*** june typhoon tokyo ***

Mia Nascimento@下北沢BAR?CCO




 My Sweet Nineteen ~ 微笑みを微笑みで返したアットホームな祝宴。

 ソロをはじめ、MILLI MILLI BAR(ミリミリバール)名義でも活動し、昨年(2018年)11月にはユニバーサルからMIA名義の1stシングル「明日から」をデジタルリリースするなど活動に広がりを見せてきたミア・ナシメントの19歳の誕生日を記念したライヴ〈Mia Nascimento Birthday Live 2019〉が東京・下北沢のBAR?CCOにて開催。

 ミア自身がブッキングしたという加納エミリ未優MARINaの3名の親しいシンガーを迎え、シックな雰囲気のスペースのなかでロック、エレクトロ、ポップ、ジャズ、ソウルなどさまざまな音が心地良く弾ける。バースデイライヴという一種祝うことのみがフォーカスされがちな舞台でありながらも、それぞれにユニークな素地を持ったシンガーたちが描き出す色鮮やかなパフォーマンスに飽きることなく時を過ごすことが出来た。

◇◇◇

【Mia Nascimento】



 ミア・ナシメントは昨2018年10月の星空カフェgift(記事→「Mia Nascimento with 田辺真成香@星空カフェgift」以来、バンドセットとしてはMILLI MILLI BARでの同年9月の北参道ストロボカフェ(記事→「MILLI MILLI BAR@北参道ストロボカフェ」)以来の観賞となる。この日はプロデューサーの矢舟テツローがキーボード、星空カフェgiftではカホンを鳴らしたManaka(田辺真成香)がドラムを務める“ミア・ナシメント・トリオ”スタイルでのセット。演目中にバースデイケーキが登場するサプライズも含め、ミアの19歳を祝うに相応しい笑顔が絶えないアットホームでジョイフルなひとときとなった。

 オケを使わず、矢舟のキーボードとManakaのドラムという小編成ながらもバンドサウンドにこだわってのステージ。ミアがMCにて“暴露”したように、時折矢舟の演奏ミスもあったりはしたが、そこはご愛敬。メロウで“ハネ”のある鍵盤と小気味いいリズムで刻むなかなかタイトなManakaのドラミングとの相性が良く、彩色豊かな上モノの効果もあって、ベースレスのボトムの薄さを意外と感じることがなく聴けた。

 当ステージでのトピックとなる矢舟がミアに出会って最初に作った「My Sweet Seventeen」では、ミアが子供の頃に教会でゴスペルを歌っていたというエピソードからインスピレーションしてゴスペルライクなアレンジにしたとのこと。その流れから(その間、饒舌に「私は日本語が下手くそ」とMCするミアを尻目に)「ハッピー・バースデイ・トゥ・ユー」へと移行する演出には、笑顔と愛情がたっぷりと込められていた。

 本編ラストは“微笑みを微笑みで返す”というフレーズが印象的な「Laugh Again」。オルガン風の温かみのある鍵盤音と風を切るように駆け抜ける軽快なドラムビートに、ミアの朗らかで自然体の陽気さに満ち溢れたヴォーカルが映え、フロアを和やかで笑いが絶えない空間に。アンコールは矢舟サウンドのグルーヴの旨味が凝縮されたリズミカルなキラーチューン「遊 び 半 分」とミアの出身のブラジルの名曲「トリステーザ」のカヴァーという、デザートとしては豪勢な2曲でエンディング。ハートフルな祝宴に、演者とフロアの誰もが思わず顔をほころばせていた。


◇◇◇

<SET LIST>
01 みゆき通り
02 満月のDANCE
03 Call me, Catch me
04 SWAN DIVE
05 My Sweet Seventeen
<Happy Birthday To Mia>
06 サンダルでミア
07 Laugh Again
≪ENCORE≫
08 遊 び 半 分
09 Tristeza

<MEMBER>
ミア・ナシメント / Mia Nascimento(vo)
矢舟テツロー / Tetsuro Yafune(key)
Manaka a.k.a. 田辺真成香 / Manaka Tanabe(ds)

◇◇◇

◇◇◇

【Mia Nascimento / MILLI MILLI BARに関する記事】
・2017/11/15 MILLI MILLI BAR@代官山WEEKEND GARAGE TOKYO
・2018/01/25 MILLI MILLI BAR@北参道STROBE CAFE
・2018/05/30 MILLI MILLI BAR@六本木VARIT.
・2018/09/05 MILLI MILLI BAR@北参道ストロボカフェ
・2018/10/14 Mia Nascimento with 田辺真成香@星空カフェgift

◇◇◇

【MARINa】



 この日のトップバッターは現役女子高生“ミュージシャン&アーティスト”のMARINa(マリナ)。2001年生まれ、愛知県出身の17歳だが、母がヴォイストレーナーで3歳から本格的に歌い始めたというからキャリアは十分。地元では大手プロダクションのスクールの選抜ユニットのメインヴォーカルも張っていたという実力派で、上京後の2017年10月より現名義で始動。毎週第3土曜日に路上ライヴを精力的にこなしている。
 個人的には昨年10月上旬にミア・ナシメントと新宿駅前の路上ライヴと、昨年末に秋葉原のヨドバシカメラに行く途中に偶然歌っているところに遭遇して以来だが、しっかりとライヴのステージに立ってのパフォーマンスを観賞するのは初めてとなる。



 R&B、ポップ、ロックとさまざまなジャンルを歌いこなすとのことだが、「それでも世界は廻り続けてる」など弾けるようなロック曲が中心か。一時のビーイングのティーンポップ系ガールロック歌手のような面持ちもあるが、絵画をはじめさまざまなことにチャレンジする旺盛な好奇心もあるようで、幅広いジャンルにアジャストする瞬発力が歌唱にも感じられる。歌の深みや底力においては、まだ“JK”らしい若さが見えて、表現力の吸収や発露はまだ伸び盛りといったところ。ただ、狭い視野にとらわれないフットワークの軽さがいい意味でユーティリティな歌唱に活きている。楽曲も変な小難しさはなくキャッチーゆえ、若い世代を軸に受け入れられる素地を感じた。


◇◇◇

<SET LIST>
01 My Life
02 pa pa pa
03 それでも世界は廻り続けてる
04 (It's gonna be alright)???



◇◇◇

【加納エミリ】



 二番手は北海道札幌市出身の宅録女子、加納エミリ。彼女のパフォーマンスを初めて観たのは、昨年11月の“レトロ”をコンセプトにした矢舟テツローの主催イヴェント〈それぞれのレトロ〉(記事は→「それぞれのレトロ@下北沢BAR?CCO」)でのこと。彼女の印象についてはその時の記事に詳しいので端折るが、その記事にて「レイドバック感覚と彼女の嗜好を溶け合わせた音作りのセンスやオリジナリティ溢れる表現方法とともに、このユニークなスタイルが注目されるチャンスも遠くないかも」と書いたのだが、MCでは(それまで観客がほとんど付かないなかステージをこなしてきたが)ミア・ナシメントと矢舟テツローとの共演を機に少しずつ名が広まり、各所で採り上げられるようになった“縁”にも言及。無名からの“伸びしろ”という意味では著しい成長曲線を描き始めたというところの“ネオ・エレポップ・ガール”だ(ディスクユニオン新宿日本のロック・インディーズ館の週間チャートでは加藤和彦&サディスティック・ミカ・バンド、マック・デマルコの細野晴臣カヴァーなどを抑えて1位にもなった)。

 20代前半ながら、PWLサウンドやエレクトロポップなど80年代の薫りが漂うサウンドを駆使した当時の音を知らない世代からの斬新なアプローチと美形な顔立ちながらコミカルな振り付けを積極的に採用したパフォーマンスという、先入観を廃した感覚的な“センス”が愉しい。
 歌唱はいわゆる“ヘタウマ”な味わいに近いかもしれないが、人懐っこさと優等生的な凛々しさが上手い具合に溶け合う“クセ”になるタイプ。その点では森高千里や昭和アイドル歌謡あたりのフリーキーな部分を現代風に昇華させているともいえる。



 頭の上に手刀を乗せるユニークな“ごめんねポーズ”が目を惹く彼女の現段階での代表曲といえる「ごめんね」では、ワイヤードマイクが伸びる限界までと勢いのままフロアに突入。バックステップのダンス中に観客とぶつかるなどハプニングもあったが、それらも含めて“エミリワールド”全開。ラップトップからの音源のみで、バンドサウンドのような立体感や粒立ちした音鳴りはないが、それがかえってエレクトロポップとは相性がいいクラブユースの中毒性とマッチしている気もした。
 時折、ダンスの振りを替えたり(意図的かどうかは分からず)、その場の“ノリ”もパフォーマンスに呼び込める度胸の良さも窺えた。

 2月13日には初となる7インチ「ごめんね」(カップリングに「Been With You」)のリリースや生誕&リリースパーティの開催するとのこと。まだ知名度、楽曲の完成度などはこれからというところだが、彼女の魅力がどのあたりまで届くのかという部分においても注目していきたい。


◇◇◇

<SET LIST>
01 Next Town
02 二人のフィロソフィー
03 恋愛クレーマー
04 ごめんね



◇◇◇

【未優】



 1999年に三重県で生まれ、福岡で育ったシンガー・ソングライターの未優(みゆ)。小学生の頃から自作曲を作り始め、中学時代にはもうライヴハウスで定期的にステージに立っており、昨年4月より本格的な音楽活動をスタート。以前は“過能未優”名義だったが、心機一転、未優に変更して活動している。
 優等生風のスッキリと凛とした顔立ちが印象的な彼女だが、チラッチラッとどこか勝気な部分も見え隠れする表情も。若さもあるが、上京して歌手として成功するという強い意志があるのだろう。表情や声色は柔らかくしなやかだが、芯はなかなか太いものがありそうだ。

 この日はキーボードとギターを兼ねた男性サポートが一人帯同してのステージ。上京して感じている彼女自身とシンクロした心情を晴れやかなギターポップに乗せた冒頭のミディアム「HELLO,TOKYO」や、日常の苛立ちから解き放たれたい内なる思いをスリリングかつ軽快なリズムで綴った「DO IT NOW!」を聴くと、声質こそ異なるが、アコギを用いての歌唱ということもあり、どこかカントリー出身でポップ・フィールドへ進出した歌手、たとえばテイラー・スウィフトやシェリル・クロウ、ミシェル・ブランチ、またはフォーク要素のあるKTタンストールあたりの志向を意識しているのかも。もっと言えば、歌唱から甘さをカットしたYUKIを頭に浮かべると近いかもしれない。

 今のところは艶や毒などを含むような心の懐を突く大胆さを帯びている訳ではないが、とはいえ、ポジティヴなメッセージを歌にしてみましたというような凡庸な“弾き語り女子”とは一線を画した“意志”を持っていそうではあるので、人生で重ねた経験を次第に歌へ投影させられるようになれば、より訴求力も増してくるのではないかと感じた。


◇◇◇

<SET LIST>
01 HELLO,TOKYO
02 Winding Road(?) 
03 DO IT NOW!
04 It's a new world(?)



◇◇◇










にほんブログ村 音楽ブログへにほんブログ村 音楽ブログ ライブ・コンサートへブログランキング・にほんブログ村へ

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ライヴ」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事