*** june typhoon tokyo ***

THE BRAND NEW HEAVIES@BLUENOTE TOKYO


 脳密度を増した“愛すべきマンネリ”が生み出す、ヘヴィーズ愛の深化。

 2016年よりヴォーカリストにスリーン・フレミングを迎えたザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ。オリジナルメンバーのドラマー、ヤン・キンケイドがバンドを離れた前回同様、ドラム、パーカッション、ホーン・セクション、キーボードといったサポートメンバーを加えてのアシッド・ジャズ然としたバンド編成。前回公演での記事(→ 2017/02/10「THE BRAND NEW HEAVIES@BLUENOTE TOKYO」)でも述べたが、冒頭に次のアルバムに収録される新曲を配した以外は“愛すべきマンネリ”といえるオールタイム・ヒッツを繰り出していく定番のスタイル。「ネヴァー・ストップ」くらいからギアが一段上がり出し、「バック・トゥ・ラヴ」では元来ヤン・キンケイドの歌唱パートをサイモン・バーソロミューがドヤ顔も見せながら歌唱して盛り上げると、「ドリーム・オン・ドリーマー」のアウトロからすぐにマリア・マルダーのカヴァー「ミッドナイト・アット・ジ・オアシス」へと繋ぐアレンジなどでオーディエンスの高揚をさらに煽っていく。

 彼らのシンボルの一つでもあるインスト曲「BNH」で一旦スリーン・フレミングがステージを離れていくと、「彼女の今日最後の歌でした」とサイモン・バーソロミュー。もちろんオーディエンスからの“エー?”という反応を聞きたいがための故意で、そんな“チャチャ”を随所構わずに放ってくるのがヘヴィーズ流。一見口数が少なそうに見えるアンドリュー・レヴィも太い低音ヴォイスでフロアを煽りながらメンバーと談笑するなど、このバンドは“まずはエンジョイする、それがファンキー”というコンセプトを徹底している。メンバーの演奏中もそれぞれに笑顔が溢れ、ソロパートでは演奏者を楽し気に煽るなど、テクニックや完成度よりも“ゲット・ファンキー”(ファンキーになれるか)が彼らのステージでの最大の“掟”だ。

 再びスリーン・フレミングが戻って「スウィート・フリーク」からはヴォルテージもさらに急上昇。「スペンド・サム・タイム」ではお決まりのザ・ジャクソンズ「シェイク・ユア・ボディ」のホーン・フレーズを組み込み、コール&レスポンスでフロアを焚き付けると、「ステイ・ディス・ウェイ」「ユー・アー・ザ・ユニヴァース」でムードは最高潮に。“クラシックス”といえる名曲「ユー・アー・ザ・ユニヴァース」ではミラーボールが燦然と輝き、オーディエンスの顔に満ちている微笑みを反射。シックなブルーノート東京という空間をダンスフロアに一変させていく。

 ステージアウトして戻る時間が惜しいからと言わんばかりに、サイモン・バーソロミューがその場でオーディエンスにアンコールクラップを促すと、拍手の波を受けるなかで「ドリーム・カム・トゥルー」へ。初めてヘヴィーズを体験するのでなければ、勝手知ったる馴染みの展開だが、そうと分かっていても胸が高鳴っていくのが、心躍らせる名曲かつヘヴィーズがファンに愛され続けているという証左。“トゥルトゥットゥ~”のスリーン・フレミングのスキャットも弾み、コール&レスポンスでも上機嫌に。定番から定番のオンパレードで約80分も光陰矢の如し。スタンディングで踊る人たちからの興奮を方々から感じながら、余韻の波をかき分けて会場を後にした。

 前回でも感じたが、曲間にスリーン・フレミングのヴォーカルスキャットやフェイク、曲導入までにキーボードのマット・スティールのアレンジ演奏を組み込むなど、この編成ならではのヘヴィーズ像が完成しつつある。スリーンはパンチのあるファットなヴォーカルが真骨頂ゆえ、全体が醸し出すサウンドもアシッド・ジャズよりもファンキー・ソウル寄りの曲風に。オリジナルメンバーのエンディア・ダヴェンポートとはまた異なるパワフルな出で立ちは、現編成の波長にハマっている気がした。
 そのほか、女性パーカッションのリリー・ゴンザレスはかなり歌える人で、スリーンが歌唱の1ヴァースを任せたり、最後はステージ中央に出てきて観客をステージに上げてラテン・アレンジのなかでダンスを繰り広げるなど、メンバーの個性を活かしたステージに。サイモン・バーソロミューのギター交換を担当していたジョシュは、サイモンやスリーンのフリを受けてステージ中央で“バック宙”を披露するなど、スタッフまでもが多芸多才。穿った見方をすれば“金太郎飴”的にどこを切っても同じ顔と見られるかもしれないが、映画やドラマの名作はストーリーが判っていても再び観たくなるもの。それを音楽を介したステージで体現しているのがブラン・ニュー・ヘヴィーズということなのだろう。彼らの来日の度に熱気と興奮が蘇る。ヘヴィーズ愛はますます深まる一方だ。


◇◇◇
<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 New Song(from Next Album)/ MIDNIGHT(?)
02 Sometimes
03 Never Stop
04 Back To Love
05 Dream On Dreamer
06 Midnight At The Oasis
07 BNH
08 Sweet Freeek
09 Spend Some Time(including phrase of“Shake Your Body(Down To The Ground)”by The Jacksons)
10 Stay This Way
11 You Are The Universe
≪ENCORE≫
12 Dream Come True

<MEMBER>
Simon Bartholomew(g,vo)
Andrew Levy(b,perc)
Sulene Fleming(vo)

Bryan Corbett(tp)
Richard Beesley(sax)
Matt Steele(key)
Lily Gonzalez(back vo,perc)
Luke Harris(ds)

◇◇◇

【ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズのライヴに関する記事】
2003/06/04 The Brand New Heavies@新宿LIQUIDROOM
2006/12/11 THE BRAND NEW HEAVIES@LAFORET MUSEUM ROPPONGI
2007/11/03 The Brand New Heavies featuring N'Dea Davenport@Billboard Live TOKYO
2008/12/10 THE BRAND NEW HEAVIES@Billboard Live TOKYO
2010/02/22 The Brand New Heavies featuring N'Dea Davenport@Billboard Live TOKYO
2011/11/02 The Brand New Heavies@Billboard Live TOKYO
2013/05/17 THE BRAND NEW HEAVIES@duo MUSIC EXCHANGE
2013/09/19 THE BRAND NEW HEAVIES@BLUENOTE TOKYO
2014/10/24 The Brand New Heavies@BLUENOTE TOKYO
2015/08/19 The Brand New Heavies@COTTON CLUB
2017/02/10 THE BRAND NEW HEAVIES@BLUENOTE TOKYO
2018/04/13 THE BRAND NEW HEAVIES@BLUENOTE TOKYO(本記事)

◇◇◇


ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

コメント一覧

Baseball Mania
コメントありがとうございます
PCに繋いだ良質な音のスピーカー、気になりますー(笑)
ヘヴィーズは相変わらずのやんちゃ感でした。気取って語りたくなりがちなところ、バコーンと打ち崩され、音楽をシンプルに楽しむことを思い出させてくれました。

アン・ヴォーグ、期待してしまいますね。
Hide Groove
帰ってきました👍
やはり野球狂。さんと語るにはこの場所ですね😁
『UK SOULの良心』と他の場所で書きましたが、『愛すべきマンネリ』の方がシックリきます。
流石の野球狂。さんです👍

セットリストを見ながら、あ~自分はここで立ち上がり踊り出すだろうなと空想。
野球狂。さんの語りを読みつつ、最近PCに繋いだ音質かなり良い小型スピーカーから、彼らのベスト盤を流してます。

怒濤の一年が過ぎ去り、少し時間に余裕が持てるようになりました。
待ちに待ったEN VOGUEの新作、野球狂。さんの感想を聞きたい今日この頃であります。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ライヴ」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事