女の戦い【情報戦編】

栗東トレセン。お馬さんの朝は早い。
安藤厩舎。そこに彼女はいた。そう【オースミハルカ】である。
彼女は情報収集が大の得意。
レース前には必ずと言っていいほど走り回る（もちろんいろんな厩舎を）
そして大一番の今回も彼女は走り回っていた。

ハ『ふぅ～今週は大事なエリザベス情報杯・・・いや女王杯よ。
　　去年はいい情報が手に入ったから２着まで粘れたけど、惜しくも【グル】ちゃんに
　　差しきられちゃったわ。でも今年はちょっと元気がないのかしら。
　　そこら辺も聞いてこないとね。さぁ出発よ』

まず彼女が向かったのは伊藤雄厩舎。【エアメサイア】が所属する厩舎である。

ではここで、彼女の情報の集め方をお教えしよう。
彼女は厩舎を訪れたからといって、誰かと話すわけではない。
会話を聞いて、それをメモ。それを情報とするのだ！
はっきり言えばただの盗み聞きだが、実はこの行為、栗東トレセンでは有名で、
知らないのは本人のみ。だからレース直前になると、同じレース出走馬は
『来るぞ来るぞ。何しゃべろうか？』などとあらかじめ話すことを決めていたりする。
そう、だからはっきりいって意味ないのである。しかし、そのことを本人は知らないので、
毎回いい情報と知って張り切っている彼女がいるのである。

では話を戻そうか。伊藤雄厩舎にて。
すでに【エアメサイア】は昨日、【アドマイヤ】【スイープ】の２頭からプレッシャーを
かけられており、若干ノイローゼ気味

メ『（あぁ、今日は【ハルカ】さんが来るみたいだわ・・・何話そう・・・
　　　もう昨日みたいなのはイヤだし、ここは機嫌をとって早く帰ってもらいましょう）』

ガサガサッ。【ハルカ】本人は気づいていないが、周りは当然わかった。
【ハルカ】は耳を澄ましていた。
それに気づき、【メサイア】が独り言を。

メ『はぁ～今週はエリザベス女王杯だわ・・・お姉さまたち怖いのよね（本音）
　　それに【ライン】ちゃんがいたからがんばれたのに、今回はいないし、
　　実はあたしちょっと調子下がり気味だし』
ハ『（キラン
　　　メモメモ【メサイア】ちゃん・・・調子下降気味・・・っと・・・よし）』

サササッ、っと【ハルカ】は鮮やかに去った。
【エアメサイア】ほか厩舎関係者はホッとした様子。

続いて彼女が向かったのは鶴留厩舎。ここにはお嬢様【スイープトウショウ】がいる。
【スイープ】は【ハルカ】の天敵だ。彼女は見つけたら有無を言わせず追い出そうとする。
『わたくしに近づこうなんて１００万年早いのよ』そう言わんばかりに。

サササッ。

ス『（ピクッ）』
ハ『（今日こそ見つからないようにしなきゃ負けないわ）』
ス『どなたかいらっしゃのかしら？また【ハルカ】さんなの？』
ハ『（ギクッなぜなぜわかるの【スイープ】ちゃん。
　　　まさか・・・あなたエスパーなの）』
ス『もうやめてくださらない。わたくしは何もしゃべりませんわよ。
　　去年もそんなことをなさってましたわよね。どうせ結果は変わりませんわ』
ハ『（去年はわたしが先着したんだけどなぁ・・・）』
ス『んっ、いま何か言われたような気が・・・』
ハ『（ドキッ）』
ス『・・・・・気のせいかしらね』
厩務員『お～い【スイープ】運動の時間だぞ～』
ス『あら、散歩のお時間のようですわ。ではまた』

トコトコ・・・【スイープトウショウ】は運動へ向かった。

ハ『はぁ～相変わらず鋭いわね【スイープ】ちゃん。
　　でも今回はわたしの勝ちねふふふ
　　あっ、でも肝心なデータが何一つ得られなかったわ・・・しまった
　　運動とはね・・・んっもうそんな時間なの？・・・・・・
　　あ～っ！！？
　　わたしも運動があったんだわ忘れてた信ちゃんに怒られる』

安藤厩舎へ猛ダッシュで戻る【オースミハルカ】。
彼女の戦いはまた始まったばかり・・・なのだろうか？
つづく・・・かもね。

女の戦い【心理戦編】はこちら
女の戦い【調教編】はこちら
女の戦い【除外編①】はこちら
女の戦い【除外編②】はこちら


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