する、巡視船をインドネシアに供与するなど武器輸出や米軍再編に用いるなど現在、日本のODAは変質しているのです。

■莫大な債務を抱える途上国
 1970年代、産油国はオイル・ダラーが余っていたのですが、イスラム銀行は利子がつかないため、先進国の銀行に貸すことにしました。それを途上国へ貸し付けた訳です。ところがアメリカが高金利政策をとるようになり、また一次産品の値下がり傾向(植民地支配の中で途上国は原料の輸出国としての役割を果たしてきた)もあって、途上国は莫大な債務を抱えることになってしまいました。
 世界銀行の統計で途上国が借入した額と返済した額とがほぼ同じ、あるいは借入した額よりも返済した額の方が多いという年もあったことも紹介されました(1986年、2004年)。2003年、日本のケニアに対するODAの実績は、4333万ドルが贈与、4992万ドルが貸付でした。つまり贈与した額に600万ドル余りを加えた額を返済しなければならないということです。途上国は本当に「債務を返済していない」のかと考えてしまいます。
 インドネシアでは国民の半分が貧困に苦しんでおり、フィリピンは政府歳入の約90%が元本と利子の返済に充てられています。このような中で、融資と規制緩和がワン・パックとなっているIMF・世界銀行の構造調整政策により、教育や保健への予算が削減され、水道料金は値上げされ、学校は有料化されて行っているのです。このことは識字率の低下をも招いています。カメルーン、コートジボワール、タンザニアなどのアフリカ諸国が、社会サービスの何倍もの予算を債務返済に充てていることも紹介されました。

■解決策の問題点
 根本的な問題は、債権者によって解決策が決められており、貸し手側の責任は問われない、また現在の不公正な経済構造の根本的な解決が図られていないことです。またアジア諸国の日本への債務は、主に独裁政権時代に蓄積されたものであり、国の予算から返済するのではなく、独裁者と官僚の個人資産から返済すべきなのではないかということも大倉さんは指摘されました。

■日本の市民が途上国の債務と貧困の問題に対して声をあげよう!
 結局、IMF・世界銀行はG7(先進7か国)がコントロールしています。「債権者は結束している」のです。先進国である日本の私たち市民が、途上国の債務と貧困の問題に対して声をあげて行きましょう!


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