
メシア──世界唯一のスケプティックハンター。懐疑論者の嘘を暴く達人。
リネンちゃん──メシアの弟子。
リネンちゃん 懐疑論者の原田実さんはASIOSの『検証 陰謀論はどこまで真実か』の中で次のようなことを言っています。
柴田氏の著書に限らず、国鉄三大ミステリーについてGHQ黒幕説をとる論考は、いずれもあいまいな根拠を思わせぶりな文章でつないでいくことでGHQが黒幕だったという結論にいたるという態のものである。そのような論考が、書評などで高く評価され、多くの一般読者の支持を得ることができたのは、たとえ明確な証拠を提示されていなくても、相手がGHQではしようがないという暗黙の了解が著者と読者に共有されていたからだ。GHQの機密性は、日米両国の政府だけでなくGHQ黒幕説の著者をも守ってきたといえよう。
GHQ黒幕説は読者の反米感情に訴える。日本国民は皆、かつてアメリカに占領され、今も軍事や経済、外交などの各局面においてアメリカの方針に従わなければならないという事実により、内心に多かれ少なかれアメリカへの反感を抱いている。GHQ黒幕説は、その現状がアメリカの卑劣さによってもたらされたものだという認識を与えることで、読者に自己憐憫をもたらすことができる(このあたり、最近の日本でのアポロ陰謀論や9.11陰謀論の流行に通じるものがある)。
また未解決事件をGHQのしわざとすることは、それらの事件について日本人の責任を追求しなくてもよい、ということである。これもまた日本人の心情に訴える要因となる。こうした感情的背景がある以上、GHQ黒幕説はこれからも廃れることはないだろう。しかし、そのような感情が日米関係の現状、さらに将来のあるべき姿への視野を歪ませていることもまた確かなのである。
メシア うむ。
リネンちゃん ではメシア様、原田さんの「下山事件にGHQの陰謀などなかった」という主張の真実度をパーセントでお願いします。
メシア それなんだけどねぇ。下山事件研究の最高権威だと私が思っている人物である柴田哲孝さんは、そもそもGHQ黒幕説なんて唱えてないんだよ。
よって判定は不可能と言わざるをえない。
リネンちゃん え〜。
メシア 柴田さんの主張は非常に複雑であり、私も完全には理解しきれていない。
柴田さんの主張を簡単にまとめるとこういうものになる。
《真の黒幕はCIAで、CIAは他殺説で事件を追っていた警視庁捜査二課を利用し、キャノン機関黒幕説をでっちあげて真犯人を守ろうとした》。
リネンちゃん えっ!
メシア この説はキャノン機関のバリー・サイキ将校も認めており、彼の言葉にこういうものがあるんだ。
キャノン機関には鉄道工作の専門知識を持った者はまったくいなかった。キャノン機関は怪事件の責任を負わせるのに便利なスケープゴートになった。
リネンちゃん そうなんですか……。
メシア しかし繰り返すように、柴田さんの推理は深く複雑なので、これ以上は私にもよくわからない。
リネンちゃん それは残念です……。
メシア というわけなので、ASIOSの「下山事件にGHQの陰謀などなかった」という主張の真実度は、?%と言うしかない。
リネンちゃん それじゃあ、下山総裁の自殺説の可能性はどうなんですか?
メシア それなら即答できる。
0%で間違いなし。証拠は完璧だからね。
リネンちゃん やっと安心できました。
メシア それにしても原田さん、最後の最後まで卑怯な奴だったね。
柴田さんの『下山事件 最後の証言』を読んでいて、柴田さんがGHQ黒幕説など唱えていないことを知っているくせに、ずれた方向に話を持っていくんだからね。
リネンちゃん 救いようがないですね。
『検証《陰謀否定論》はどこまで真実か パーセントで判定【下山事件編】』終わり