“クインテットEspecia”としては東京でのラストの“朝ペシア”。
“ホテルで朝食をとりながらライヴを楽しむ”というスタイルで送る大阪・堀江系ガールズ・グループ、Especiaによるライヴ・イヴェント〈Hotel Estrella in TOKYO〉。コーヒーとオレンジジュースが飲み放題、パンのサーヴィスがあるというユニークな企画もEspeciaならではだが、実際にホテルで朝食をとるのと同じくらいの時間、朝の8時30分を開演時間に設定。決して集客に都合が良い時間帯とはいえないが、会場のライヴハウス、渋谷チェルシーホテルのフロアには、昨日のタワーレコード渋谷店屋上“スカイガーデン”でのイヴェント同様におそらく100名以上のぺシスト&ペシスタ(Especiaのファン)が所狭しと集っていた。
殊に最近感じているのは、Especiaのファン層に変化が起きているのではないかということ。古参と思われるなじみのファンも見えるが、若い女性や最近Especiaを知ってやって来たらしき人々、外国人のファンも増え、彼女たちがようやく幅広く浸透しかけてきた感じも。それゆえ、現体制“クインテットEspecia”としての活動が今月末までというのは寂しい限りだ。
ステージインの出囃子的イントロダクションを経て、最初に披露されたのは「くるかな」。深夜というより早朝のTV放送終了間際に流れる天気予報番組になぞらえたヴィデオが楽しい曲だが、やはり“早く起きた朝”のシチュエーションに見合った選曲を意識したのだろうか。軽やかなファンキー・グルーヴを携えた新曲「mistake」を挟んで、「雨のパーラー(S&L Remix)」を。ちょうと渋谷の朝は雨が降り続いていて、奇しくもそのような光景を描くように、フロアをやや気怠さを含んだ朝の雨模様のようなムードへといざなっていく。さらにはソウルフルな「Rittenhouse Square」へ。メランコリックな感情やためらいを醸す曲風は深く落ちていく夜に似合うと思っていたが、雲が立ち込め仄暗い雨空が迫る朝にも思いのほか寄り添えることに気づかされる。全編英語詞で音をとるのが難しいメロディラインのミディアムで、披露当初はこの楽曲に引きずられていた彼女たちだったが、場数を重ねることによって、次第にサマになってきたようだ。
中盤以降は次第に能動的なモードに。ゆったりと迎える爽やかで贅沢な朝の風景のような「シークレット・ジャイヴ」からギアを上げていき、センチメンタルとスタイリッシュを絶妙な塩梅で配合したグルーヴィなポップ「Security Lucy」やリズミカルなビートが活力を与える「Mount Up」で加速度を高めると、コール&レスポンスも飛び出す「アバンチュールは銀色に(GUSTO ver.)」から清涼感溢れるサマー・グルーヴィン「No1 Sweeper」とアルバム『GUSTO』収録曲のうち1、2を争うキラー・チューンで一気にエンディングへと駆け抜ける。これで本編が幕かと思いきや、MC途中に突然曲がかかり、舞台裏からの“無茶ぶり”でサプライズの「バレンタイン・キッス」。サビ以外はラララ~やナナナ~でしっかりと(?)対応し、この日の朝に集ったファンには嬉しい“ヴァレンタイン・プレゼント”となった。
アンコール後は初期曲「ナイトライダー」「Twinkle Emotion」から最新曲「Clover」へと繋げ、新旧Especiaを堪能させると、彼女らの決意表明曲ともなった「We are Especia」の後半部分でエンディング。未明から暁、曙、有明とヴァラエティに富む朝の表情を追うような構成で、贅沢なホテルでの“あさげ”を演出してくれた。
東京では祝日の2月11日から連日イヴェントやフリーライヴをこなしてきた彼女たち。おそらく疲労もピークに達していることだと思う。だが、もしかしたら、その疲労がこのステージでは奏功したのかもしれない。
というのも、この朝のステージでは疲労感があることでかえって余計な力が入らず、より自然体に近い形でパフォーマンスを繰り広げていたように見えたからだ。これまでは、特にグループの東京進出とメンバー3名の卒業が発表された新木場STUDIO COAST公演では(いいパフォーマンスをしなければいけないという思いが強すぎて)力みが感じられる場面が散見されたが、今回はいい意味でのリラックスしたステージングを展開。頭だけではなく頭と身体が連動し始めかけているのではと思えたパフォーマンスだった。当然、まだまだ最高点などではなく、歌唱力やパフォーマンス、表現力等々をひっくるめて、依然として発展途上に変わりはない。だが、彼女らの成長にはさらなる伸びしろを大いに含んでいるように感じるだけに、この“クインテット”が2月末をもって終えてしまうことに一抹の寂しさと儚さを覚えてしまうのは、偽らざる気持ちでもある。
次に上京するのは、5人編成としてのラストツアー〈Hotel Estrella Tour〉の週。彼女らのメジャー1stアルバム『CARTA』のリリース直後にその評価を待たないままに“クインテットEspecia”のクライマックスを迎えることになるが、悔いが残らぬように、しかしながら平常心で歌い踊り、楽しみ、オーディエンスとともに大きなうねりを生み出すようなステージを踏んでもらいたい。
ファイナルへのカウントダウン。彼女たちの一挙手一投足を見逃さず、一刻ずつ迫るカーテンコールの時へ向けて、限られたオーディエンスだけに許された栄耀な“饗宴”を楽しむ心の準備をしておくことにしよう。
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<SET LIST>
00 Introduction
01 くるかな
02 Mistake
03 雨のパーラー(S&L Remix)
04 Rittenhouse Square
05 Fader
06 シークレット・ジャイヴ
07 Security Lucy
08 FunkyRock
09 Mount Up
10 アバンチュールは銀色に(GUSTO ver.)
11 No1 Sweeper
12 バレンタイン・キッス(Original by Sayuri Kokusho)
≪ENCORE≫
13 ナイトライダー
14 Twinkle Emotion
15 Clover
16 We are Especia(Second Half)
<MEMBER>
Especia are:
冨永悠香/Haruka Tominaga
三ノ宮ちか/Chika Sannomiya
三瀬ちひろ/Chihiro Mise
脇田もなり/Monari Wakita
森絵莉加/Erika Mori
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