アメリカに暮らす

アメリカのTV番組や日常生活等について綴ります。ニュースのネタバレ度は弱~中、エピガイのネタバレ度は強です。

There's a Boy in the Girl's Bathroom

2006年07月31日 | 読書
私は息子と一緒に読書するのが好きなので、常に図書館から児童書をいくつか借りて来ている。最近読んでるのはLouis Sacharという作家の本だ。彼は映画にもなった『Holes』の作者だが、私たちがハマるキッカケとなったのは『Wayside School』シリーズ。

『Wayside School』の舞台となるのは「30階建ての小学校」だ。しかも、各階に1つずつしか教室がない。本来は1階建てで横に30教室が並ぶはずだったのだが、設計ミスだか工程ミスだかでこうなってしまったのである。それが完成するまで誰も気付かなかったというのも変なのだが、その学校にいる先生も児童も皆、一風変わっている。さらに、なぜか19階が無い。

まあ、『Wayside School』シリーズの詳細についてはまたの機会に譲るとして、同シリーズから私たち親子は「Louis Sacharというのはユーモア作家だ」と思い込んでいた。(その時点で、私たちは彼が『Holes』の原作者だとは知らなかった。)

『Wayside School』シリーズを第3巻まで一気に読んでしまった後、「続きを読みたい」と思ったのだが、あいにく、第4巻は貸し出されていた。

そこで、同作家の別の本を何冊か借りて、まずは『There's a Boy in the Girl's Bathroom』を読んでみた。これは「クラスの一番後ろの一番最後の席に座っている」ブラッドリーという小学5年生の男の子が主人公の物語だ。ブラッドリーは勉強を全くせず、友だちも1人もいない。彼はクラスメートだけでなく、担任の先生にも邪険にされていて、彼を直接知らないはずの他の先生たちからも「問題児」という烙印を押されてしまっている。ともかく、彼は「1人でいること」に慣れてしまっており、放課後は自分の部屋で人形遊びをするという毎日だった。

そんなある日、ジェフという転校生がやって来る。ブラッドリーの隣の席には誰も座っておらず、誰も座りたがらない…というわけで、ずっと空席だったのだが、他に空席がないのでジェフが座ることになる。事情を知らないジェフはブラッドリーと友だちになろうとするが、ブラッドリーはつい、「1ドル寄越さないとツバをかけるぞ!」などと意地悪を言ってしまうのだった。

ジェフが転校して来たのと前後して、カーラ・デイヴィスという若い女性カウンセラーも赴任して来た。ブラッドリーは嫌々、カーラのカウンセリングを受け始める。最初は何も話したがらないブラッドリーだが、カーラに上手く誘導され、なんとなく騙されたような気分になりながらも、次第に自分の心の内を語るようになる。

カーラはジェフのカウンセリングもしている。ジェフはブラッドリーが自分の友だちなのかどうかわからずに当惑している。かといって、他にはまだ誰も友だちがいない。また、カウンセリング室に最初に来た時、間違って女子トイレに入ってしまったのだという。

さらに、カーラのカウンセリング室にはコリーンという女の子が時おり勝手にやって来て、「親御さんの許可なしにあなたをカウンセリングすることはできないのよ」というカーラの忠告も無視して相談を持ちかけて来る。コリーンはもうすぐ誕生日なので、パーティーにジェフを招待したいのだが、だとするとブラッドリーも招待せざるを得なくなる…ということで悩んでいるらしい。

やがて、ジェフは新しい学校に慣れ、ブラッドリー以外にも友だちができる。ただ、彼らはブラッドリーを毛嫌いしてるので、ジェフも一緒になってブラッドリーをイジめるようになる。ブラッドリーは「ボクは1人に戻っただけだ」と自分を納得させようとするが…。

ある時、ブラッドリーが「学校の話はできない。学校の話をし過ぎると病気になって死んじゃうって、お医者さんに注意されたんだ」と言うと、カーラは「じゃあ、次までに『話したいこと』のリストを作っておいてね」という宿題を出す。ブラッドリーはそのリストを一所懸命作る。リストは結局、姉にからかわれたために破り捨ててしまうのだが、その中の「宇宙怪物」というテーマが頭にこびり付いていた。ブラッドリーは他の子たちから「怪物」だと揶揄されていたのだ。

ブラッドリーはカーラに「リストは作らなかった」と嘘をつくが、カーラが「じゃあ、仕方ない、学校の話をするしかないわね」と言うと、咄嗟に「宇宙怪物の話をしよう」と提案する。カーラは「この広い宇宙にはいろんな生命がいると思うの。あるものは恐竜より大きいかもしれないし、あるものは蟻よりも小さいかもしれない。でも、『怪物』なんてものは1人(1匹)もいないわ。周りから『怪物』呼ばわりされてるうちに、自分もそう思い込んで、『怪物』みたいに振舞っちゃうだけなのよ」と言う。

ブラッドリーは「じゃあ、自分が怪物じゃないってことを皆にわかってもらうためにはどうしたら良いの?」と尋ねる。すると、カーラは「そうね…まずは自分で、自分が怪物じゃないっていうことを認める必要があるわ」と答える。そして、時間はかかるけれど、少しずつ、「自分は怪物じゃない」ということを周りに示していかなければならないという。

実はブラッドリーは読書感想文を書かなければならないのだが、図書館員も彼が問題児だと決め付けているため、本を貸し出してくれない。そんなブラッドリーに、カーラは自分のお気に入りの本をプレゼントする。そして、その日からブラッドリーの人生が好転し始めるのだった。

だが、その頃、「カウンセラーなんて必要ない」という保護者グループが学校に圧力をかけて来ていた。

…と、この調子で書いてると全部バラしてしまいそうなので、あらすじはここまでにしておくけれど、最後は甘酢っぽくて、ホロリとさせてくれる。読後に最初に感じたのは「これは良い本だ」ということだった。

これは一応、児童書(小学校高学年向け)なのだが、実は大人の方が楽しめるのではないだろうか?例えば、最後には主人公の成長を表す象徴的な出来事があるが、果たして、小学生にそこまで読み取れるかどうか…?ともかく、親子で一緒に読んで、対話してみることをオススメする。ちなみに、私自身は「あと10年か20年したら、もう一度読んでごらん。きっと新しい発見があるはずだよ」と息子に言ってみようと思っている。多分、「そんなこと言わないで、今、説明してよ!」とせがまれるだろうけれど(笑)、果たして、どこまで解説すべきか…?

そうだ!まずはこちらからあまり言わずに、いろいろと聞き出してみよう…カーラがそうしたように。


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4 コメント

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翻訳本 (josetangel)
2006-08-01 08:37:44
ジョウさんの書かれたあらすじを読ませてもらって、胸にきゅん!と来るものがありました。

翻訳があるのかな、と思ったら一応出ていたようです。



「トイレまちがえちゃった!」

http://www.amazon.co.jp/gp/product/406194746X/249-0926262-0716317?v=glance&n=465392&s=books



残念ながら今は出回ってないようなので、古本屋さんで捜すしかないようですが。もしかしたら、図書館にあるかもしれないですね。夏休みですものね、良いかも!
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翻訳本&原書 (ジョウ)
2006-08-01 23:51:43
josetangelさん、翻訳本のご紹介ありがとうございます。アメリカでは何度か繰り返し出版されてるようですので、原書の方が入手しやすいかもしれません。



ところで、『Wayside School』シリーズ(第1巻は1976年出版)の方はダジャレやアナグラムが多いので、読みながら、「これは翻訳しにくいだろうなあ」なんて思ったりしました(笑)。
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図書館で見つけました! (pancake)
2006-08-05 00:10:55
こんにちは。

とても面白そう!と思って図書館で借りてきました。(日本語訳)良かったです。一気に読んでしまいました。子どもにも是非読ませたいのでもうしばらく借りていようかなと思います。手を伸ばしてくれるといいんだけどなぁ。

ところで、2人がカウンセリング室に行くときに「授業に出なくてもいい許可書」を必ず持って行く、という場面が何度も出てきましたが、この間WITHOUTATRACEの学校話で授業中トイレに行くのに札を持って出る場面があって、何だろう?と思っていたのですが、ああこれなのかぁ!と変なところで感心してしまいました。(話がそれました)

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許可書 (ジョウ)
2006-08-08 00:54:12
pancakeさん、見つかって良かったですね。そして、楽しんで頂けて、ご紹介した私としては嬉しいです。



「授業に出なくてもいい許可書」は小学校から高校まであるみたいですね(大学は許可書なしでOK)。「授業中にトイレに行く」というのは日本の学校では考えられないと思いますが、アメリカの学校ではテスト中でも許可してもらえちゃうんですよねー。



それにしても、ひょんなことでドラマの謎(?)が解けて良かったですね。
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