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*** june typhoon tokyo ***

MILLI MILLI BAR@北参道ストロボカフェ


 夏の終わりを彩った、スウィートで鮮やかな夕べ。

 2017年より“座って聴ける大人のアイドルポップス”をコンセプトに掲げて活動中のバンド、MILLI MILLI BAR(ミリミリバール)。2代目ヴォーカリストに元Especiaのミア・ナシメントをフィーチャーし、洒落たポップ・サウンドにほんのりとラテンの薫りも醸し出す作風で注目されている彼ら。主宰のシンガー・ソングライター&ジャズ・ピアニストの矢舟テツロー、ヴォーカルのミア、ポップス・デュオ“カンバス”で活動するベースの菱川浩太郎の3名に、21歳のドラマー田辺真成香(元Full House)をサポートに迎えた編成で出演する北参道ストロボカフェでのライヴ・イヴェント〈SWEET BLUES〉に足を運んだ。
 
 共演は、emiとyoshitaroによるポップロック・ユニット“スタベビ”ことSTAR BABYS、地元・福岡のライヴイヴェントに9歳で初出場して話題となった大牟田出身、18歳のシンガー・ソングライターの未優(最近、過能未優(=かのう・みゆ)から改名したとのこと)、茨城県出身の1999年生まれ、19歳の大学生ギター弾き語りシンガーの美稀という総勢4組。ただ、残念ながら開演時間までに到着が間に合わず、STAR BABYSと未優のステージを見逃してしまったが、三番手の美稀の出番までには滑り込めた。

◇◇◇

<TIME TABLE>
19:00  OPEN
19:30~ STAR BABYS
20:05~ 未優
20:40~ 美稀
21:20~ MILLI MILLI BAR

◇◇◇

【美稀】

 淡い白系のキュートなワンピース姿で登場した美稀。1999年生まれと若く、ブルーハーツが好きなようだ。だが、そこから受け取った想像とは異なった清楚で可憐なルックスと佇まい。ヘアスタイルがセミロングということもあるが、いきものがかりの吉岡聖恵とmiwaを足して割ったような顔立ちの印象で、まだあどけなさが残る19歳だ。楽曲は自身の実体験を綴ったかどうかは解からないが、甘酸っぱい恋愛ソングが中心。歌声もどことなくmiwaを意識しているようにも聴こえるが、miwaよりもファルセットやハイトーン・ヴォーカルが高め。新しい恋人が出来た元カレとそっけない素振りですれ違いながらも想いがぶり返す「過去の人」や、好きな彼を独り占めしたいという気持ちが溢れる「愛されないでね」、いろいろ思い巡らしてもなぜか頭から存在が離れないと呟く「消えないの」など、思春期ならではの恋に揺れ動く気持ちを真っ直ぐに歌う。

 思春期の少女が等身大の想いを歌うというのは取り立てて珍しいことではないが、時折グッとためてから情感を発破させたり、ドラマの一場面さながらに想いを呟くように吐露するなど、それぞれの恋心を多彩な表情で奏でる工夫も。当初は聴いている方が照れてしまうような初々しい片想いや瑞々しい愛情表現だと思いきや、終盤での内なる秘めた想いを切なく吐き出す情感募るヴォーカルには、意外にハッとさせられたりも。

 また、強烈に印象に残ったのはMCでのトーク。言ってしまえば、高校出たての女子大生らしいガールズトークなのだが、序盤から「この前は“ザ・ライヴハウス”って感じだったんですけど、今回はオシャレなカフェみたいなところでなんだかみんなカワイイですね。うん、カワイイ」と前のめり気味に話したかと思うと、曲間のMCでは、大学生の夏でトキメキたいのに結局この夏の思い出は父親と花火したくらいだったとか、何でもやってくれる父がカーペットを洗濯したら縮んでしまって母に怒られていたとか、ここ数日一気に涼しくなったから冬の歌を歌おうと思っていたら、今日やたら暑くなって困ったとか、いちいちハイテンションで突っ走って語り出す姿が可笑しく微笑ましい。きっとアットホームな家庭で育ったのだろう(笑)。その天然っぽい愛らしいトークと、まだほんの僅かとはいえ乙女オンリーではなくチラリとの大人っぽい表情で恋煩いを歌うギャップが、彼女の魅力にもなっていそうだ。


◇◇◇

<SET LIST>
01 6月の花言葉
02 愛されないでね
03 過去の人
04 スプーン
05 いちごシロップ
06 消えないの


◇◇◇

【MILLI MILLI BAR】


満を持してトリで登場したのが、目当てのミリミリバール。5月にドラム脱退の発表がなされたが、前回観賞した5月末の六本木VARIT.公演(記事→「MILLI MILLI BAR@六本木VARIT.」)と同様、こちらも21歳と若い田辺真成香がサポートに加わっての万全の4名編成だ。

 オープニング曲はフレッシュでキュートなミアのヴォーカルとハートウォームなサウンドが優しく朗らかに流れる「みゆき通り」からスタート。続いて、スティールパンのトロピカルな音色と軽快なリズムが避暑地のリゾートの涼しげな夜を感じさせる「満月のDANCE」へ。この手の南国を感じさせるテイストの曲は、わざわざ強調しなくともラテンにルーツを持つミアに元来備わっているヴォーカルの弾力性というか、リズムへの適応力によって、ナチュラルな開放感や快活さが伝わってくるのがいい。



 そして、この日のトピックの一つになったのがライヴでは初めて聴いた「SWAN DIVE」。矢舟の胸騒ぎを誘うような煽る鍵盤裁きから始まり、“好きで 好きで 大好きだから”と切実に愛を告げる情熱的なヴォーカルが印象的なラヴ・ソングだ。メロディはラテン歌謡風にも感じられるレトロな手触りだが、菱川と田辺のリズム隊が小気味よい推進力あるボトムを形成し、そこに跳ねるような矢舟の鍵盤アレンジが乗ることで、スタイリッシュなラテン・ポップへと昇華。“キメ”となるフレーズもあって、今後のライヴを構成する上で軸になりそうだ。

 “サンダルでミア”こと「Sandalia Dela」はデューク・ピアソンのジャズ曲をボッサ・テイストにアレンジ。やや高い音はとりづらそうなところもあったものの、やはりリズミカルで明朗なサウンドはブラジリアンなミアと相性がいい。伸びやかなヴォーカルも聴きどころだ。田辺によるドラム・パートの導入も楽曲に立体感を持たせる好演出だった。



 後半は個人的には既にMILLI MILLI BARを代表すると思っているキー曲「遊 び 半 分」から、“微笑みを 微笑みで返す”というキラーフレーズと小気味いいクラップとともにジョイフルなムードで展開する「Laugh Again」へ。ミアはヴォーカル・パートでない時にも微笑みながら抜群のリズム感で音に乗っているのを見ると、やはりルーツからくる天賦の才・資質なのかと改めて実感。歌唱にはピッチが揺れるところやメリハリの弱さ、表現力という意味での押し引き、バランスという点でさらなる成長を期待したいところもあるが、音やグルーヴに即座に適応する力と生まれ持ったリズム感でそれらをカヴァーしてしまうから、あまりブレや質も気にならない。その意味では、バンドメンバーもヴォーカルに過度の意識を集中させて音を鳴らすといった余計な神経をそれほど使うこともなく、多くをバンド・サウンドとしての一体性に注視して奏でられているのではないだろうか。

 ラストはスウィンギーなビートとリズミカルでカラフルなメロディ&アレンジが楽しい「Surprise you」から曲間を空けずにメドレー気味に「トリステーザ」へ。ハロルド・ロボとニルティーニョが合作し、特にセルジオ・メンデスの歌唱で親しまれているブラジルのサンバの名曲(英題は「グッバイ・サッドネス」)で、ミアの出自にも適ったセレクトに。ミアにとっても馴染みがある楽曲だとは思うが、“ステージで歌唱する”という意味での歌い込みはこれからか。ただ、やはり、ラテン的な熱量のなかにもスカッとしたそよ風のような爽やかな感覚に包まれるのは、ミアが持つ声質やユニークな資質によるところが大きい。そのあたりは資質だけでなくしっかりと抑揚をコントロール出来るようになれば、バンドとの連帯や安定性もより高まってくるのではないだろうか。

 また、曲間においても十分ダンスで魅せることが出来るので、曲によっては各メンバーのソロ・パートを追加したりして、このバンドならではのライヴでのオリジナリティやサウンドの奥行き、振り幅の広がりを持たせても面白いのではないかと感じた。



 「SWAN DIVE」などのキラー・チューンも登場し、バンドとしても成長曲線を描いている彼らだが、10月以降はライヴを一時休止するとのこと。少々残念な気もするが、バンドとしてのステップアップの準備期間と捉えておこうと思う。あとはこのバンドとその楽曲をいかに多くの人に知ってもらうかということ。楽曲性やバンドの質としても勝負出来、大人のポップスとしても十二分に訴求力があるだけに、そのあたりの知名度拡散のアイディアや戦略が今後の課題の一つにはなりそうだ。

 カフェ・スタイルのこじんまりとしたステージだったが、温かい雰囲気のままエンディング。良い音鳴りと余韻にも浸れる好アクトに、身が軽やかになったような心持ちを覚えたまま、北参道を後にしたのだった。


◇◇◇

<SET LIST>
01 みゆき通り / Miyuki Street
02 満月のダンス / Dance in the moonlight
03 SWAN DIVE
04 Sandalia Dela(a.k.a.“サンダル de ミア / Sandalia de Mia”)(Original by Duke Pearson)
05 遊 び 半 分 / Asobi Hanbun
06 Laugh Again
07 Surprise you
08 Tristeza(well known song by Sergio Mendes & Brasil '66)

<MEMBER>
Mia Nasciment / ミア・ナシメント(vo)
Tetsuro Yafune / 矢舟テツロー(key)
Kotaro Hishikawa / 菱川浩太郎(b)
Manaka Tanabe / 田辺真成香(ds)

◇◇◇
【MILLI MILLI BARに関する記事】
・2017/11/15 MILLI MILLI BAR@代官山WEEKEND GARAGE TOKYO
・2018/01/25 MILLI MILLI BAR@北参道STROBE CAFE
・2018/05/30 MILLI MILLI BAR@六本木VARIT.


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